空山基がロジェ・デュブイとのコラボモデルについて語る

1995年に創立した〈Roger Dubuis（ロジェ・デュブイ）〉は、これまで「Lamborghini（ランボルギーニ）」、「Pirelli（ピレリ）」、グラフィティアーティストのGully氏や、タトゥーアーティスト Dr.Woo（ドクター・ウー）とのコラボコレクションを発表し、時計ブランドとして新たな領域を開拓してきた。そして、今夏に新しく発表されたのは現代美術家・空山基とのコラボレートシリーズ “エクスカリバーモノバランシエソラヤマ”。

本コラボレーションで空山氏が着目したのは、“モアレ”の美学。2本の線または格子が重なったときに生じるモアレは、彼が幼少期より惹かれ続けている光を纏い、どこか怪しげで優雅なエロティシズムを発する。今回は特別に、空山氏のアトリエにて独占インタビューを敢行。着想源になった幼少期の記憶から自身の創作に対する姿勢まで、チャーミングなユーモアとともに語ってくれた。

HYPEBEAST：初めて実物をご覧になってみていかがですか？
すごいなあ。とてもじゃないけど真似できないね、プロだね。

オファーにあたり、Roger Dubuisのチームがアトリエに来て打ち合わせをされたと伺いました。どのようなお話をされたのでしょうか。
コラボレートの話が来る時って、大抵はセクシーロボットを入れてお茶を濁そうということになるんです。私の20〜30年前の絵をどこかに入れる、その程度。営利目的のものばかりで、愛情も何もないですよね。今回は、アイディアが没になっても仕方ないという心持ちでプレゼンをしました。そうしたらRoger Dubuisのチームがきちんと向き合ってくれて。イチから作り直す作業が必要になるアイディアだったので、大変なエネルギーがいる商品だったらしいのですが、1年以上かけて実現することができました。職人さんからは、苦労したという呪いの言葉がすごいみたいですけどね（笑）。でも誇りがあるから挑戦してくれたのでしょう。とても感謝しています。

今回のデザインコンセプトになった、モアレに興味を持たれたのはなぜですか？
いま思うと、子供の頃からずっとモアレに惹かれていたんです。昔、目覚まし時計が壊れたことがあって。バラバラに解体して見ていて、歯車に惹かれたんです。ちょっとエロティックだったんだろうね。あと、ハリウッドやフランスの映画でお姉さんがガーターベルトの下にストッキングを履いていて、ナイロンがこすれるとモアレが起きるんですよ。あれもずっと見ていた。その後、レーザーディスクの仕事をしていたんだけど、CDの七色の光ってイラストレーションはもちろん、カメラでもほとんど正確に映しだすことはできなくて。なんとか克服したかったんだよね。モアレをビジュアルで表現できなくて、ちょうどRoger Dubuisから話が来たから、実現させてやろうと思って。そういうね、意地の悪いところがあるんですよ（笑）。自分ができなかった夢、小さい時から憧れていたものを具現化できる機会なので渡りに船で、とても興奮しましたね。

空山さんが携わられたのは、コンセプトのみですか？
そうです。デザインはしていなくて、モアレのコンセプトを説明しただけ。なるべく大きい歯車でと伝えました。Roger Dubuisのチームはこのアイディアを聞いてちょっと固まっていましたね、めちゃくちゃなアイディアだから（笑）。そこから色々検証してくれたみたいで、実際にGOサインが出たのは2カ月後くらいでした。

第三者にアイディアを具現化してもらう上で、難しかったところはありますか？
こればかりは丸投げするしかありません。だから一流の人たちと組みたい。お仕事として流すような人は、スランプになった時にクリアしようとしないのよ。私に対する愛情だとか、私が興味を持ったものだとかを理解したシンパというか、フォロワーというか、そういう人と巡り合うと傑作ができますよ。今回はコラボレートの甲斐がある作品ができましたね。金字塔になります。

まだ表現に落とし込めていない過去の記憶や美学で、今後挑戦したみたいものはありますか？
自分の絵の中ではもう表現しています。光、反射、透明感とか、そういうものを私はこれから先も、自分の絵では当然だけど、コラボレートやプロジェクトにおいても表現していきたいですね。

“エクスカリバーモノバランシエソラヤマ”は、7月19日（火）から28本限定で国内限定発売中となっているので詳しい詳細はこちらからチェックしてみよう。モアレの美学が表現された、日本限定のアートピースを映したスペシャルムービーは上のギャラリーにて公開中。『HYPEBEAST』独占で捉えた空山氏のファーストリアクションもお見逃しなく。