デジタルアーティスト Sora Aota/K2 が挑むアナログ世界と視えた先 | Interviews

キャリア初の個展 “想”を東京で成功させ、進化を続けるSora Aota/K2に約2年半ぶりのインタビューを敢行

アート 
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地元・福島を拠点に活動する、現在22歳のデジタルアーティスト Sora Aota/K2。写実的かつスペーシーな作風を武器とする彼は、高校生の頃にiPadで絵を描き始めると、『Twitter(現:X)』にアップしたトラヴィス・スコット(Travis Scott)のファンアートで瞬く間に知名度を広げ、今や国内外のラッパーたちのアートワークを数多く手掛け、2022年には経済誌『Forbes(フォーブス)』が選ぶ“30 UNDER 30 JAPAN(日本発世界を変える30歳未満)”にも選ばれた新星だ。

そんなアートシーンに彗星の如く現れた彼が、去る3月に自身初の個展 “想”を東京で開催したことを記念し、我々『Hypebeast』は事後インタビューを敢行。2024年現在の、等身大のK2/Sora Aotaをお届けする。なお本稿を読進前に、デビュー初期の彼に話を聞いたこちらのインタビュー記事を一読すると、より解像度が高まるのでおすすめしたい。


Hypebeast:まずは、個展お疲れ様でした。少し前の話になってしまいますが、あのタイミングで開催した理由からお伺いできればと思います。

個展自体は、絵を描き始めた頃からずっと夢見ていました。ただ、1つの作品を特定のテーマや世界観で描くことはできるし、絵のタッチも自分っぽいものが確立できていたんですけど、個展となると内容的な部分でなかなか定まらず。でも、1年前ぐらいにようやく固まったので開催を決めました。

なぜ、個展のタイトルを“想”としたのでしょうか?

小さい頃から自然を想像するのが好きで、雲の形や海は人によって想像する形が変わってくるじゃないですか。それが面白くて、その“想像”にクリエイションの“創”もかけて名付けました。

個展開催を耳にした際、“デジタルアーティスト”として活動されていたのでデジタルサイネージ等を使用した展示方法をイメージしていたのですが、実際は全てアナログ作品でしたね。

最初は悩んでいて、デジタルサイネージを使う案も考えたんですけどね。デジタル感が強い僕だからこそ、あえてデジタル感を出さないのが面白いかなって(笑)。

デジタル作品を出力して加筆するなど、初の試みであるハンドペインティングが目立っていましたが、苦慮した点はありましたか?

デジタル作品は、着色を間違ってもすぐにやり直せて、載せたい色も簡単に作れるんですけど、アナログ作品はまず載せたい色を考えながら絵具を混ぜて作らないといけないし、失敗できないので慎重に進めると時間が経って絵具が固まってしまうんですよ。それに、ハンドペインティングで絵を描くこと自体が小学校の美術の授業以来で、何もかも手探りだったから想像以上に仕上げるまでが大変でしたね。

それぞれの作品は、どれくらいで描き上げたんですか?

ほとんどが1〜2カ月ですが、手を動かす時間より考えている時間の方が長かったと思います。シンプルに一番時間がかかったのは“我利我利亡者(がりがりもうじゃ)”で、下書きを書かずに即興で挑んだから、余計に時間がかかっちゃいましたね。

また、展示作品のモチーフや内容は、どのようなタイミングで発想が浮かんだのでしょうか?

ほとんどが寝る前の深夜帯です。布団に入った時、もう触れないように、もう描かないようにiPadを離れたところに置くんですけど、段々と描きたい気持ちが生まれてきて、「忘れる前に描いちゃおう」と集中していたら朝になってます。ある程度、構想やラフが決まれば移動中などでも描きますが、描き初めとなると家以外だと全然何も浮かばないし、集中もできないタイプです。

では、夢から着想することはありますか?

夢を見て、それを出発点に描くことはないですね。むしろ、逆ならあります。

以前までは、トラヴィス・スコットの『ASTROWORLD』に大きな影響を受けたと語っていたように、作品はスペーシーな雰囲気が特徴でしたが、今回の個展では自然をモチーフとした作品が多かった印象です。

今までは、何も考えずに描くと宇宙が楽しくて好きだったんですけど、個展のタイトルが“想”に決まって考えて描くとなったら、ダジャレではなく、自然と自然を描く流れになったんですよ。地元の福島が、海にも山にも近くて自然が多いし、自分の名前が“空”っていうのもあって、無意識のうちに寄ったんだと思います。

宇宙の話が挙がりましたが、青空が描かれることは少ないですよね。

いつも絵を描く時、基本的に青い空を描こうかなと思うんですけどね。結局、上の方にいくにつれて濃い青にして、その濃い青がいつの間にか黒になって、気付いたら宇宙になってるんです(笑)。

展示全体を通して、デビルのキャラクターがフィーチャーされていましたが、あれは一体……?

K2をもじった、ケニーという名前のオリジナルキャラクターです。ゼロからキャラクターを生み出すってなった時、なんだか鬼が描きやすくて、空想上の生き物だから今回の個展に合うなと。今になって考えれば、地元では自然災害を鬼に例える風習があって、僕は東日本大震災で被災しているので、潜在意識にあったのかもしれないです。ケニーは、1体しかいないわけではなく、背が高いやつもいれば、痩せてるやつもいる──人間と同じような存在だと考えてくれればいいです。

以前、他のインタビューで「羽のある生き物が好き」と話されていましたが、ケニーにも羽が生えていますね。

羽のある生き物が好きなのは、絵を描いているからかもしれないです。というのも、宇宙や空をメインに描いていると、必然的に地面で生活する生き物の描き所がないんですよね。でも、蝶々や鳥だったら自由にどこにでも描けるじゃないですか。その延長で今回、鯨や魚は浮遊している感じで描けたんですけど、完全にイメージで描いたので終わってから確認したら全然実物と違ってました(笑)。

そんなケニーは、COIN PARKING DELIVERY(コイン・パーキング・デリバリー)との共作にも登場しています。100%の個が出せるわけではない共作は、いかがでしたか?

やりづらさとかは一切なく、むしろ楽しかったですね。交換日記のような感じで、僕が最初にケニーを描いたところからスタートして、あとは少し描き足しては送るを繰り返し、「どんな感じで返ってくるんだろう」という期待感が毎回あって、自分だけでは思い付かない世界観や描き方が新鮮でしたね。

共作といえば、アパレルブランド ARTCHENY(アーケニー)にデザインを提供していますが、自身の作品を制作する時との違いはありますか?

自分が描きたい絵を描いて、そのまま洋服に落とし込んでも、それがカッコよくなるわけではないんですよね。だから、いつもと違う感覚で制作できて良いんですよ。流れとしては、僕は自由に描いて、落とし込む場所や生地はデザイナーさんに任せている感じです。

それでは、展示を終えて思うことは?

ネットやSNSでしか自分の絵を発表してこなかったので、感想を直接もらえることが初めての経験で嬉しかったし、家族や友人、お世話になっている方々が、わざわざ足を運んでくれたことが印象に残っています。すでに展示をもう一度やりたいと考えていて、海外での開催や完全アナログ作品にこだわったり、コラージュにもチャレンジしたいですね。

話を少し広げると、前回のインタビューからは2年半ほどが経過しましたが、エポックメイキングな出来事はありましたか?

当時は、地元で1人でずっと活動していたんですけど、今はサポートしてくださる方もいて、いろいろなところに行ったり、いろいろな出会いがあったり、特定の出来事というよりも日々の生活が刺激になっていますね。

拠点を東京に移すことは考えていますか?

2年ぐらい前から計画はしているんですけど、タイミングがなかなか合わず、家族や猫と離れるのも単純に寂しくて。でも、展示が終わって落ち着いた今、将来設計を真剣に考えるようになり、目標を達成するためには東京を拠点にした方が動きやすくて刺激もあるから、次の展示は東京で生活しながらアイディアを練ろうと考えています。

今まで作品を生み出していた福島の自室と環境が様変わりしますが、そこに不安はないのでしょうか?

漠然とした不安はありますね。やっぱり、生まれてからずっと家族と住んできたので、心境の変化は絶対にあって、それが作品に表れるかもしれないけど、それはそれでいい経験と変化だと思います。

最後に、今後の展望を教えてください。

年に1回のペースで展示を開催したり、アナログなことに挑戦したり、楽曲のアートワークを制作したりしながら、シンプルにもっと絵の成長がしたいので勉強ですね。そして、視野を広げて活動領域を拡大したいと思っています。

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テキスト
Writer
Riku Ogawa
フォトグラファー
Uran Sakaguchi
エディター
Takeshi Kikuchi / Hypebeast
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