2025年春夏のパリ・ファッションウィーク・メンズを総括 Day 4〜6

ドリス・ヴァン・ノッテンのラストダンス、デニムを多用したテーラードスタイルの〈Junya Watanabe MAN 〉、キム・ジョーンズの手腕が遺憾なく発揮された芸術性の高い〈DIOR〉など、後半戦も注目のショーが目白押し

ファッション 
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去る6月18〜23日(現地時間)に開催された2025年春夏シーズンのパリ・ファッションウィーク・メンズ。本稿では後半戦(Day 4からDay6まで)の現地レポートをお届け。※前半戦はこちらから。

少々疲労が溜まり始めた4日目は、〈Junya Watanabe MAN(ジュンヤ ワタナベ マン)〉⇨〈DIOR(ディオール)〉⇨〈Maison MIHARA YASUHIRO(メゾン ミハラヤスヒロ)〉⇨〈COMME des GARÇONS Homme Plus(コム デ ギャルソン・オム プリュス)〉⇨〈Y-3(ワイスリー)〉に出席した。

“Dress Up Denim”と題された〈Junya Watanabe MAN〉の今季は、ブランドの定番でもあるデニムを用いたテーラードスタイルを発表。ダメージ加工のデニムを中心とした複雑なパッチワークのブレザー&パンツをはじめ、同様のデザイン要素で組み立てられたコート、中盤はブラックからブルーデニムへと移行し、蜂の巣やヒゲがあちらこちらに入ったジャケット、デニムジャケットを解体・再構築したハイブリッドピース、スコーピオンズ(Scorpions)、AC/DC、ブラック・サバス(Black Sabbath)らレジェンドバンドとのコラボTシャツ、終盤はホワイトデニムを使った各種ピースで締め括った。

キム・ジョーンズ(Kim Jones)手掛ける〈DIOR(ディオール)〉は、ここ数年で一番良い内容というか、やや薄まっていた存在感を取り戻した。南アフリカの陶芸家 ヒルトン・ネル(Hylton Nel)がインスピレーション源となった本コレクション。会場には、彼の巨大セラミックアート作品が配置された。ケイト・ブッシュ(Kate Bush)の“Cloudbusting”のライブ音源が鳴り響く中、ショーが開演。陶芸の表現方法を引用したというフォルムは、ボリュームを持たせた丸みのあるものが多く、多数のルックで採用されたスカーフカラーは、職人による手作業感を醸す陶器風のパーツとして表現されていた。〈DIOR〉では、アーカイブの掘り下げが1つの大きな柱となっているが、今季はアーカイブのオートクチュールに見られるカッティングなどをワークウェアに落とし込んでいるという。また、1958年秋冬オートクチュール コレクションで使われなかったイヴ・サン=ローランのスケッチから制作したコートやそこから派生したテーラリングも大きなトピックの1つだろう。その他にもヒルトン・ネルのイラストが配されたニットなども登場した。

〈COMME des GARÇONS Homme Plus〉は、無数のヘアクリップで構築されたカラフルなヘッドウェアを全モデルが着用。序盤は大ぶりのフリルの装飾がテーラードジャケットからシューズまで幅広く採用され、ピンクがキーカラーだったのか、ブラック x ピンクの配色のアイテムも複数登場した。〈Nike(ナイキ)〉との最新コラボスニーカーもピンクカラー。さらにはペイント調の花柄レザーコート、シースルー素材を使って中の構造を可視化させたコートやジャケットなど、ギミックの効いたテーラードアイテムは〈COMME des GARÇONS Homme Plus〉ならでは。

プレゼンテーション形式の〈Y-3(ワイスリー)〉は、兼ねてから噂されていた山本耀司デザインによるサッカー日本代表のユニフォームがショールックの一部としてお披露目された。

5日目は〈Kiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)〉⇨〈Loewe(ロエベ)〉⇨〈kolor(カラー)〉⇨〈Hermès(エルメス)〉⇨〈White Mountaineering(ホワイト マウンテニアリング)〉⇨〈KidSuper(キッドスーパー)〉⇨〈Dries Van Noten(ドリス・ヴァン・ノッテン)〉。

先日、東京に旗艦店をオープンした〈Kiko Kostadinov〉。ファーストルックでフィーチャーされたスナップボタンが、その後もジャケットからパンツ、シューズまでさまざまなピースに採用された。近未来的なカッティングやディテールは〈Kiko〉らしく、グリーン、ブルー、パープルなどを駆使した色使いも秀逸。ストライプもキーとなる要素の1つで、トップス、ヘッドウェアやコートなどにアクセント的に装飾されていた。コレクション全体を通して、ジャストサイズ目の縦長シルエットに。

〈Loewe〉は、ピーター・ヒュージャー(Peter Hujar)やポール・テック(Paul Thek)らの歴史的作品を会場に配置。ゲストは開始前にそれらを直近で見ることができたため、各作品にセキュリティがスタンバイしていた。小鳥のさえずりが聞こえるショーでは、大半のルックで鳥の羽を模したヘッドアクセサリーを使用。ブラックのテーラードからスタートし、ブランドロゴを大きく打ち出したユニークな構造なトップス、胸元が大きく開いたバイカージャケットやポロシャツ、同じく鳥の羽をコーティングしたような煌びやかなベスト、裾を内側に大きく巻き込んだニット素材のパンツ、ポンチョのようなシルエットのギンガムチェックのシャツ、腰を2周するロングベルト、曲線が固定された彫刻のようなコートやジャケットなど、アート性の高いクリエイティブなピースが披露された。

ヴェロニク・ニシャニアン(Véronique Nichanian)の手掛ける〈Hermès〉は、”軽さ、平和、柔らかさ”が今季のインスピレーションだという。〈Hermès〉を象徴する乗馬のイラストをフィーチャーしたトップスやジャケット、軽やかなニット地を用いた襟付きカーディガンやポロシャツ、ブルゾンの袖を落としたような薄手のベスト、シルバーのペイント加工を施したコート、花柄のシャツやジャケットが登場。会場の各所に大型スクリーンを活用した水景を配置し、ビーチアイムを昇華させたようなスタイリングを展開。ボトムスはワイドのクロップドパンツにレザーサンダルが大半のルックで見られた。

毎回趣向を凝らした(良い意味で)風変わりな演出の〈KidSuper〉。〈Amiri〉と並び、パリで一番アメリカを感じさせるブランドだが、今回もジャレッド・レト(Jared Leto)、ウェストサイド・ガン(Westside Gunn)、タイ・ダラー・サイン(TY DOLLA $IGN)らが来場した。シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)とのコラボレーションによるパフォーミングアートとファッションを融合させたショーは、操り人形がテーマ。テーラードからニット、シャツ、レザーまでほぼ全てのアイテムで絵画やイラストを総柄的に使用。ブランドらしい大胆な色使いは今季も健在。2000年代初頭を彷彿させるバギーシルエットのヒップホップスタイルも複数のルックで登場した。

そして、今季のファッションウィーク最大のハイライトと言えば〈Dries Van Noten〉だろう。デザイナー引退を発表したドリス・ヴァン・ノッテンのラストダンスだ。詳細については別記事をご確認いただきたいが、ランウェイが終わった後に巨大なミラーボールの前で、誰よりも楽しそうに踊る本人の姿が印象的だった。

パリコレ最終日は、いつも通りジャパンデー。〈sacai(サカイ)〉⇨〈doublet(ダブレット)〉⇨〈TAAKK(ターク)〉に出席した。予定していた〈BED j.w. FORD(ベッドフォード)〉は時間を勘違いしてしまい、見逃してしまいました。関係者の皆様申し訳ございません)。

阿部千登勢の手掛ける〈sacai〉は、ジェームス・ディーン(James Dean)の『この世に生きる主な理由は、発見することである』 という言葉が出発点となったという。ショーのセットは、ジェームズ・ディーンが幼少期に住んでいた家の前で撮影された写真が着想源に。彼をモチーフとしたスタイリングも多く、ジェームス・ディーンの象徴的なハリントンジャケットを〈sacai〉流に再解釈。ボリューム感のシルエットに仕上げられた。ウィメンズは大きく丸みを持たせたショルダーを多くのピースで採用。〈sacai〉をシグネチャーであるハイブリッドは今シーズンももちろん健在だったが、ややシンプルになった印象を受けた。〈sacai〉といえば、コラボレーションも話題となるが、西山徹の〈WTAPS(ダブルタップス)〉から、タイプI、II、IIIのハイブリッド・ジャケットをはじめとする多くのルックに登場した〈Levi’s®(リーバイス®)〉、最新モデル Zegamadomeをお披露目した〈Nike(ナイキ)〉まで、期待を裏切らないラインアップとなった。“応援”をキーワードに掲げた〈doublet〉は、応援=推しということで、コラボレーターをアイドルに見立てたコンセプトに。学生服やポンポンなどを応援団をモチーフとしたルック、浜崎あゆみのロゴをサンプリングしたデザイン、アニメ風のイラストや“推しが尊い”というワードをプリントしたTシャツやデニムなどを筆頭に、〈doublet〉特有のユーモア&ギミックと最新技術が融合した唯一無二のピースを展開した。

「2024年パリオリンピック」を控えていたこともあり、全体的に“団結”やスポーツを意識したブランドが目立った印象の今シーズン。近年は、来場セレブリティが話題の中心になることも多かったが、デザイナー仲間や関係者のみを招待した〈Dries Van Noten〉、そういった価値観とは無縁の〈Rick Owens〉、アート性を強く打ち出した〈DIOR〉や〈Loewe〉などのおかげで、いつも以上にあまり雑音なく、純粋にファッションに染まった1週間となった。

個人的ベストショー
Rick Owens、Dries Van Noten

個人的ベストコレクション
DIOR、Junya Watanabe MAN

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