とある理由で Banksy のスクリーンプリント作品 “Morons” が焼却される
作品をデジタル化したことで現物は“用済み”に……
イングランド・レディングの旧刑務所の壁に新作を“ボム”したばかりの覆面芸術家 Banksy(バンクシー)。ストリートアーティストながら彼の作品は数千万円超えの価格で取引されることも少なくないが、2006年に発表されたスクリーンプリント作品 “Morons(能無し)”がとある理由から焼却されてしまった。
“Morons”は、1987年に「安田火災海上(現・損害保険ジャパン)」がVincent van Gogh(フィンセント・ファン・ゴッホ)の“ひまわり”を50億円超え(当時の為替価格レート)で落札したことを皮肉り、“I Can’t Believe You Morons Actually Buy This Shit.(こんな糞みたいな作品を高額で落札するお前らみたいな愚か者が信じられない。)”という額縁されたテキストを前にオークションを楽しむ人々を風刺して描いた作品。2006年に100枚が販売され、今回焼却されたのはBanksyの認証機関サイト『Pest Control(ペストコントロール)』にも本物と鑑定された1枚。
焼却したのはコレクターと投資家のグループで、気になるその理由は“NFT(Non-Fungible Token)”に変換するため。“NFT”とは一般的な仮想通貨とは異なるデジタル資産の1つで、平たくいうと作品をデジタル化して残すこと。当然デジタル化された現物は“用済み”となってしまうので、オリジナルかつフィジカルの“Morons”は残念ながら焼却されることに……。なお、焼却の模様は『Twitter』のアカウント『@BurntBanksy』でライブストリーミングされたのだが、これは2018年にスクリーンプリント作品 “Balloon Girl(風船と少女)”が競売中に裁断されたことで新しく“Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)”と生まれ変わり価値がハネ上がったことに着想したからだそう(詳しくはこちら)。
“NFT”化された“Morons”は現在オークションサイト『OpenSea』にて出品中。本稿執筆時点で3,444ドル(約37万円)となっており、全ての収益は慈善団体に寄付されるとのこと。どういう形であれ作品が破損することは心が痛むが、今後もBanksyの作品は“NFT”化のために焼却される予定だという……。
— Burnt Banksy (@BurntBanksy) March 3, 2021