Sole-Searching:Reebok CLUB C 特集
100年後も色褪せることがないと断言できる不朽の名作にフォーカス

毎月1足、歴代の名作スニーカーの歴史を紐解く連載企画 “Sole-Searching”。第9回目は、Instapump Fury(インスタポンプ フューリー)と並ぶ〈Reebok(リーボック)〉を代表する定番スニーカー CLUB Cを特集したい。
だがCLUB Cについて触れる前に、まずは〈Reebok〉というブランドについて。意外かもしれないが発祥の地はイングランドで、1900年に元陸上選手 Joseph William Foster(ジョセフ・ウィリアム・フォスター)が速く走れるシューズを開発するために前身となる「J.W.FOSTER」社を設立。このため、歴史だけで見れば〈adidas(アディダス)〉や〈New Balance(ニューバランス)〉よりも古い老舗スポーツブランドなのだ。そして、1958年に俊足で知られる同名の動物に着想して社名を〈Reebok〉に変更。1979年にアメリカ進出を果たすと、1982年に発売したエアロビクスシューズ FREESTYLE(フリースタイル)が世界的ヒットを記録したことで(下記MVでMick Jaggerも着用)、1986年には全米トップの売り上げを誇るスポーツブランドにまで成長した。その後もバスケットボールシューズ The Pumpのリリース(1989年)、全体1位指名でNBA入りしたShaquille O’Neal(シャキール・オニール)とのエンドースメント契約(1992年)、Instapump Furyの誕生(1994年)、NFLと独占的パートナーシップ締結(2000年)などのホットトピックスはあったものの、次第に業績が悪化し2005年に〈adidas〉が買収。しかし、2017年まで赤字が続くなど業績回復は見られず、今年8月に袂を分かったニュースは記憶に新しいところだろう。
余談が長くなったが、本稿でフックするCLUB Cは世の中がエアロビクスムード全開の1985年にテニス専用コートシューズとして生を受けた。もともとテニスというスポーツはフランス貴族の遊戯だった歴史もあり、一般市民からすれば敷居が高くお硬いイメージが強かったのだが、1970年代に活躍したアメリカ人テニス選手 Stan Smith(スタン・スミス)および同名のシグネチャーモデルの甲斐もあって、競技人口が爆増。必然的にテニスシューズの需要も急速に高まり、〈Reebok〉がFREESTYLEの人気の波を利用するような形でCLUB Cは産声を上げたのである。
CLUB CはClub Champion(クラブ チャンピオン)、Club Classic(クラブ クラシック)、Revenge Plus(リベンジ プラス)、Monterey(モントレー)という〈Reebok〉の4モデルのテニスシューズを基に設計。縦横無尽にコートを駆け回るテニスプレーヤーのために、頑丈なガーメントレザー(高級天然皮革)をトゥキャップ、アイステイ、バックステイに採用することで耐久性を、取り外しができるウレタンのアーチサポートとテリークロスの裏地によってフィッティング性と快適さを、EVA(エチレンビニルアセテート)を採用したソールユニットでクッション性を実現。これらの高い機能性とあわせて、アイコニックなサイドの“小窓”以外に無駄な意匠を極力施さないミニマルかつクリーンなデザインが評価され、オフコートでも人々の足元を支える1足として定着していったのだ。ちなみにCLUB Cをはじめ、〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉Stan Smithや〈Nike(ナイキ)〉Courtなど、テニスシューズを由来とするモデルにホワイトカラーが多いのは、当時の大会の多くがホワイトのドレスコードを設けていたからである。
2020年は誕生35周年のアニバーサリーだったことから記念モデル CLUB C 85を発売するだけでなく、〈Patta(パタ)〉、〈JJJJound(ジョウンド)〉、〈BlackEyePatch(ブラックアイパッチ)〉、〈Eric Emanuel(エリック エマニュエル)〉、〈yoshiokubo(ヨシオクボ)〉、Cardi B(カーディ・B)、スニーカーショップ『size?(サイズ)』、カルチャー誌 『SNEEZE Magazine(スニーズ マガジン)』などとコラボ。その勢いは2021年に入ってからも止まることを知らず、〈Maison Margiela(メゾン マルジェラ)〉やインテリアデザイン事務所「Eames Office(イームズオフィス)」とのモデルだけでなく、モダンにアップデートした新モデル Club C Legacyやスリッポンタイプまでリリースされている。
なお、今でこそ〈Nike〉のイメージが強いKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)は2014〜2017年の間に〈Reebok〉とエンドースメント契約を締結しており、CLUB Cについて以下のようなコメントを残している。「クリーンでシンプルかつ、デザイン以上の価値があるからCLUB Cは大好きなスニーカーの1つなんだ。自分にとってスニーカーは、それ自体が何を意味するのかを重要視している。自分のルーツに忠実でいること、リアルで居続けること、あるレベルの成功を収めるまで自分自身にプレッシャーを掛け続けてきたこと、このスニーカーの存在がそれと重なる。常に情熱を失わず、成功するためにハングリーでいることが大切なんだ。君たちの“コート”がどんなものであったとしても」
CLUB Cは2次流通市場で高値で取り引きされるようなハイプ性はないかもしれないが、100年後も色褪せることがないと断言できる不朽の名作だ。まだ手に入れたことがない方こそ、本稿を機にぜひ購入してみてはいかがだろうか。