『忍びの家 House of Ninjas』賀来賢人が描く新たな“忍者”の姿 | Interviews
忍びがいまなお、活動していたら──。
2月15日(木)に公開された『Netflix(ネットフリックス)』シリーズ『忍びの家 House of Ninjas』。本作は、現代の日本を舞台とし、もともと家業であった“忍び”から足を洗った俵家の人々が、ある事件をきっかけに、国家を揺るがす危機と対峙していく完全オリジナルストーリーだ。キャスト陣には、主演の賀来賢人をはじめ、江口洋介、木村多江、高良健吾、蒔田彩珠、宮本信子らといった豪華俳優陣が名を連ねている。また、アメリカから気鋭の映画監督 デイヴ・ボイル(Dave Boyle)が参加。国外の視点を取り入れた“忍者”の姿を映すスパイアクションと、ハートフルなファミリードラマを融合した、“現代最後の忍びたちの物語”が展開される。
この度『Hypebeast』は、本作において主演/原案に加え、共同エグゼクティブプロデューサーも務める賀来賢人に、作品にかける思いや制作秘話を訊いた。
Hypebeast:忍びの家 House of Ninjasは、賀来さんがNetflixに直接持ち込んだ企画と伺いました。どのような経緯があったのでしょうか?
賀来賢人:コロナ禍は、撮影が飛んでNetflix三昧でした。その際に、あらためて韓国のエンタメのレベルの高さに打ちのめされてしまって。しかし打ちのめされていたのは束の間で、すぐにこう思いました。日本のコンテンツがどこまで世界で戦えるのか挑戦したい、と。
そんな僕の目に留まったのが、手裏剣で楽しそうに遊ぶ子供の姿でした。せがまれて忍者のテーマパークにいったんですが、気づけば子供よりも僕のほうが夢中になっていましたね(笑)。けして大掛かりなテーマパークではなかったのですが、外国からの観光客もわんさかいて。そこで、はっと気づいたんです。忍者って、日本が誇るカルチャーじゃないか、と。
僕はさっそく忍者にまつわる文献を読み漁りました。一言でいえば、どこまでも奥深く、ロマンが詰まっていて。構想の際には、全幅の信頼を置く監督の村尾義昭さん、そして俳優、演出、作家とマルチに活動する今井隆文さんに声をかけ、夜な夜なミーティングをしました。テーマは、忍びがいまなお、活動していたら──。
アイデアを20ページほどの企画書にまとめ、Netflixに持ち込んだのが2020年のことでした。30代を迎えた僕の心のなかには自分の力でどこまでできるのか試してみたい、という思いも芽生えていたのです。
まるで一編の物語を読んでいるような顛末です。明らかに導かれていますね。
僕も運命めいたものを感じました。直感を信じるタイプなので、なにがあってもめげずに突き進みました。
ところが待てど暮らせどNetflixからの返事がこない。一報を受け取ったのは、そうですね……。企画を持ち込んで半年くらい経っていたと思います。連絡を受け本社にお邪魔すると、100ページを超えるバイブルがすでにできあがっていました。バイブルとは、物語の起承転結やキャラクター設定をまとめたものです。
そうして命がけの作品と言い切る作品が完成したわけですね。見どころ満載ですが、なにより俳優としての賀来賢人の存在に惹かれました。シリアスな役はこれまでもありましたが、そこに逡巡、葛藤という心象風景が加わっていて、それが演技に深みを与えていました。
得意じゃないところをやってみようと思ったんです。得意じゃないところはなにかといえば、ヒキの演技です。台詞も最小限にとどめて、言葉に頼らない表現を目指しました。
いわれてみればなるほど、ベテラン俳優を彷彿とさせるような演技でしたが(笑)。難しさはありませんでしたか。
新たな挑戦とはいえ、役づくりにおいては苦労はありませんでした。なぜなら、自分がつくった物語ですからね。
アクションシーンも圧巻でした。
この作品、ほとんどのアクションを僕らが演じているんですよ。なのでトレーニングにもそれなりの時間をかけました。
Instagramで拝見しましたが、賀来さんの身体はバキバキでしたね。
クランクインまでの2年間は毎日のようにジムに通い、1日8食とったり、オレンジジュースを2リットル飲んだりしました。痩せ型だと筋肉がつきにくいんです。いったん20kgほど増やして、そこから絞っていきました。
身体をつくって役に臨む、というのはよくあることなのでしょうか。
いえ、これが初めてです。
作品のなかではその肉体美にお目にかかれるのですか?
残念ながらほとんどないんです。唯一のシーンではここぞとばかりに渾身の筋肉を披露したんですが、監督からやりすぎといわれて撮り直しました(笑)。
取材のため先んじて視聴した編集部員のなかには「これまで観たNetflixの作品のなかでダントツに面白かった」と表する者もいました。忍者というコンテンツを大人が観られる域にまで高めた要因はなんでしょうか。
家族をテーマに、忍者という存在をきちんと描いたところにあるんじゃないかと思います。飛び道具的な扱いにせず、一人の人間としての苦悶を丁寧に描きました。堪え忍ぶ姿はいかにも日本人的であり、これを見事にすくい取ることができたのはデイヴ・ボイルという男が監督を務めたから。僕が彼を最高の才能と評した所以です。
役者さんが一人残らずはまり役だった、というのも大きいと思います。
そうなんですよ。みなさまは想像をはるかに超えてやりたかったことを理解してくれた。みなさんの演技をみていたら、役者さんってすごいなって、泣きそうになりました(笑)。
賀来さんは共同エグゼクティブプロデューサーとしても名を連ねていますが、キャスティングにも関わられたのですか?
僕が直接連絡して出演交渉したかたもいらっしゃいますね。
プロデューサーとしての仕事の領域を教えてください。
企画、原案、プロデュースの全てです。編集現場にもつきっきりで僕なりの意見を言わせてもらいました。やってみてわかったのは映像作品は終わってからが本当の勝負ということ。ここで手間をかけるかどうかで、作品の出来不出来は決まります。
プロデュース業は今後、ひとつの柱になる?
一つやれたから、やれると思うし、やっていきたいと思います。なんなら自分は完全に裏方に回ってもいいくらいですね。もちろん、プレイヤーとしてもまだまだやっていくつもりです。海外にも挑戦したいですしね。
かつて観たことのないドラマとの触れ込みでしたが、いまのところ(取材用に公開されたのは4話までだった)、奇をてらっていない王道のストーリーという印象。どんな展開が待っているのでしょうか。
それは観てのお楽しみです(笑)。ひとついえるのは、エンディングを盛り上げるのはやはり家族の絆、ということ。胸がギュッと締めつけられること請け合いです。
賀来賢人 KENTO KAKU
1989年7月3日生まれ。映画『神童』で2007年にデビュー。近年の主な出演作は、映画『今日から俺は!!劇場版』(2020年)、ドラマ『半沢直樹』(2020年)、ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(2021年)、ドラマ『マイファミリー』(2022年)、映画『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~』(2023年)など。