天の川銀河の中心にあるブラックホールの撮影に初めて成功
国際研究チーム「EHT」によって捉えられた巨大ブラックホール “いて座A*”をチェック

国際研究チーム「Event Horizon Telescope(以下、EHT:イベント・ホライズン・テレスコープ)」は、地球規模の電波望遠鏡ネットワークを用いて天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの撮影に初めて成功した。
ブラックホールは、ドイツの理論物理学者 Albert Einstein(アルベルト・アインシュタイン)が提唱した一般相対性理論の中で予言された、非常に強い重力を持った天体。「EHT」は2019年4月に、楕円銀河 M87の中心にある巨大ブラックホールを撮影した成果を発表した(*詳細はこちら)。この時に撮影された写真の中心にある暗い部分が“ブラックホールシャドウ”と呼ばれ、ブラックホールによって光が脱出できない現象を捉えた確かな証拠となった。
今回撮影された“いて座A*(エースター)”は、我々の住む天の川銀河の中心にある天体。2020年にノーベル物理学賞を受賞した研究チームが明らかにしたように、“いて座A*”が非常に高密度でコンパクトな天体であることはこれまでも知られていた。その質量は太陽の400万倍と見積もられており、地球からの距離は2万7000光年であるため、ブラックホールであると仮定して一般相対性理論に基づいて計算すると、シャドウの見た目の大きさは約50マイクロ秒角と予想することができる。
「EHT」による“いて座A*”の観測は、2017年4月5〜7日と10〜11日にかけて行われた。これは、2019年に発表したM87の巨大ブラックホールと同じ期間中に撮影されたという。M87の観測と同様、各観測局でハードディスクに記録されたデータは、米国マサチューセッツ州のMITヘイスタック観測所とドイツ・ボンのマックスプランク電波天文学研究所へ輸送され、そこでの観測データの結合や慎重な検証を経て、1日当たりの観測時間がもっとも長い4月7日の画像を主な結果として報告している。この画像ではリング状の構造が写っており、その直径は“いて座A*”の質量と一般相対性理論から期待されるリングの大きさとよい精度で一致。また、リングの内側には周囲より暗い部分が存在し、この部分が“ブラックホールシャドウ”にあたる。このような姿が画像として捉えられたことで、これまではブラックホールの“候補天体”であった“いて座A*”が、確かにブラックホールであることが視覚的に初めて証明された。
「EHT」に参加する科学者で、台湾の中央研究院天文及天文物理研究所所属のGeoffrey Bower(ジェフリー・バウワー)は、今回の発表について以下のような声明を発表。「このような前例のない観測によって、銀河の中心で起きている現象に関する我々の理解は大幅に深まりました。また、このような巨大なブラックホールがその周囲の環境に対してどのような相互作用を及ぼすのかについても、深い洞察を得ることができたと思います」
今回の発表の詳細については、こちらでご確認を。