アートコレクティブ FriendsWithYou が作品を通じて提示する新たな“神話”のシステム

架空の神話 “OCEANの書”をテーマにしたアート展覧会の全貌について、サミュエル・ボークソンとアルトゥロ・サンドヴァルの2人に会場となる『PARCO MUSEUM TOKYO』 にてインタビューを敢行した

アート 

FriendsWithYou(フレンズウィズユー)は、米フロリダ・マイアミ出身のサミュエル・ボークソン(Samuel Borkson)とキューバ・ハバナ生まれのアルトゥロ・サンドヴァル(Arturo Sandvoal III)による2人組アートコラボレーティブだ。2002年より本格的に活動を開始した彼らは、“Magic” “Luck” “Friendship”というキーワードをベースに、“新しい人間関係の構築”を提案する体験型の作品を発表。これらは、“関係性の美学”というテーマに基づいており、彼らの作品を通して私たちが自分自身や他者、自然と繋がり、コミュニティを築きあげてもらうことを目的としている。

表現方法は、没入型インスタレーション、彫刻、絵画、アニメーション、ライブパフォーマンスなど多岐にわたり、2018年には米ニューヨークで毎年行われる大規模なパレード「Macy’s Thanksgiving Day Parade」のデザインを担当したほか、2022年には“スターチャイルド”と題された巨大な鋼の彫刻をマイアミビーチ市のために制作し、市によって永久的なアートワークとして認定されるなどして注目を集めてきた。

そしてこの度、そんな彼らが9月13日(金)から9月30日(月)までの期間、『渋谷PARCO』4階の『PARCO MUSEUM TOKYO』にて、展覧会 “Ocean – Temple of the Sacred Heart”を開催。本展は、“OCEANの書”と名付けられた架空の神話をテーマにした新作の絵画と彫刻を中心に展示する個展であり、光、音、動きを組み合わせた体験型のアート作品 メモリー・ウェーブが設置されるなど、観るだけではなく、本展の世界観に没入できるような展覧会だ。今回『Hypebeast』では、“Ocean – Temple of the Sacred Heart”の開催を記念してFriendsWithYouの2人にインタビューを実施。彼らの出会いや作品に込めた想い、また本展が開催される経緯などについて話を聞いた。

Hypebeast:まずは、本展がスタートした経緯を教えていただけますでしょうか?

サミュエル・ボークソン(以下、S):この展覧会は、NANZUKAとPARCOが僕たちにオファーをくれたことからスタートしました。テーマは、“OCEANの書”。これは、地球を海と仮定し、そこに人類を結びつけることを目的とした架空の神話なんです。私たちには内なる“OCEAN(海)”があり、この地球に生息するあらゆる生物がそこに結束する、そんな新しい神話に基づいたアート作品を今回は展示してみました。

つまり、“OCEANの書”を通して世界中をひとつにすることが今回の展示の目的ということでしょうか?

アルトゥロ・サンドヴァル(以下、A):そうですね。僕たちは、これまで現代のスピリチュアルの在り方を再構築するアートを探求し続けてきました。なので、今回の展示ではこういった僕らのイデオロギーを皆さんに共有できればと思っています。

次に、おふたりがFriendsWithYouを結成した背景をお聞きしたいです。

S:僕は、育ちも産まれもフロリダのマイアミで。あの地域は、みんなが知っているようにかなりクレイジーなエリアでした。当時は暴力やギャングという存在がとても身近にあって、ある意味刺激的な毎日だったと思います。トゥリーはキューバからマイアミに移住してきて、そこで私たちは出会いました。そこで、FriendsWithYouを結成したんです。

それからすぐに意気投合し、僕らは2人でレイブのイベントなどに行くようになりました。そこで、1990年代当時には新鮮だった、平和、愛、団結、尊敬といった新しいアイディアに共鳴していったんです。そうしているうちに、僕らのアイディアを未来に受け継ぐためには“アイディアそのものをデザインし直す”、すなわちアートが必要なのではないかと考えるようになりました。

その考えによってFriendsWithYouが結成されたということでしょうか?

S:その通りです。FriendsWithYouという名前は、パラノイア(人を寄せつけない)の対極にあたるプロノイア(配慮)を表現しているんです。また、仲間を救えば世界に助けられ、それによって人生が豊かになる、といった意味も込められています。

おふたりは、FriendsWithYouを結成する前からアーティスト活動をされていたのですか?

A:僕たちは、生まれながらにアーティストであると考えています。小さい頃からなにかを表現したいと思っていましたし、幸運にも家族に恵まれていたので、学生時代にアートを作るためのスキルを習得していました。なので、2人で一緒に制作を開始し、THE BURGER BUNCHが成功している姿を見て、FriendsWithYouでダイナミックなことができると確信したんです。それからはひたすらアートを作り、23年間、社会実験をしているような感覚で活動を続けています。

今回の展覧会もふくめ、FriendsWithYouの作品からは日本のアニメやサブカルチャーの要素を感じます。これは、普段から意識をして取り入れているのでしょうか?

S:昔から、ハローキティやサンリオに興味がありました。そんな中でアルトゥロと一緒に活動をするようになり、世界中で日本の“KAWAII”カルチャーが消費されているのを見て、アニメは僕らが提唱するアニミズムの概念や神話的な思想を伝える手段やシンボルになりえると考えたんです。

そういった意図が込められていたのは意外でした。それでは話を今回の展覧会に戻したいと思います。“OCEANの書”というテーマ自体は、昔から考えていたアイディアだったのでしょうか?

A:“OCEANの書”自体は4年ほど前に思いついていたアイディアなのですが、今回の展示でこれを発表したことは僕たちにとっては物語のプロセスにすぎません。テーマを決定する際には、お互いにアイディアを出し合い、アートワークを作り、そこからストーリーラインを作り上げていきました。ですが、まだこのプロジェクトは継続中であり、なおかつ僕ら以外のアーティストたちも参加できるオープンなものにしています。そうすることで、現代的な新しい神話のシステムを提示したかったのです。

S:今回の展覧会に登場するそれぞれの作品には深いストーリーがあり、それらがすべて繋がっているということにも注目してほしいです。

PARCO MUSEUM TOKYO内での展示のほかに、渋谷PARCO 4Fの吹き抜けスペースには体験型のアート メモリー・ウェーブが設置されていますが、こちらの作品が持つストーリーを教えてください。

S:メモリー・ウェーブでは“全てのものは海から生まれ、そのもの自体も海である”という考え方を表現をしています。海には波があり、私たちの鼓動と同じく常に動いています。それを体感してもらうべく、“OCEANの書”のマスコットであるブルーのモビーをモチーフにこの作品を制作しました。このモビーに乗れば、今まで体感したことのない新たな感覚であなたを癒してくれるだけでなく、私たちと一緒に世界を救う準備も整うはずです。

展示の準備を進めるにあたって苦労した点やこだわった部分などはありますか?

A:最も苦労したのは、僕たちが表現したい膨大なアートを今回の展示サイズにあうように、いかに絞っていくかというプロセスですね。それでも、NANZUKAやPARCOのチームの皆さんが本当に素晴らしく、僕らを全面的にサポートしてくれたので、結果的に厳選されたアートピースを並べることができました。

S:チームからの手厚いサポートがあったことは、とてもラッキーなことだと思っています。とても感謝していますし、そういった支えがあるからこそ、僕たちのようなアーティストが自由に表現できるのだと思います。

完成した展示会場を実際に目にしたとき、どう感じましたか?

S:とても幸せな気持ちになりました。いつもはさまざまな問題によりうまくいかないことも多いのですが、NANZUKAとPARCOチームのおかげで今日までスムーズにたどり着くことができましたね。彼らは僕たちにとって、家族みたいな存在です。

最後に『Hypebeast』読者に向けてメッセージをお願いします。

A:日本の皆さんに歓迎されていることは本当に光栄です。僕たちは、日本人の互いに思いやる精神性にリスペクトを持っています。日本の持つ文化や感性、職人技などは、西洋人にとって憧れなんです。

S:『Hypebeast』を読んでいる皆さん、まずは感謝を伝えたいです。本当にありがとうございます。僕たちは、お互いに愛し合うことで新たなHYPE(高揚感)の可能性を模索しているのですが、ファッションという文脈の中でもそういったことが発見できるはずです。そんなメッセージも込めた今回の展覧会に、ぜひ足を運んでみてください。

Ocean – Temple of the Sacred Heart

会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川15−1 渋谷パルコ・ヒューリックビル B1-10階
日時:9月13日(金)~9月30日(月)
時間:11:00-21:00

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Presented by PARCO
Writer
Atsutaro Ito
フォトグラファー
Genya
エディター
Rina Sugo
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