国立競技場での2日限りの展覧会を目前に控えた YOSHIROTTEN が語る “SUN” とは | Interviews

コロナ禍でスタートしたプロジェクトの(一旦の)集大成ともいうべき、インスタレーション展覧会は、4月1〜2日(土・日)に開催

アート 
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先日、都内で開催された〈Hermès(エルメス)〉のショー “Hermes SPLASH TOKYO”のアーティスティックディレクターを務めたデザインスタジオ「YAR(ヤール)」代表 YOSHIROTTEN(ヨシロットン)。「視覚的なことは全てやってみたい」と本人が語るように、平面から立体、空間までマルチに手掛ける彼だが、直近数カ月だけ見ても、McLaren GTのアートカー、『GINZA SIX』のエントランスに飾られたモニュメント、写真家・TAKAYとの2人個展、〈TIGHTBOOTH(タイトブース)〉とのコラボレーション、ザ・クロマニヨンズ『イノチノマーチ』のMV、「EASTEAST_TOKYO 2023」での作品展示など、そのクリエティブの多彩さが抜きん出る東京が世界に誇るアーティストだ。そんな彼が長年温めてきたプロジェクト “SUN(サン)”が、去る3月21日に本格ローンチを迎えた

この“SUN”は、2020年のコロナ禍に制作を開始したものであり、本人の活動範囲を示すかのように多種多様なフォーマットで、365点の銀色の太陽を表現している。その(一旦の)集大成ともいうべき、インスタレーション展覧会が、4月1日(土)と2日(日)の2日間にかけて、東京・千駄ヶ谷の『国立競技場・大型車駐車場』で開催される。『Hypebeast』では、そんな大規模展示を数日後に控え、多忙を極めるYOSHIROTTENに、“SUN”に込めたメッセージやこれまでの流れなどを伺った。

ヨシロットン 国立競技場での2日限りの展覧会を目前に控えた YOSHIROTTEN が語る “SUN” とは | Interviews

SUNのプロジェクトを始めたきっかけは何だったのですか?

うちはイベントなどの仕事も多く、2020年のコロナ真っ只中の時に、東京オリンピックに合わせて行われる某ブランドのポップアップの内装とかも超カッコよく仕上げていたのですが、世に出なかったんです。そういった感じで作ったものが全然世に出ないという時期がありました。それがとても悲しかったというか、物を作り続けることで僕は生かされてきた。そこでいろんな人と出会ってるし、人が体験して喜んでくれることに、やり甲斐を感じてたと改めて振り返ることになったのが、大きいですね。毎日何かを作り続けることを決意し、1日1個作ろうと思って始めたのが、このSUNです。気が付いたら半年ぐらい経って、100個以上になってたんですね。これを続けて、365日の日めくりカレンダーみたいのを作ったりしてもいいかもとか。実はアウトプットはあんまり考えてなかったんですよ。するつもりもなかったというか、毎日1個の太陽を描き続けていこうというのが、自分のコロナ禍の活動でした。

NFT、書籍、インスタレーションだったり、1つのプロジェクトをさまざまな形で表現している理由は?

もともとグラフィックがベースなので、平面のキャンバスやデジタルアートだけでもよかったのですが、そうじゃない複合型のメディアアートにしたいと思いました。コロナがやや明けた後のRAINBOW DISCO CLUBというフェスで、モノリス型の立体作品を作ったんです。平面だったものが立体になって、その後に空間になる。そういった体感の仕方の方が、この作品を活かしているなと感じて。だったら、いろんな形で表現していこうと思い、音楽レコードやスペシャルな本、アクリル製の小さなモノリスなどを作って、それを多くの人に届けたいという想いから販売するということになりました。そして、みんなが楽しめるものを作りたいってところから今回の国立競技場があるんですね。

長期間のプロジェクトになっていますが、これはどこかで区切りをつけるのですか?それとも続けていく?

続けていきたくて、国立競技場がそれのプレゼンテーションの場でもあるんです。かなりの規模感でやってはいるのですが、もっともっとできる企画だとも思っていて、これから先作りたいものもいろいろあって。宿泊型の施設は公式サイト上にコンセプトモデルを紹介するビデオを載せています。フェスとかやってみたいし、病院とか施設も作ってみたい。

どういう流れで国立競技場で開催することになったのですか?

今年の3月21日の春分の日に、これをお披露目しようと思って、そこまでに1年ぐらいかけてNFTだったり、どういった展示をしていくかなどを準備していました。NFTに関してはシステムから作っているので。春分の日を区切りにしようとチームで動いていて、そこで365個が全て見れる状態にするというのが、まず最初に決めたこと。そこから1週間後ぐらいに展示をしたいと思い、探してもらっていた中で、いくつか候補のうちに国立競技場があったんですよ。グランドではなく、すごい大きな駐車場でやるのですが、そのスペースがベルリンの建物みたいにクールで。国立競技場にした理由はいくつかあるのですが、まずは多くの人に来てもらいたいから。これが地方だったら、もっと大きくて安い場所があったかもしれないですが、国立だと原宿からもすごい近いし、ストリートの子たちも簡単に来れる。

SUNを通じて伝えたいことは?

1日1日を思って描いていたんです。コロナの時に考えたのが、明日が本当にどうなるかわからないし、今日1日をいかに充実して過ごすことを考えてました。毎日、太陽はのぼるけど、同じ日は来ないですよね。その時間を有意義に過ごしてほしいというメッセージが込められています。

その日の気持ちがこの色に表れているということですね。

そうですね、あまり考えていたわけでもないですが、コンピュータの前に座って作業し始めて、よしこれだって思うまでやっていました。数十分で終わる時もあれば、もう少し時間がかかる場合もあったり、バラバラでしたね。

同時にいくつぐらいのプロジェクトを抱えているのですか?

20いかないぐらいの時もあるし、今週だとHermèsとか大きなものがあったので、減らして10ぐらい。4月にGINZA SIXの屋上に公園も作るんですよ。だから大きなものを3つぐらい同時に動かしてましたね。作り続けることが自分でも癖になっていますね。

そういう日々の習慣の捌け口がSUNだったわけですね。

そうですね、もともとは2017〜2018年ぐらいからうちの会社の年賀状にこれを付けてたんですよ。丸しかない・色しかないというミニマルなものだったので、それをちゃんと自分の独自のもので世に出したいなって思った時に、この数だけやったら、もっと強いものになるだろうなって。

これだけいろいろな形で表現されていて、難しかったフォーマットとかありますか?

面白いのがプロダクトごとに製作方法を変えているんです。NFTだと見る日・時間によって、色が変わるんです。1年かけてそれが1周するのですが、これはオンライン上のリアルタイムの技術を使ったからこそできる作品。一方、この本はサンエムカラーという世界で唯一8K印刷っていうすごい技術を持っているところと一緒に作っています。普通、印刷って175線のメッシュなんですけど、ここは1,000線っていう8倍ぐらいの細かい色再現ができる。この色は普通の印刷だと絶対に出せない。本にするなら最上級のものを作ろうって思って、サンエムカラーの松井会長に会いに行って、全面協力いただきました。本が唯一全てのSUNが格納されているフォーマットですね。レコードが僕の音楽ユニット YATTの相方が曲自体を作ってるのですが、A面B面20分なのですが、B面にいくと曲が逆再生されて1周するという仕組みとなっています。ジャケットは限定20枚でそれぞれ別で作っています。アクリルもプリント可能な最大サイズの厚みにしてあります。自宅とかオフィスに飾ってほしいなと。Hypebeastのオフィスとか(笑)。

コロナ禍でスタートしたプロジェクトということですが、コロナを経て今は通常に戻った状態で、働き方に変化はありましたか?

良い意味ではリモートが当たり前になったので、打ち合わせで遠くまで行く必要がなくなった部分もあるし、必要なことだけを話すっていうのは仕事的に効率は上がりましたね。コロナが明けて、いろんなイベントが再開されて、そういった仕事が舞い込んでくることも「やっと来たな」って感じですね。

本当に今年だけでも相当な量をこなしていますよね。本人的には何が一番エンジョイできるのですか?

音楽がやりたかったことなので、レコードジャケットは今でも楽しんではいるのですが、平面を超えてMVや空間を作ったりするようになって、ファッション、音楽、カルチャーにおいて、まだやってきていない表現でどこまでいけるかなっていうところに興味があって。翠月(ミツキ – MITSUKI)、BLOODY ANGLE(ブラッディアングル)、MADAM WOO(マダム ウー)もやらせてもらいましたが、自分の中で新しかったんです。同じ音楽に関わるでも内装はまた全然違って。それでそれを見せることで新しい依頼が来たり。DOMICILE TOKYO(ドミサイル トウキョウ)も面白かったですね。僕らが面白い・楽しい・かっこいいって思える場所を作れているのであれば、それがもっとパブリックなことをやって、世界の人から「東京かっこいい」と思われるようなことに、自分が関われたらいいなって思ってて。それが近い目標かもしれないですね。正直、渋谷の再開発も疑問に思う部分もあるじゃないですか。東京だったら東京らしいことをやれる街にした方が面白いのにって思って。外国人がわざわざゴールデン街に行ったりしてますが、世界のどこにもあるようなカタログの街を作るんじゃないくて、東京の独自性というか、雑居ビルを頑張って維持させて、そういうところに面白いお店を入れるとかしていった方が、東京の街がより活きると思うんですよね。そういうことに興味がありますね。あとは一方で、僕は自然のあるところが好きなので「こんな美しい場所があるよ」って誘致できるようなきっかけ作りになるような活動もやっていきたいですね。

最後に国立競技場の展示を観に来る方へメッセージをお願いします。

1日1日を考えると同時に、体験することって携帯だけじゃわからない空気・時間を体感することだと思うので、それもフィジカルでやってる意味がある。その大きな展示なので、観に来てもらえたら、SUNと繋がるんじゃないかと。それで自分のSUNを持ち帰ってもらいたいですね。

太陽も1日もみんなにとって共通ですし、すごいシンプルだけど考えさせられますね。

そうなんです。これは僕のっていうかみんな楽しむプロジェクトっていうのがしっくりきます。

ヨシロットン 国立競技場での2日限りの展覧会を目前に控えた YOSHIROTTEN が語る “SUN” とは | Interviews

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インタビュアー
Yuki Abe / Hypebeast
フォトグラファー
Yuji Kaneko / Hypebeast
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