LEXUS は LBX で“小さな高級車”というジャンルに挑む
はたしてそのチャレンジは成功するのだろうか? モータージャーナリストのサトータケシがリポートする
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クルマ業界の課題のひとつに、「小さな高級車」がある。いいクルマに乗りたいけれどデカいのはイヤ、という人はいつの時代も一定数いて、自動車メーカー各社も「小さな高級車」に取り組んできた。たとえば1960年代には、クラシック「MINI(ミニ)」のお兄さんにあたるADO16というコンパクトカーの内装をウッドとレザーで設え、後席にピクニックテーブルまで備え付けたヴァンデン・プラ・プリンセスという「小さな高級車」が開発された。
普段は「Rolls-Royce(ロールス・ロイス)」の後席に乗っているような人が、混雑したロンドン市内をすいすい移動するためのクルマだったけれど、大成功というわけではなかった。というのも、小型軽量のコンパクトカーは物理的にずっしり重厚な乗り心地にすることが難しいし、狭いエンジンルームに大きなエンジンを積むわけにもいかないから加速もそこそこ。結局、インテリアは豪華だけれど、乗り心地や加速感は普通のコンパクトカーと変わらなかったのだ。その後も、同じような理由で「小さな高級車」が大成功を収めることはなかった。
やっぱり「小さな高級車」は難しいのか……、と思っていたところ、「Lexus(レクサス)」がLBXというモデルでこのセグメントにチャレンジした。LBXとは“Lexus Breakthrough X-over”を意味し、難しいとされてきた「小さな高級車」というジャンルをブレークスルーしようという意欲作だ。
乗ってみて、なるほど! と膝を叩いたのは、前後にモーターを備えるハイブリッドシステムのおかげで、加速が滑らかでリッチだったからだ。エンジンは1.5ℓの直列3気筒とコンパクトであるけれど、2基のモーターがアシストするおかげで、高級な加速感を実現したのだ。加えて、試乗車にはクルマが発生するノイズに逆位相の音をぶつけるサウンドシステムのオプションが備わる“ノイキャン”仕様だったから、室内はいたって静か。加速がショボくてエンジン音がうるさいというコンパクトカーの弱点を、テクノロジーで克服したのだ。
加速だけでなく、コーナーを曲がるのも楽しい。ハンドルを切ると、ドライバーの意思がクルマの動きに正確に反映されるから、気分がいいのだ。結果、後席でゆったり寛ぐという昔ながらの高級さではなく、ドライバーがリラックスして運転を楽しめるという現代的な高級感を実現している。ハイブリッドシステムがもたらすシームレスな加速感と素直なハンドリング性能の組み合わせによって、新しい時代のファン・トゥ・ドライブを表現しているのだ。
隙のないクールなインテリアはいかにも「Lexus」らしく、コンパクトカーだから手を抜いたということは一切ない。試乗したのは“Relax”というグレードで、セミアニリンの本革シートの手触りのスムーズさは、上級グレードと比べても見劣りしない。また、シートの色や素材、ステッチのパターンなどを豊富なバリエーションから選択して自分だけの1台を作る“Bespoke Build”も用意されていて、オーダーメイドの楽しみが味わえるのも高級車にふさわしい。
高度な運転支援機能や安全装備も最先端で、「大きな高級車」から見劣りする点はない。たとえばオプション装備されていた「Lexus Teammate Advanced Park」という駐車をアシストしてくれる機能を試したところ、縦列駐車、車庫入れ、ともにドライバーはスタートボタンを押すだけで、一発でキメてくれた。
衝突を回避したり、衝突の被害を低減してくれる自動ブレーキなどの機能を試すわけにはいかなかったけれど、見事な駐車アシストから想像するに、安全機能も確実に働いてくれそうだ。
といった具合に、レクサスLBXはサイズが小さいというだけで、快適性や乗り心地、安全性には一切の妥協がないという真の「小さな高級車」だった。こういうクルマを待っていた、というクルマ好きもきっと多いはずだ。
Lexus LBX
全長×全幅×全高:4190×1825×1545mm
ホイールベース:2580mm
エンジン:1.5ℓ直列3気筒+モーター(ハイブリッド)
システム最高出力:136ps
トランスミッション:CVT
駆動方式:前輪駆動または4輪駆動
車重:1320kg
¥4,600,000〜(税込)
問い合わせ:レクサス インフォメーションデスク(➿0800-500-5577)