2025年春夏のパリ・ファッションウィーク・メンズを総括 Day 1〜3

パリでは3回目の発表となるファレル・ウィリアムスの〈Louis Vuitton〉から、メンズでは4年半ぶりの〈UNDERCOVER〉、神がかった魔界の王〈Rick Owens〉がハイライト(あとは、Ye待ちで1時間半押した〈PROTOtypes〉もある意味……)

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去る6月18〜23日(現地時間)に開催された2025年春夏シーズンのパリ・ファッションウィーク・メンズ。毎年、iPhoneが高温でフリーズするほど炎天下となる6月のパリだが、今回は拍子抜けするぐらい過ごしやすい気温(若干寒い)かつ雨が降ったり止んだりの1週間だった。本稿では今季の現地レポートをお届けしたい。

初日は日本人デザイナー 八木佑樹の手掛ける新鋭ブランド〈vowels(バウルズ)〉のプレゼンテーションからスタートし、〈Helinox(ヘリノックス)〉のレセプション⇨〈AURALEE(オーラリー)〉⇨もはや初日トリが定番となった〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉を回った。

〈Helinox〉は、パリの旗艦店オープンに際し、〈fragment design(フラグメント デザイン)〉とのコラボレーションをローンチ。藤原ヒロシも訪仏し、詰めかけた業界関係者と共に〈Helinox〉の旗艦店オープンを祝った。続いては〈AURALEE〉。〈LV〉の前という、ある意味一番やりづらいスロットにも関わらず、多数のゲストが来場したことから、国内外問わずその注目度が窺える。ギンガムチェックのセットアップにステンカラーのロングコートを羽織ったルックからスタート。公園を行き交う人々をテーマにしたという今季は、シャツ、テーラードジャケット、ブルソン、コートなど、ややリラックスしたシルエットで仕立てたクラシックなアイテムが多く、中のシャツの片側だけ出すといった緩めのスタイリングも印象的だった。そして、期待通り〈New Balance(ニューバランス)〉との最新コラボもお披露目された。最後は、パリで3回目の発表となるファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)の〈Louis Vuitton〉。毎回、会場付近にファンが押し寄せ、大カオスとなるのが常だが、3度目ともなるとオペレーション側も慣れてきたのか、今回はすんなり会場入りに成功。詳細については別記事(ショー/アイテム)をチェックいただきたいが、さまざまな国旗が揺らめく『ユネスコ本部』という会場も相まって、これまで以上に多様性に富んだ印象だ。

2日目は〈LEMAIRE(ルメール)〉⇨〈UNDERCOVER(アンダーカバー)〉⇨〈Walter Van Beirendonck(ウォルター ヴァン ベイレンドンク)〉⇨〈M A S U(エム エー エス ユー)〉⇨〈KENZO(ケンゾー)〉⇨〈PROTOtypes(プロトタイプス)〉。前回と同じく本社スタジオでの開催となった〈LEMAIRE〉は、今季もブランドらしい流れるようなカッティングとしなやかな素材使いが多く、ブラックとオフホワイトの配色によって、洗練された中にも無骨さが感じられた。1月と同様に女優の今田美桜が来場していたが、ブランドの大ファンで〈LEMAIRE〉のショーのためにパリを訪れているという。彼女クラスになれば、名だたるメゾンがフロントローに呼びたがりそうなものだが、セレブが話題の中心となりがちな近年のパリコレにおいて、本当に好きなブランドのショーだけに行く姿勢は純粋に素晴らしい。

話がやや脱線したが、お次はメンズでは4年半ぶりの発表となる高橋盾の〈UNDERCOVER(アンダーカバー)〉だ。メンズウェアにウィメンズのデザイン要素を組み込んだ本コレクションでは、“架空の民族“を掲げ、オーストラリアのバンド Glass Beams(グラス・ビームス)の演奏を巨大スクリーンに投影。同バンドの音楽性にもインスパイアされたという。それを物語るような民族調のアイテム、画家としても活動する高橋氏の油絵やイタリアのペインター ロバート・ボシシオ(Robert Bosisio)の作品を全面にあしらったピース、〈Champion(チャンピオン)〉とのコラボレーション、絵描きの日常着をモチーフとした軽やかなセットアップなど、高橋氏の現在地が感じ取れる内容に。着やすさを重視したであろうアイテムが多かったが、いずれも〈UNDERCOVER〉特有のアートピース感が溢れていた。ショー終わりにGlass Beamsを検索した人も少なくないであろう。2度目のパリコレとなった後藤愼平の〈M A S U〉は〈VAN JAC(ヴァン ジャケット)〉の石津謙介をフィーチャーした偉人スウェットや前シーズンに続くVERDY(ヴェルディ)とのコラボレーションが目を引いた。また、トラッドなシルエットに後藤氏らしい茶目っ気の効いたアレンジを加えたピースや、自らモデルを引き連れ、自転車で駆け抜けたフィナーレに象徴される彼のハッピーバイブスはシリアスなムードのファッションウィークの中で、確実に新風であったし、オフスケジュールながら風穴を開けたに違いない。

NIGO®️(ニゴー)手掛ける〈KENZO〉は、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の〈Louis Vuitton〉でのデビューコレクションと同じ『パレ・ロワイヤル』で開催された。今季も和洋折衷を打ち出し、竹林をイメージしたカモ柄がバリエーション豊かな素材・アイテムで登場。4つボタンやダブルブレストのブレザー、襟から帯が垂れたようなトレンチコート、フィナーレでNIGO®️も着用していたVERDYのグラフィックをフィーチャーしたバーシティジャケットに加えて、サテン地のジャケット&パンツ、メッシュのインナーが多用されていた。本来ならここで2日目が終わるのだが、オフスケで実施された注目ブランド〈PROTOtypes〉にショーに。〈Vetements(ヴェトモン)〉に在籍していたデザイナー2名が立ち上げたアップサイクルの一点物をベースとしたブランドだが、最近ではYe(イェ)が支援していることも話題となった。そんな旧カニエ・ウェスト(Kanye West)とビアンカ・センソリ(Bianca Censori)も来場するということで、21時スタート予定が彼ら待ちで、なんと1時間半押し……。ショーが開始すると、「服なんか見るんじゃねー」的なモデルの凄まじい早歩きと逆光のライティングのおかげで、ほぼわからない。さすがは元〈Vetements〉という感じだが、これがブランドのスタンスであり、見せ方なのであろう。と自分を納得させた。

3日目は、〈HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE(オム プリッセ イッセイミヤケ)〉⇨〈Rick Owens(リック・オウエンス)〉⇨〈Amiri(アミリ)〉⇨〈Yohji Yamamoto POUR HOMME(ヨウジヤマモト プールオム)〉⇨〈Sulvam(サルバム)〉⇨〈NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)〉のパーティへと足を運んだ。

セレブやトレンドには決してなびかない最強にして最狂ブランド〈Rick Owens〉。午前中に降っていた雨は、リックの降臨に合わせたかのごとく、ショー前にしっかりと止んだ。冒頭のタイロン・ディラン・サスマン(Tyrone Dylan Susman)らを除き、基本1ルックに対し20名以上のモデルを起用したコレクションは、“HOLLYWOOD”と題され、さながら壮大な1本の映画を観ているような感覚に(※ネーミングの由来は別)。200名以上のモデルが参加したわけだが、パリのファッションスクールの学生や教員に声がけたしたという。客席を見渡せば、いつも通り全身〈Rick Owens〉に身を包んだゲストが集う魔界と化していたが、コレクションを通じて、それを象徴するようなブラックは一切なく、神聖な雰囲気を醸すホワイトがメイン。シルクのローブやマント、身体に巻き付くようなニットのボディスーツをベースに、金のコーティングが施されたブルゾンやアルミ箔でボンディングしたバイカージャケットを合わせていた。足元はオールホワイトのGeo Basketやブランドの定番フットウェアが。ショーの中盤で登場した新体操の演出も度肝を抜いた。

ジャズバンドの生演奏を従えた〈Amiri〉。ミュージシャンのステージ衣装のような華やかなタキシードやウェスタン調のピースなど、往年のジャズミュージシャンに着想した70年代風のレトロなルックを多数展開した。音楽畑出身でもあるアメリカ人デザイナー マイク・アミリ(Mike Amiri)のアイデンティティが確立されたコレクションと言えるだろう。〈Yohji Yamamoto POUR HOMME〉は、ブラウスにテーラードを合わせたグラフィック多めのルックが前半を占め、後半に向かうに連れてブラック・ホワイトへと移行。日本語の手描きテキストがプリントされたオーバーサイズのブラウスやダメージの入ったロング丈のニットが登場し、黒塗りのアクセサリーの重ね付けやサンバイザーなどの小物使いも際立った。ランウェイモデルには、フランスを拠点とする女優の杏やシャーロット・ランプリング(Charlotte Rampling)も起用。

3日目のラストは、2026年の日本上陸も発表されたイギリス・ロンドン発の『Soho House(ソーホーハウス)』。ここでは、〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉とのコラボモデル NEIGHBORHOOD SSTR N 2005(ネイバーフッド スーパースター エヌ 2005)のローンチを祝した〈NEIGHBORHOOD〉のイベントが開催された。DJは、滝沢伸介自らをはじめ、ザ・クラッシュ(The Clash)のポール・シムノン(Paul Simonon)、Gimme 5のマイケル コッペルマン(Michael Kopelman)、Licaxxx(リカックス)が務めた。

後半に続く。

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