フューオフで作られた Rolls-Royce のアルカディア・ドロップテールって?

15〜20人程度のエンジニアや職人たちが4年近い歳月をかけてようやく作り上げたという

オート
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コーチビルディングとは?

Rolls-Royce(ロールス・ロイス)」がコーチビルディングの最新作アルカディア・ドロップテール(Arcadia Droptail)を発表した。コーチビルディングとは聞き慣れない言葉かもしれないが、ひとことでいえばクルマ界のオートクチュールのようなもの。実際のところ、一品モノの誂え服としてファッション界の頂点に位置するオートクチュールとロールスロイスのコーチビルディングの間には、いくつもの共通点がある。

ファッションも自動車も、いまや大量生産が当たり前。でも、そうした時代の流れに背を向け、敢えて一品モノ(もしくはごく少数が製作される作品)にこだわっているのがオートクチュールであり、コーチビルディングである。当然、コストは既製品の何百倍も何千倍もかかる。でも、既製品では生み出し得ない優れたクォリティとデザイン性がオートクチュールやコーチビルディングの魅力のひとつ。そして何より、決まったお客さまのために作られるため、既製品では考えられないくらい個性が強調されているのも、オートクチュールとコーチビルディングに共通している点だ。

オートクチュールが、本来はパリ・オートクチュール組合に加盟するごく少数のブランドにのみ使うことが許された言葉であるのと同じように、コーチビルディングを手がける自動車メーカーも世界中にごくわずかしかない。なにしろ、巨大な機械を使って大量生産されるのが現代の自動車である。それを、熟練の職人たちが手縫いで作るオートクチュールと同じように、特別に誂えて作るのがどれくらい難しいことかは容易に想像できる。

その歳月と費用は?

今回発表されたアルカディア・ドロップテールの場合、15〜20人程度のエンジニアや職人たちが4年近い歳月をかけてようやく作り上げたという(最盛期には25名ほどが関わった模様)。その価格は例によって公表されていないものの、一部には40億円との推測もあるほど、一般的なクルマとはケタ違いの存在である。なお、コーチビルディングには、完全な一品モノのワンオフと、基本デザインを数台もしくは10数台程度で共有するフューオフの2種類がある。アルカディア・ドロップテールは後者のフューオフで、合計4台ほどが製作されるドロップテール・シリーズの1台。それでも、同じボディ・パネルを用いるクルマがこの世に4台しか存在しないことがすでに信じられないし、その4台にしてもボディカラーやインテリアの仕立てはまったくといっていいくらい異なっている。つまり、顧客の個性を表現する余地は存分に残されているわけで、それこそコーチビルディングの醍醐味といえる。

アルカディア・ドロップテールの内外装

事実、アルカディア・ドロップテールは、すでに公表されている他の2台のドロップテールとは異なり、とてもシックで落ち着いたデザインでまとめられていた。ボディカラーのホワイトは、「シンプルなものが好き」という注文主の好みで決められた。ただし、このホワイトもアルカディアのために特別に調合されたもので、よく見ると、ペイントのなかにブルーやオレンジに輝くフレーク(メタリックカラーやパールカラーを作るための光を反射する小さな素材のこと)が含まれていて、光の加減によって色味が変わって見えたり、ボディパネルの抑揚を強調する効果をもたらしている。その、ピュアでありながら深みのある味わいこそ、アルカディア・ドロップテールを象徴する特徴のひとつだ。
フューオフで作られた Rolls-Royce のアルカディア・ドロップテールって?  Arcadia Droptail

ホワイトとブラウンで統一されたインテリアもシンプルかつシック。でも、そこから言葉では言い尽くせないクォリティ感とオーラが感じられる。これもまた、ロールスロイスのコーチビルディングならではといえるだろう。とりわけ目を奪われるのがキャビン後方のウッドパネル。木目を斜めにつなぎあわせたこのパネルの製作には、職人たちが合計で8000時間を費やしたというほど手の込んだもの。それも、よく見れば表面が微妙に膨らんでいたりくぼんでいたりする。これほど繊細なウッドパネルを立体形状に仕上げるのに、どれだけの技術と労力が費やされたのか、想像もできない。

オートクチュールがそうであるように、ロールス・ロイスのコーチビルディングもまた、自動車メーカーであるロールス・ロイスと注文主が共同で作り上げる芸術作品に近い存在。その意味でいえば、試されているのは顧客のセンスと創造力であり、それを実現するロールス・ロイスの経験と技術力といえるかもしれない。

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テキスト
Writer
Tatsuya Otani
エディター
Noriaki Moriguchi / Hypebeast
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