マセラティと藤原ヒロシによるコラボレーションは、少年時代の憧れを呼び覚ます

『Hypebeast』は、藤原ヒロシとデビッド・ベッカムという文化的アイコンのふたりに、「Maserati」とのコラボレーションや取り組みについて訊いた

オート 
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突然だが、『Hypebeast』の読者は、さまざまなコラボレーションに詳しいはず。近年では、〈Nike(ナイキ)〉とヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の“The Ten”、〈Supreme(シュプリーム)〉や〈PALACE SKATEBOARDS(パレス スケートボード)〉の常にトップクラスのコンテンツ、そして毎度ヒット作を飛ばす〈STÜSSY(ステューシー)〉のコラボレーションがパッと思い浮かぶだろう。いずれも流行の変化を決定づける、ストリートカルチャーの一端を担った。そして、このようなコラボレーションは、大小に関わらず、今もなお、各ブランド間で積極的に行われている。

コラボレーションは、成功のためのひとつの近道といえるが、いっぽうで、批評家たちはファッションやフットウェア業界はパートナーシップで飽和状態だ、と話題にすることがある。されど、まだまだコラボレーションが理に叶うことがある。コラボレーションという行為は、ときにはそのプロセス自体が「必要」であり、カルチャーへの理解を変えるようなこともあるからだ。

そのような瞬間は、コラボレーションが溢れる現代では、もはや希少なものとなっているかもしれないが、1930年代半ば、イタリアのファッションデザイナー エルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)が画家であるサルバドール・ダリ(Salvador Dalí)とともに発表したアーティスティックな服を思い出してほしい。あれはまさに、史上初のアートとファッションの融合を実現していた。このコラボレーションは、その商品をジャンルの違う多くの人々にまでアプローチできるという新しい方法だった。

このような遠く離れたふたつの世界がひとつになることは、別のジャンル同士でも行われている。ここで話したいのは、自動車業界とアーティストだ。この両者のコラボレーションはたびたび見られ、なかでも1979年にアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)がBMW M1にペイントした1台はもはや伝説的。最近でも強烈なコラボレーションはいくつかあり、150台限定で生産された『KITH(キス)』x「BMW(ビーエムダブリュー」 M4、13台限定で発売されたヴァージル・アブロー x「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」のマイバッハ特別仕様車。そして、かの藤原ヒロシの手掛けた「Maserati(マセラティ)」の限定175台の名作 Ghibli Fragmentがある。

そして、去る4月19日。ミラノデザインウィーク中に、「Maserati」と藤原ヒロシが新たなるパートナーシップを発表した。〈fragment design(フラグメント デザイン)〉x「Maserati」グラントゥーリズモ(GranTurismo)という新コラボが登場するのだ。そこで、『Hypebeast』チームは藤原ヒロシへのインタビューを敢行。藤原ヒロシは、〈Nike〉や〈Moncler(モンクレール)〉などともコラボレーションしているが、御大は「ファッションと自動車業界は非常に異なる」と語った。

「ナイキと仕事を始めたとき、デザインの過程でスウッシュをいじろうとしたら、びっくりされて、絶対ダメだと言われました(笑)」。スニーカーとの協業にはいくつかの苦労があったが、自動車業界とコラボレーションするにあたってはもっと困難なことが多かったという。「洋服と違って、クルマのデザインアイデアは実現が難しいことがたくさんありました。例えば、シートベルトの色を変えるなど、一見簡単だと思っていたことが簡単ではなかった。シートベルトの色変えをリデザインするのにたしか6カ月くらいかかり、 同様に(マセラティ)ギブリのバッジを作り直すのにも同じくらいの時間を要しました」

藤原ヒロシと「Maserati」の、次なるコラボレーションとなるグラントゥーリズモは、まだデジタル版しかない。しかし、彼はそれを含め、新たなる想いについて話してくれた。

ヴィンテージカーがいかに美しいか

藤原ヒロシは、「Maserati」のなかでもっとも技術的に進歩した最新モデル グラントゥーリズモを、過去にさかのぼって唯一無二の作品に仕上げようとしていた。アンティーク調のリベットガラスで囲まれたようなヘッドライト、80年代の8ビットグラフィックを彷彿とさせるリアライト、70年代の「ターボファン」エアロディスクに影響されたというホイール、そして60年代の「Maserati」車を彷彿させるグリッドデザインのフロントグリル……これらのインスピレーションソースは、かつての、美しいヴィンテージカーから採用している。

「スニーカーのデザインと少し似ていて、アーカイブのスニーカーの要素を少しずつ足しながら、アップデートさせていく感じ」と、藤原ヒロシは説明する。そして、スニーカーブランドが過去の作品を引用して、新世代のスニーカーヘッズにインスピレーションを与えるように、「Maserati」自体もまた、過去を参考にしながら先を見据えることを望んでいるという。さまざまな参考元から引用し、若者に語りかける能力を持つ藤原ヒロシに対して「Maserati」のデザインチームは、「ヒロシの手がけるものすべては、パイオニアプロダクトになり得る。彼が描くMaseratiも、次の時代の大きな流れになる」と付け加えた。

この、次の世代にも伝えようとする「Maserati」の取り組みは、藤原ヒロシとの関係だけにとどまらない。もう1人が、「Maserati」のグローバル・アンバサダーであるデビッド・ベッカム(David Beckham)だ。
サッカー選手から実業家に転身し、サッカークラブのオーナー、モデル、デザイナー、そしてクルマ好きとして知られるデビッド・ベッカムは、2021年から「Maserati」ファミリーの一員となっている。彼は、カスタムメイドのMaserati MC20を所有し、グラントゥーリズモの全車種(V6エンジンとEVの両方のバリエーション)を運転したことのある唯一の男でもある。「Maserati」にとっては顔、いやそれ以上の存在で、彼自身の子供たちを含む次のオーディエンスを惹きつける最高の人物だ。

そんなベッカムにとって、fragment designと「Maserati」のコラボレーションは、点と点を結ぶ次のステップだと考えているそうだ。「私はいつもクルマを芸術品の一種としてみてきました。だから、このような人(藤原ヒロシ)らがクルマをデザインしてくれると、彼らがどういうデザインしたのか、ということに対して若い世代が熱狂し、そのムーブメントを知りたいと思うのではないでしょうか。ビジネスの成功にはストーリーテリングが重要ですが、最近はむしろ私の子供たちのほうが、そういった話を聞きたがっています」

ベッカムは、コラボレーションによるデザインの試行錯誤や、その努力などのストーリーテリングがなによりも重要であることを理解している。そしてそのことにより、「Maserati」の歴史は、新しい世代のカーマニアにも開かれるというのだ。

藤原ヒロシとのコラボレーションは、過去と未来の物語がある。いっぽう、ベッカムも、自分の子供たちと、世代を越えて、クルマを通してつながる方法を知っている。「息子であるロミオは、僕のMaseratiを欲しがっている。彼はまだ手に入れることはできないけど、彼にとっては憧れのクルマなんだ。私が子供の頃、父がFord(フォード)のグラナダGTを乗っていたこともあり、Fordのカプリが欲しくなっていた。それに近いものがあると思う。つまり、いま、ロミオは、Maseratiを運転する私を見ている。また、私が登場する前にMaseratiのエンジン音を聴こえることが、ロミオにとってMaseratiをより特別なクルマとしているように思えるんだ」

大人になっても、少年時代に感じたクルマへの憧れは残っている。かつてのデビッド・ベッカムや藤原ヒロシが少年だったときも、そんな想いがあったに違いない。ただ、80〜90年代のドラマチックなスーパーカーは、ポスターとして壁に飾られていたが、いまの若者は、クルマへの憧れをスクリーンセーバー(待ち受け画面)に忍ばせている。

「Maserati」は、〈fragment design〉との新型グランツーリズモを、まずデジタル版で発表したが、それはスクリーンセーバーになり得るほど美しい。藤原ヒロシは、もしかしたら私たちのなかにある、少年時代に抱くような憧れを呼び覚まそうともしたのかもしれない。そして、このように過去の遺産から導き出したデザインを惜しげもなく採用する「Maserati」は、世界中のカーマニアにノスタルジックな驚きを与えることができる、唯一のカーメーカーかもしれない。

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