Interviews: 藤原ヒロシと L/UNIFORM のデザイナーが語るコラボレーションへの想い

両者の出会いから約8年ぶりとなるコラボレーションの経緯やアイテムの背景を深掘り

ファッション 
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先日、フランス発のデイリーバッグブランド〈L/UNIFORM(リュニフォーム)〉から、藤原ヒロシの主宰する〈fragment design(フラグメント デザイン)〉との最新コラボバッグがリリースされた。2014年にスタートした〈L/UNIFORM〉は、創業者/デザイナーのJeanne Signoles(ジャンヌ・シニョル)がホリデーに出発する前の荷造りの時に、形の異なるさまざまなバッグをみて「もっと使い勝手の良い完璧なバッグの種類が必要だ」と考えたことをきっかけに誕生したバッグブランド。実は同ブランドが本格的にローンチする以前に、HFとJeanneは出会っている。その後、2014年にHFの手掛ける『the POOL aoyama』からのオファーによってコラボレーションバッグを製作した。そして今回約8年ぶりとなる両者のコラボレーションバッグの発売に際し、Jeanneの来日が実現。このたび『HYPEBEAST Japan』編集長・阿部勇紀が両者へのインタビューを敢行し、2人の出会いから新作コラボバッグのこだわりまでを詳しく伺った。本稿を通して、〈L/UNIFORM〉のプロダクトに込められた哲学を感じ取ってほしい。


HYPEBEAST:まず今回のコラボレーションに触れる前に、お2人の出会いについて教えていただけますか?また、その時のお互いの印象はどのように感じましたか?

藤原ヒロシ(以下、H):何年か前に友達の紹介でパリで会って、一緒にお茶したのが最初です。その時の印象は、すごいパリっぽい綺麗なお嬢さんだなって思いました(笑)。

Jeanne Signoles(以下、J):お互いの共通の友人を介してパリで出会いました。でも最初から彼を「(この方が)藤原ヒロシさんです」と紹介された訳ではなくて、何となく一緒にいる感じでした。最終的にはその友人から、彼の名前を含めきちんと紹介してもらいました。

Jeanneさんは出会う前からヒロシさんのことは存じ上げていたんでしょうか?

J:もちろん、名前は知っていました。1998年から主人の仕事の関係で東京を訪れる機会が多くあって、その時にさまざまな日本の雑誌で“藤原ヒロシ”の名前をよく目にしていたんです。

2014年のthe POOL aoyamaのプロジェクトでコラボレーションしていますよね。このコラボレーションはfragment design側からのオファーだったとお聞きしていますが、ヒロシさんはL/UNIFORMのどんなところに魅力を感じたんでしょうか?

H:その時はまだL/UNIFORMというブランド自体なかったんじゃないかな。多分準備中だったのかも?僕はそれまで全く知らなかったですが、アトリエに伺って色々見せてもらいました。僕らは当時the POOLで売る商材を集めていたんですが、彼女の作るプロダクトを見て、今までのアプローチとは違う高級バッグで良いなと。

Jeanneさんから見て、ヒロシさんの視点のどんなところがユニークだと思いますか?

J:ヒロシさん独自のカルチャーを持っていることが、他の方にはない点だと感じています。彼はファッションだけでなく、音楽など幅広い分野でそれぞれの強みを持っていますよね。ですから、L/UNIFORMを紹介する際にも私からブランドについてあれこれと説明するよりは、まずはヒロシさんがプロダクトを見てどういう風に感じるのかを知りたいと思っていました。L/UNIFORMは私一人で始めたブランドです。当初は素材の開発から、シェイプや色の選定まで私が自ら行っていました。最終的にはそれが売れないとブランドとして成り立たないですし、どのように売るかなど、さまざまなことを一人で考えていた時期にヒロシさんと会う機会を得たんです。元々日本のカルチャーに対しての興味やリスペクトはありましたし、彼独自の視点からの意見をぜひ聞きたいと当時は思っていました。

では、Jeanneさんにとってヒロシさんとの出会いはまさにターニングポイントだったわけですね。

J:確かにそう言えるかもしれません。でも、その時は既にいつくかサンプルが仕上がっていたので、できればもっと早く、まだL/UNIFORMというブランドを立ち上げるアイデアを持っていた段階でヒロシさんと出会いたかったですね(笑)。彼がL/UNIFORMのプロダクトを見てくれた時には、あまり多くを語りませんでした。しかし、その後the POOLのコラボレーションのお話をいただいたので、それは自分のやっていることに対して自信を持てましたし、ブランドにとっても大きな一歩となりました。

ヒロシさんはこれまで数多くのバッグを手掛けていると思いますが、バッグを作る上で常にこだわっているポイントってありますか?

H:(コラボレーションの)相手にもよるんですけど、今回の場合はバッグ専門のブランドなので、元々あるL/UNIFORMのデザインや手法を活かしながら、色を変えるとか僕のアイデアを加えていって、最終的には相手に委ねるという感じですかね。大体僕の場合は自分で作らないので、何でもそうなんですけど(笑)。コラボレーションっていうのは、まず相手あってのものだから。ある程度までは踏み込んで、あとは任せるのがいつものやり方ですね。

他のプロダクトとあまり変わらない、というか同じようなプロセスということですね。では、今回約8年ぶりのコラボレーションが実現した経緯についてお聞きしたいのですが。

H:2019年にL/UNIFORMの東京のお店(*L/UNIFORM TOKYO)がオープンしたタイミングでJeanneが来日してて、その時に話してやろうってなりました。当初はすぐにリリースする予定だったんですけど、コロナのパンデミックがあって色々遅れたりして、結局今年のリリースになりました。

なるほど、リリースのタイミングを見計らってたような感じでしょうか。

H:そうですね。コロナが落ち着いたタイミングということで。

今回のコラボバッグ No.129でこだわったポイントを教えてください。

H:僕は普段自分で使うのは基本トートバッグが多いので、肩にかけられて、プラス手で持てること(*持ち手が2つ付いているのがこのバッグの特徴)。あとはくしゃっとした素材感で、持ちやすいことかな。

元々ベースのモデルがあって、それをアレンジした感じでしょうか?サイズ感がトートバッグにしては割と大きい印象を受けたのですが。

H:僕は割と大きめのバッグが好きなので。サイズに関しては、双方で提案し合いながら、最終的に決めた感じですかね。

J:このバッグのシェイプ自体は既に存在していたんです。でも、ヒロシさんからのリクエストは、既存のモデル(No.54)だとキャンバスが二重になっていて結構な重量があるので、それを1枚にして軽量でソフトな質感にしたいというものでした。そして毎日使えるバッグを作りたいとのことだったので、それらの意見を踏まえて制作をスタートしました。元になったモデルは底が崩れないようにシート状の生地が入っていたのですが、それを省きました。軽量さを維持しつつ、型崩れしないようにボディ表面の底周りに生地を追加しています。さらに元のモデルのハンドルの位置を変更し、ステッチを追加することで底もより強化されて、かなり重い物を入れても形が崩れないようになっているんです。もちろん、そのようなディテールや工程にごだわらなければ手間は減りますし、その分プライスは安くなるのですが、見た目がエレガントになりません。このバックを仕上げるために、特別なマシンを何台も導入しました。例えば、パイピングとハンドルが重なる部分は生地が四重の厚さになっていますよね?その部分でもミシン目が他と変わらないようにするために、大きなマシンを使用しているんです。私には、ミシン目は2ミリというが絶対的なこだわりとしてあります。2.5ミリでも3ミリでも駄目で、必ず2ミリと決めているんです。なぜならそれによってバッグが美しく仕上がるからです。そういったところまで細かく研究しながら制作しています。

今回カラーバリエーションが3色あります。ブラックとネイビーに関してはヒロシさんの手掛けるプロダクトではよく使用されるカラーだと思いますが、レッドは珍しいと思いました。

H:レッドはこのキャンバスに合うと思って選びました。かわいいですよね。今回は結果的にこのカラーバリエーションになりましたが、実はボディカラーがブラックのタイプも当初の候補としてありました。

確かにキャンバスのバッグって使いやすいですよね。

H:持ちやすいし、いわゆるモノグラムとかよりも知的に見えますよね。結局ああいうハイブランドのバッグって、持っていると輩っぽく見えちゃうじゃないですか(笑)。このバッグだと“輩感”は一切なくて、インテリジェンスな雰囲気があるというか。これを持ってたら悪い人には見えないですよね(笑)。

ところで、L/UNIFORMのバッグは普段から使用されていたんでしょうか?

H:そうですね。the POOLでのコラボ以降は使ってました。今日は今回のコラボバッグを使っています。

今回のコラボバッグは各色45点限定なんですね。それぞれがナンバリングされているようですが、#47とか#50という番号もあるのは何故なんでしょう?

J:L/UNIFORMの日本のチームが、日本で縁起の悪い数字を教えてくれたんです。ですので、それらの数字を抜いてナンバリングしています。

H:知らなかった(笑)。幻の#44とかね、数字に罪はないのに(笑)。

ちなみに、ヒロシさんがその番号(#21)を選んだ理由は何でしょうか?

H:サンプルがこの番号だったからかな(笑)。

なるほど(笑)。ここで質問を変えますが、Jeanneさんは普段デザインする上で、どんなことからインスピレーションを得ていますか?

J:私はかつて学校で数学や物理を学んでいて、まず一番最初に数字自体というよりも、数学の背景にある哲学的な部分に興味を持って勉強していました。ですから、先ほどの縫い目に対するこだわりもそうなんですが、数字については私の中に哲学的な考えがベースあって、その視点からあらゆる物事を見てるようなところがあります。私自身は普段から絵も描きませんし、デザインする時もドローイングすらもしませんから、そういった意味ではデザイナーではないかもしれません。バッグも飾っておいて綺麗なものではなく、毎日使えてなおかつ美しくなければいけないと思っています。もちろん、クオリティーも素晴らしいものである必要があります。私には今3人の子供がいるのですが、彼らと色んなものを整理して、サッと出掛けられるようなバッグを考えたりもします。普段の生活に密着した、実用的なバッグを作っていますね。

Jeanneさんはこれまで何度か日本に来日されてると思いますが、お気に入りのスポット等があれば教えてください。

J:根津美術館や伊豆など、好きな場所はたくさんありますよ。あと東京では、小さな通りもいいですね。特に小さい通りを歩いていると、突然目に留まる雑貨屋さんが好きです。小さなぬいぐるみとか小物が置いてあるような。おそらくフランスですと、あらゆる意味でのグローバリゼーションが進み過ぎてしまっていて、そういった小さなお店が見つかりにくくなっています。今回約2年ぶりに東京に来てみて、未だにそのようなお店が存在していることが、フランスと比べて街に対してポジティブな印象を受けています。

面白い視点ですね。では、最後の質問です。今後お二人でやってみたいことは何かありますか?

H:このキャンバスの生地が凄く好きなので、今後も何かできればいいなと思いますね。このバッグのアップデート版とか。

J:私自身は基本的にあまり色々な人と数多くのコラボレーションする必要はないと考えています。今は誰かとコラボレーションすることが、コマーシャルになり過ぎてしまっているので。でも、新鮮な視点をもたらしてくれるような相手であれば、コラボレーションには意義があると思います。私はヒロシさんの感性を信頼していますので、また自然な流れで何か作れたらいいですね。例えばこのバックのスモールバージョンとか、良いかもしれません。

次回のコラボレーションも楽しみにしています。お二人とも本日は貴重なお話をありがとうございました。


今回のコラボレーションバッグ No.129の発売を記念して、東京・丸の内の直営店『L/UNIFORM TOKYO』では、現在ショーウインドーが〈fragment design〉仕様で展開中。期間限定での展開となるため、ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがだろうか。

L/UNIFORM TOKYO
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1
営業時間:11:00-19:00
Tel:03-6812-2930

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