やっぱり一番売れているメルセデス・ベンツのCクラス
『Hypebeast』編集部森口が、クルマ試乗記をスタート。第1弾リポートは、乗用車のザ・スタンダード、「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」 Cクラス(C-Class)だ。
「スムーズで快適。以上」
……この10文字だけで、試乗記を終わるわけにはいかないか(笑)。今回、筆者は、「Mercedes-Benz」 Cクラスから、試乗記の第1弾をどうしても書きたかった。というのも、Cクラスこそ、現在の乗用車の“ザ・スタンダード”とされているからだ。つまり、論評するなら基準を知ることが大事。ゆえのCクラスチョイスである。そして、そんなド真ん中となる1台がむしろ好きな読者諸兄におすすめであるからだ。
さて、Cクラス。元祖は1982年に登場したコンパクトセダン、190シリーズである。動力性能や快適性、安全性の完成度が非常に高く、登場より40年経ったいまでも街で見かける、あのカクカクの小型ベンツだ。この“イチキューマル(通称)”は1世代で終わり、1993年にそのフルモデルチェンジ版として登場したのが初代Cクラス。2000年に2代目Cクラス、2007年に3代目Cクラス、2014年に4代目 Cクラスが発売され、今回試乗したのは、2021年にフルモデルチェンジした5代目のCクラス “Mercedes-Benz C 220 d AVANTGARDE(アバンギャルド)”だ。いつの時代も、「Mercedes-Benz」の最高峰であるSクラスの技術を譲り受けており、そのためミニSクラスなどとも呼ばれる。そして今回の新型CクラスはカタチまでSクラス譲り。独特の優越感はCクラスであっても得られる。
試乗車である“Mercedes-Benz C 220 d AVANTGARDE”に対面すると、昨今のクルマが肥大化しているからか、最新Cクラスを少し小さく感じた。しかし、それでも全幅は1820mm。全幅1720mmだった初代と比べると10cmも膨らんでいる。実際に運転席に座ると、ひとつ上のEクラスよりも自分にフィットする感覚があり、走り出すと人馬一体感もそこそこある。そして、乗っていない時も、「あぁ、またすぐに乗りたいな」と思わせる力もある。筆者は、911に乗るととくにこの感覚が強いのだが、最新のCクラスであっても、このクルマに恋するような感覚は得られた。
撮影道具を取りにいき、また駐車場に戻ると、SUVや食パンフォルムのクルマが溢れた駐車場では、このCクラスはすこぶるスタイリッシュに思える。駐車場に停まっているどのクルマよりも、疾走感がある表情。メルセデスには「Sensual Purity(官能的純粋)」というデザイン基本思想があり、それゆえ新型Cクラスには無駄なラインやエッジがなく、シュッとキリリとしたプロポーションだ。これは、なんだろう……そうだ! たまにビシっとスーツを着たときに感じる、あの気持ちよさがCクラスにはある。
一方で肝心の走り心地は?
というと、こちらも気持ちが良い。アクセルを踏み込んだ時はお尻から加速していく感じで、ハンドリングはすこぶるスムーズ。これは、Cクラスの後輪駆動=FRのシステムが貢献しているのだろう。乗り味はよく安定感も抜群。しっとりとしていて、それでいて滑らかな質の良い走り。きっと外から見れば、メルセデスらしく、路面にベタッと貼り付くように走っているのだろう。
試乗車であるC 220 dは、総排気量1,992ccのディーゼルエンジンにマイルドハイブリッドシステムの組み合わせ。アマチュアの筆者にはディーゼルとわからないほどスムーズな走りっぷりだ。回転数を示すタコメーターが4,500回転からレッドゾーンだったので、それでやっとこさ、「あ! ディーゼル車だった」と気づくほどにスムーズ。そして、フロントモニター下部あるガソリンメーターがほぼ満タン時(タンク容量66L)で、航続可能距離は優に1,000kmを超えている。燃費も良く、ディーゼルだと燃料費も安いし、最新Cクラスもなかなか最高じゃないか。
また、くねくねしたワインディングロードが多い福島県猪苗代湖周辺もドライブしてみた。これぞメルセデス品質と言わんばかりの、落ち着いた走り心地はくねくね道であっても健在。ジャズを聴いているかのようなリズムで道をすいすい進める。後部座席に座った人も安心感に溢れた表情をしている。このワインディングロードでは、幅の狭い道路もあったが、そこはCクラス。対向車とすれ違う時に、SクラスよりスリムなCクラスで良かったと思う場面があった。
ちなみに、動力源であるこのマイルドハイブリッドシステムは、5代目Cクラスにして初採用している。大きなトルクのディーゼルエンジンに電気による緻密なサポートが入っているらしい。カタログを見ると、2.0リッターのエンジン単体で200PS(147kW)440N・mを発揮し、そこにさらにマイルドハイブリッドシステムによって、短時間、最大で20PS(15kW)208N・mのブーストが可能のようだ。あ、ディーゼルのトルクが貢献している!とか、モーターが効いている!とか、細かくはわからないが、Cクラスに乗って、「スムーズで快適」と誰しもが感じれそうなのは、この新システムのおかげでもあるのだろう。
また、改めてCクラスのリリースを見ると、
① マイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドによる全モデル電動化
② プラグインハイブリッドモデルの電気のみでの航続距離100km
③ 新型Sクラス譲りの「Mercedes-Benz」の最新技術を多数採用
とある。①と②を強調するところは、電動化に舵を切るメルセデスの表れだと思われる。ただ、プラグインハイブリッドのモデルは日本未上陸。③は、Cクラスは常に最新のSクラスの技術を取り入るので、これはこれで嬉しいポイントが多数。具体的には、サポートの精度を高めた安全運転支援システム、縦型11.9インチのセンターディスプレイによる直感的な操作設定、AR(拡張現実)ナビゲーション、生体認証(指紋、声)によるシートポジションなどの設定、片側130万画素の超高機能ヘッドライト、良好な取り回しと優れたハンドリングを実現する“リア・アクスルステアリング(オプション)”……とこのあたりがSクラス譲りだ。個人的に、約60km/h以下でリアホイールがフロントホイールとは逆方向に最大2.5度傾いてくれる「リア・アスクルステアリング」が秀逸! Uターン時に焦らずスムーズだった。
プライスは?
先代は、安いという印象があったが、試乗車であるC220d AVANTGRADEの車両本体価格は、696万円。ここに、各種オプションが入って803万4,000円だ。売れに売れた、先代のCクラス(2014〜2021年)は、481万8,000円から購入可能だったので、Cクラスのひとつの売りであった「メルセデスなのに破格」というのは、もはやないのかもしれない。そのお買い得なセダン感を求めるなら、498万円から買えるAクラスを買うべきだ。
最後に、実際にCクラスはいまどれほど売れているかを調べたところ、2022年度(2022年4月〜23年3月)では、新車登録台数が1万3,955台で外国メーカー車モデル別で順位2位。ただ、1位のBMW ミニは、MINI 3DOORだけでなく5DOORやCLUBMANなど、全モデル合わせての数字なので、売れている輸入車の事実上1位は、この5代目Cクラスである。いやはや、値段が多少上がっても人気者は人気者である。また、中古車市場でも、最安値は、走行距離1万4,000kmを超えたタマでも約440万円(2023年6月時点)。なんと! リセールバリューも良い。つまり、お買い得で、乗り心地も走り心地も良く、シュッとスタイリッシュで妙な威圧感はなく、優越感も普通感もある。何拍子も揃ったCクラスが、いまなおクルマ界のど真ん中に君臨することを改めて理解した。
Mercedes-Benz C220d AVANTGARDE(MP202301)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1820×1435mm
ホイールベース:2,865mm
車重:1,810kg
総排気量:1,992cc
車両重量:1,810kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:200PS(147kW)/3,600rpm
エンジン最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)/1,800-2,800rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:208N・m(21.2kgf・m)
燃費:18.5km/リッター(WLTCモード)
価格:696万円/試乗車:803万4,000円
オプション装備:ベーシックパッケージ(16万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(23万3,000円)/AMGラインパッケージ(33万7,000円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(24万1,000円)/メタリックペイント(10万3,000円、全て税込)