決して干されない男? カニエと共に再び注目を浴びるデザイナーたち
2010年代をリバイバル?
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先日ようやくリリースされたカニエ・ウェスト(Kanye West)/Ye(イェ)とTy Dolla $ign(タイ・ダラー・サイン)の共作アルバム『Vultures 1』。同アルバムは既に『Apple Music』において、100カ国以上でナンバー1を記録、(カニエ自身のSNSアカウントによれば)マーチャンダイズも合計1,930万ドル(約28億8,000万円)を売り上げたと報じられている。度重なる問題発言・行動によって、一時は完全に窮地に立たされていたカニエだが、ある意味カルト的というか、キャリアが長いだけあり、根強いファンも多く、1年以上の時間(その間にユダヤ人コミュニティに対して、自身の言動を謝罪している)をかけて、完全とまではいかないがほぼ復活。今回の『Vultures 1』によって、業界全体が再びカニエの影響力の大きさを思い知った形だろう。干したくても決して干されない男、それがYeなのかもしれない。さて、そんなカニエの再躍進に伴い、再ブレイク?の兆しを見せているデザイナーがいる。
1人は、ゴーシャ・ラブチンスキー(Gosha Rubchinskiy)。ご存知の方も多いと思うが、2023年12月に〈YEEZY(イージー)〉デザイン部門のトップに就任している。2010年代中盤は、現在でいうところのデムナ(Demna)的な人気と影響力を誇っていたゴーシャだが、自身の名を冠したブランドは休止し、2018年以降目立った動きはなかった。当時を知るファンを中心に、ゴーシャのカムバックを歓迎する声は多いが、現段階では〈YEEZY〉のアナウンスを除いて、めぼしいニュースはない。しかし、公式『Instagram(インスタグラム)』アカウントでは「Gosha Rubchinskiyは、独立したブランドとして、新たな方向性を打ち出しました。COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)やRASSVET(PACCBET/ラスベート)ファミリーから離れ、私たちのブランドは独自の道を歩んでいます。ゴーシャのクリエイティブなリーダーシップのもと、インディペンデント精神とクリエイティブな意欲を体現するエキサイティングな新しいプロジェクトやコラボレーションを展開していきます」という声明を発表しており、今後の動向が最も気になるデザイナーの1人だろう。
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Mega/Gc Images
もう1名は、アメリカ・ロサンゼルス発の〈424(フォートゥーフォー)〉を手掛けるギレルモ・アンドラーデ(Guillermo Andrade)だ。彼もゴーシャと同じく2010年代中盤のストリートシーンで活躍した人物。一時は〈Fear of God(フィア オブ ゴッド)〉と並ぶと言っても過言ではない人気を誇り、日本でも腕章付きのデニムジャケットなどが流行した。その後は、2019年にイギリス・プレミアリーグの名門サッカークラブ アーセナルFCとパートナーシップや、2021年に〈adidas(アディダス)〉とのコラボレーションなどを発表してきたが、LAシーンの落ち着きもあり、消えはしないまでも過去のブランドというレッテルを貼られていた感は否めない。しかし、ここにきてカニエが〈424〉のアイテムを突如着用。レザーのトレンチコートやウォッシュ加工のレザーパンツなど、よほど気に入ったのか、それらを愛用する姿が頻繁に捉えられている。また、2月にはロサンゼルスのメルローズ・プレイスにオープンした〈424〉の旗艦店のオープニングパーティにも出席。両者はもともと知り合いであったとは思うが、このタイミングで急接近している。
ゴーシャの起用については、読めなくもなかったが、ギレルモは「なぜ今?」感も強く、何かしらのプロジェクトが進んでいる可能性もなきにしもあらずといったところだろうか(というか期待したい)……。