キース・ヘリングが実家の壁に書いたアイコニックなモチーフ “Radiant Baby” がオークションに登場
旧所有者が塗り潰そうかと思っていたが、気になったので残した約12.7cmのドローイング
ストリートアートの先駆者、Keith Haring(キース・ヘリング)は、その短いキャリアにおいて、薬物乱用やエイズ危機、核戦争の脅威など、様々なトピックを大胆かつエネルギッシュな表現で独特のアートを生み出した。中でも、“Radiant Baby(ラディアント・ベイビー、光輝く赤ん坊)”は、Keithが信じる人類のもっとも純粋で実在の体験、人間に内在する純粋さを表現した代表作とされる。
9月14日(現地時間)に行われる、米オークションハウス「Rago Auctions」で行われるイベント “Post War & Contemporary Art”の一環として、この希少な“Radiant Baby”のウォールドローイングがオークションに出品される予定だ。Keithは、幼少期を過ごした自宅の寝室にある電気スイッチの上に、この絵を金色のマーカーで描いたとされる。この作品の出品に協力した美術史家のChristine Isabelle Oaklander(クリスティーン・イザベル・オークランダー)によると、Keithはエイズ関連の合併症で亡くなる直前の1990年にこの家を訪れた際、この作品を制作したとのことだ。
2004年にペンシルバニア州カッツタウンにあるこのビクトリア調の家をAngela & Scott Garner(アンジェラ&スコット・ガーナー)夫妻が購入。この家の旧所有者がGarner夫妻に語ったところによると、青い壁に5インチほどの大きさで描かれた煌めく“Radiant Baby”は、最初あまり良い絵だとは思わなかったために塗り潰そうかと思っていたが、後になり気になったので残したらしい。その証拠に、この家の壁に描かれた絵の外側の色は下にある照明用スイッチと一体化しており、かろうじて残された絵は当たり障りのない白色で縁取られていることがわかる。
しかし、このアーティストのファンであるGarner夫妻は、この絵に魅了され、家を購入する前にKeithの父であるAlen Herring(アレン・ヘリング)に連絡を取り鑑定を頼んだ。そしてAlenはこの絵を鑑定しただけでなく、売却後の作品に添える鑑定書にもサインをしてくれたとされる。
Christineは、「この作品は、彼が育った部屋の壁に描かれていたのですから驚きです。この作品は、Keithの部屋であることを示すタグのようなもので、このような作品は他に見たことがありません」と説明する。このドローイングは高さ5インチ(約12.7cm)で、ドローイングが描かれた壁の一部と共に出品されるという。
また、Keithの古い寝室のクローゼットから発見された2枚のポスターと、父AlenがHerring一家の子供4人のために作った秘密基地ユニットもオークションに含まれる予定だ。今回の出品に際し、Garner夫妻とChristineがこの作品への思い入れを語ったドキュメンタリー映像が残されているので、興味がある方は是非ご覧いただきたい。