Saint Laurent がランウェイショーの楽曲を収録した12枚のレコードセットをリリース
クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロとショー音楽を手掛けたSebastiAnの特別対談もお届け
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音楽とファッションは切っても切り離せない関係にあるのは広く知られているだろう。このたび〈Saint Laurent(サンローラン)〉は、フランス・パリとアメリカ・ロサンゼルスの店舗『Saint Laurent Rive Droite』限定となるヴァイナルレコードセット “FREQUENCIES”をリリースした。
このボックスセットは、12枚のレコードから構成されており、フランスの音楽業界を牽引するDJ/ミュージシャンのSebastiAn(セバスチャン)が〈Saint Laurent〉のショーのために制作したオリジナルの楽曲が収録されている。それらはクリエイティブディレクターにAnthony Vaccarello(アンソニー・ヴァカレロ)が就任した後の2017年春夏ウィメンズコレクションから2021年春ウィメンズコレクションまでのトラックとなる。先述の通り、レコードはパリとLAの限定販売となるが、楽曲自体は『Spotify(スポティファイ)』や『Apple Music(アップル ミュージック)』でもチェック可能だ。
本稿ではAnthony VaccarelloとSebastiAnのスペシャル対談をお届け。コラボレーションの経緯などについて語ってもらった。
HYPEBEAST:どのような経緯で一緒にやることになったのですか?
Anthony Vaccarello(以下A):共通の友人によって紹介されました。SebastiAnはCharlotte Gainsbourgの新作の作業中で、私はそのプレビューを違法な方法で聴いてしまい、とても気に入ったのです。彼の過去作品も知っていました。私はその詩的な暴力性が好きです。すべてが非常に緊迫ていてシャープですが、聴き取れないということはありません。
SebastiAn(以下S):Charlotte Gainsbourgのニューアルバムをニューヨークで仕上げている最中でした。Nathalie Canguilhem(ナタリー・カンギレム)が、Anthonyと連絡を取るように提案してきたのです。もし我々が一緒に何かをした場合、ショーで何か面白いことが起きるんじゃないかって。そして、それは完全にマッチして、Anthonyと私の世界観の間で何かが動き始めました。以来、私たちは一緒に制作を続けています。
Anthonyは、ファッションショーでのSebastiAnの音楽の役割をどのように定義しますか?彼はあなたのビジョンにどのように加わっていますか?
A:非常に重要な要素です。音楽はショーの一部であり、女性に着せた単なる服だけではありません。SebastiAnとは、非常に短い時間の制約の下にあるファッションショーで、人々に訴えかけたいと心から思っています。ダイレクトかつ瞬時にインパクトを与える必要があります。アイデアについて事前に話し合い、ショーの数日もしくは数時間前に最終の決定を行います。これが適切であり、発展と歩みを完全に揃える必要があるからです。
SebastiAnは、この新しい試みにどのようにアプローチしましたか?
S:プロセスは映画音楽の作曲に非常に近いですが、とても集中力を要します。何が新しかったって、音楽を制作するタイミングです。スタートから完成まで3〜4日です。大変なように思えますが、実はこれ(短いスパンで音楽を完成させること)がとても気に入りました。他のことを考える時間がないというのは、作曲においてとても良いことです。脳から感情へとダイレクトに反映されますから。
これは通常のミックスとはどう違うのですか?
S:すべての音楽を作成するには非常に短い時間です。本当に早すぎるため、オーディエンスと同タイミングで自分の作った曲を聴くようなもので、私はそれが気に入っています。なぜなら私はショーが始まる1時間になっても最終バージョンを渡しません。ショー開始の10分前にすべてが変わったということさえありました。私はこのエネルギーが好きです。このプロセスでは、脳は音楽の敵のようなものです。あなたは物事を起こさせ、分析するのではなく、ただ“作る”必要があります。それは良い気分で、私にとって面白いやり方です。
良いファッションショーの音楽とは何だと思いますか?逆にどのようなものが失敗するでしょうか?
A:良いファッションショーの音楽は、コレクションのアイデアに注目する必要があります。音楽は不快なものになる可能性がありますが、オーディエンスに届くことができなければなりません。失敗するショー音楽は私にはわかりません、まだ体験したことがないからです!
S:それは服を見せることだけではなく、それが生きるフレームを作ることでもあります。音楽と作品が調和していれば機能します。すべてが1つのまとまりのある宇宙を作るときです。逆に、音楽が“ショーの音楽”であると感じた場合は機能していないのです。すべての経験を覚えておく必要があります。
お2人のクリエイティブプロセスを説明いただけますか?
A:それはこだわりから始まります。Love on the Beat、Lemon Incest……Serge Gainsbourg(セルジュ・ゲンスブール)の80年代のビートには、私のやっていることに常にはまる何かがあります。SebastiAnは、私が彼に言った言葉から作曲した曲を聞かせてくれます。私の言うことはほとんどいつも同じなのですが。彼の創造性に感謝します!私たちは耳を傾け、コメントし、楽器を追加し、すべてを分析し、混ぜ合わせます。リハーサル中に鳥肌が立てばOKな証拠です!
SebastiAnはファブリックを音楽的にどのように解釈しますか?レザーですか?ヴァイナルですか?
S:服の質感を文字通りに解釈するのではなく、人々が着ている世界を解釈するのです。あなた自身の投影の感情をデザインするために、あなたが見るものの感情をデザインしなければなりません
音楽を想像する中で“Saint Laurent”が何であるかを考慮に入れていますか?
S:サンローランは強いアイデンティティを持っているので、このアイデンティティを表現するためにさまざまな方法を試したとしても、この特異点をリスペクトすることが重要です。
良いコラボレーションの秘訣は何ですか?うまくコラボレーションするには、ある程度の距離を保つ必要がありますか?
AV:はい、そうです。そうでなければ、同じ波長だとtoo muchになるでしょう。私たちはある特定の方法で互いに交わらないといけません。これにより、私たちは自分で実験し、お互いに会うことに本当の喜びを感じることができます。私はこの種の距離が好きです、それは充実したものです。
共通する音楽的な影響はありますか?
A:Serge Gainsbourgには間違いなく共通していますが、それだけではありません。私たちはそれについて話したことがありませんでした。私たちは何よりも、制御された暴力性、時には映画のような暴力性を備えています。音楽は私にとって非常に重要です。例えば靴よりもはるかに重要と言えます。音楽は残りますから。
あなたにとって印象に残ったグループやムーブメントは何でしたか?
AV:The Velvet Underground(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)、Lou Reed(ルー・リード)、Bowie(ボウイ)。一目瞭然かもしれませんが、彼らは私のリファランスであり続けます。また90年代または2000年代のイケてないたくさんの曲からの影響も自分の一部となっています!