世界に1枚しか存在しない Wu-Tang Clan の幻のアルバム『Once Upon a Time in Shaolin』の新たな所有者が判明する
悪名高き前所有者とは異なり、世界中の人々への還元を考えているとのこと
ヒップホップ史上において最大級のインパクトを残したニューヨークを拠点とするクルー Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)。彼らを巡るエピソードは数あれど、やはりTop of the topは幻の2枚組アルバム『Once Upon a Time in Shaolin』だろう。
『Once Upon a Time in Shaolin』について改めて。同アルバムはWu-Tang Familyであるプロデューサー Cilvaringz(シルヴァリングス)が企画し、2008〜2013年にかけて極秘に制作されたのだが、メンバー RZA(レザ)の“音楽は芸術作品である”という思いを音楽シーンに再認識させるため、公への販売を目的とせず1枚のみを生産。完成後は彫金が施された特注の銀製ケースに収納され、買い手がつくまでモロッコにあるホテル「Royal Mansour Marrakech」の金庫で厳重に保管されていた。その後、2015年に行われたオークションで若手投資家 Martin Shkreli(マーティン・シュクレリ)が200万ドル(約2億2,700万円)で落札。しかし、彼は過去に買収した製薬会社が販売する薬を1錠13.50ドル(約1,500円)から750ドル(85,000円)へと釣り上げた悪名高き人物だったため、世界中のヒップホップファンから反感を買うことになったのである。
そしてShkreliは2017年、「世の中はWu-Tang Clanの1枚しかないアルバムに対し、自分と同じように価値を見出しているのか知りたい」と、同アルバムを『eBay』に出品。激しい入札合戦の末、1,025,100ドル(約1億1,600万円)で落札されたものの、落札者の間で何らかのトラブルが発生し、オークションはなかったことに。それからもアルバムはShkreliが所有していたのだが、証券売買詐欺容疑で7年の実刑判決と730万ドル(約8億3,100万円)の罰金を言い渡されたことで、7月にアメリカ連邦政府が『Once Upon a Time in Shaolin』を差し押さえ身元不明のバイヤーに売り渡してしまったのだ。
当然、ヒップホップシーンでは『Once Upon a Time in Shaolin』が誰の手に渡ったのか議論されていたのだが、ついにその人物が名乗り出ることに。買い取ったのは、「PleasrDAO」と名乗る74人から成るNFT関連の投資集団。彼らは400万ドル(約4億5,500万円)でアルバムを購入したそうで、前所有者 Shkreliとは異なり世界中の人々への還元を考えているそうだ。
だが『Once Upon a Time in Shaolin』は先述のRZAの意思もあり、“2103年まで商業的に内容を公開してはならない”という購入条件があるため一般公開は難しいかもしれないが、今後の「PleasrDAO」の動向には注目していきたい。