Jaguar と Land Rover が描くサステイナビリティ戦略
理想論ではなく地に足をつけながら、“時代がこうなったらいいな”という方向に進み始めたジャガーとランドローバー電動化
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「Jaguar(ジャガー)」と「Land Rover(ランドローバー)」が電動化に向けて舵を切り始めている。その“本気度”を証明するべく、千葉県木更津にある”農”と“食”と“アート”をテーマにした循環型の複合施設『KURKKUFIELDS』を舞台に、電気自動車とPHEVのみの試乗会が行われた。そこで行われたプレゼンテーションが実に興味深く、ここにリポートする。
まず、JLR(ジャガー・ランドローバー)のサステイナビリティ戦略は、2039年にネットゼロカーボンを掲げている。ネットゼロとは、温室効果ガスの排出が完全に0で、車両製作工程においてまで、CO2を含む温室効果ガスを出さない戦略だ。その戦略に向かっての大きな動きがまず2025年にある。「ジャガー」がすべての車両をフルEV化するのだ。つまり、現在発売されているスポーツカーであるF-TYPEや、SUVのE-PACEなどガソリン車は2024年をもって終了。来年からは、特別な電気自動車が数台登場するとの噂だ。
いっぽうで、「ランドローバー」は、2030年までに、RANGE ROVER、DISCOVERY、DIFFENDERの3軸すべてに電気自動車のモデルを展開予定だ。そして、現在、力を注いでいるのが、PHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)のモデルである。PHEVは現在、RANGE ROVER、RANGE ROVER SPORT、RANGE ROVER VELAR、RANGE ROVER EVOQUEからなるレンジローバー4兄弟すべてのモデルにラインアップされ、またディスコシリーズにはDISCOVERY SPORTにPHEVモデルがある。そして、これらPHEVモデルは魅力が2つ。短距離の都市移動は排出ガスゼロのEVのメリットがあり、いっぽうで長距離の移動はガソリンエンジンの安心感があり航続距離の不安を心配する必要はない。こうやって考えると、現代の車両選びにおいてPHEVはベストな選択といえるだろう。
ただ、ガソリンモデルに比べて、PHEVは車両本体価格が高い……。それが常識であったが、このPHEVの普及をまずはサステイナブル目標達成の第一歩として考えるJLRは、2025年モデルに切り替わるにあたり、ガソリンモデルと変わらないぐらいの価格に抑えて発表したのだ。例えば、RANGE ROVER VELARのP250という2024年のガソリンモデルの価格は964万〜1207万円であり、P400eという2024年PHEVモデルの価格は1256〜1317万円であったが、このP400eの2025年PHEVモデルの価格は、ガソリンモデルとほぼ同じの1074万〜1208万円に値下げされて登場した。
理想論ではなく、地に足をつけながら、“時代がこうなったらいいな”という方向に進み始めた「ジャガー」と「ランドローバー」の電動化に、今後も注目したい。
試乗会では、RANGE ROVERのPHEVタイプに試乗。木更津周辺を45分ほど駆け抜けたが、すべてEVモードのみでやりくりできた。また、乗っていて楽しく、心にも余裕ができるような感覚になるのがRANGE ROVERの良いところ。現在5代目だが、どのジェネレーションもラグジュアリーSUVを再定義しながら革新している。
こちらは、Jaguarの電動系のラインアップ。左は完全電気自動車のI-PACE。真ん中はPHEVのF-PACE、右はPHEVのE-PACEだ。今後、F-PACE、E-PACEはなくなるが、それに代わるどういった電気自動車のモデルが登場するか、非常に楽しみだ。
『KURKKUFIELDS』
今回の会場は、千葉県木更津市にある『KURKKUFIELDS』で行われた。「農業」「食」「アート」を軸とした複合施設。約9万坪の広大な農場で、多くの野菜、家畜を飼育。また、ところどころに、草間彌生などのアートが自然と調和するように置かれている。宿泊も可能。
https://kurkkufields.jp