INVITE ONLY : 山口歴 “YOUR OLD FRIEND” 編

10年ぶりの帰国した山口氏に特別インタビューを敢行

アート 
12,212 Hypes

『渋谷PARCO』にて現在開催されている山口歴のエキシビション“YOUR OLD FRIEND”。10年ぶりの帰国となる山口氏だが、本展では代表的なブラシストロークを用いた過去最大規模の作品をはじめ、2000年初頭の大学受験の予備校時代に制作された作品など初期の作品も展示される。その他、アメリカ・ニューヨークのスタジオで実際に使用されている道具、備品、ゴミ(!)までも空輸し、会場にリアルなスタジオを再現。加えて、写真家・小浪次郎氏の写真作品に山口歴がペイントを施したプリント作品やマーチャンダイズの販売も行われている。

『HYPEBEAST』では10年ぶりの帰国した山口氏に特別インタビューを敢行。“YOUR OLD FRIEND”に込めた想いを伺った。

PARCO MUSEUM(パルコミュージアム)の展示はどのようにして実現したのですか?その経緯を教えてください。

高校の頃、確か2001年にKAWS TOKYO FIRSTの展示をPARCOミュージアムで見たのが、そもそもニューヨークに来るきっかけで。その時、今まで自分が知ってたのは印象派とかそういう系の絵だったから、キャラクターと鮮烈な色使い、ストリートで自由に描いててなんかこういう空気感良いなって思っていました。それでいてめちゃくちゃ高額で売れていたし(笑)。絵で飯が食えるんだと漠然と思えたのもKAWS(カウズ)がきっかけだったかも知れないですね。その頃、堅苦しい日本の美大受験絵画にかなり食らっていたので、ニューヨークに憧れを抱く一つの理由ではありました。2年くらい前にそのKAWSのPARCOの展覧会を若い時に感動したって話をFacebookで投稿したらたまたまPARCOの人が見てくれていて、そのまま話が決まった流れです。

あなたはこの10年間日本の地に足をつけていません。このような長い時間を経て母国を訪れることはどのような感じでしょうか。前回に帰国した時から日本はどのように変わったと思いますか?

この自分の10年を言葉で表すなら、「PRISON OF DREAMS(夢の牢獄)」自分は画家になる夢を持ってアメリカに来たけど、日本に10年も帰れなくなってしまったので。夢を見た代償としてNYに閉じ込められたというか。大好きな爺ちゃん婆ちゃんの葬式に帰れなかったり。毎晩日本にいる夢見た時期ありました。めちゃくちゃ色々あったし長い長い10年だった。でも自分の周りの友達もみんなそれぞれ夢を描いてNYにやってきて今も同じ状況の仲間もいるんですよね。そういう周りの友達に支えられ、支え、なんとか今日まで生き抜いてきました。同じコミュニティの絆の強さはまた東京の繋がりとは異質でNYならではかなとも思います。

10年ぶりに東京に帰って来て思ったのが、あくまで自分の一意見として聞いてほしいんですけど、日本は便利すぎて娯楽や情報、物の選択肢が物凄く多いなということ。コンビニに行けばなんでも揃ってるし、レストランもなんでもある。そしてそのどれものクオリティが驚くほどアメリカと比べて高いですよね。だけどその日その日をそういった物や食べ物で充足感を得てたら、自分は何年か先の将来や、長期的な視野で物事を見て何かを成し遂げようって気にならないのではないかと思いました。一方でNYでの生活はものすごいシンプルだと思いました。行きつけの居酒屋も1、2軒しかないし、基本家とスタジオの往復なので。というか日本と比べるとマジで不便ですね(笑)。アメリカに来た日本人あるあるだと思うんすけど、みんなまず料理のスキルが驚くほど上がるんですよ。外食が日本の倍の値段もするし、アメリカには無い日本食を作ろうとするから。トランペッターの黒田卓也くんの家で年に一回開かれるラーメン大会ではみんな1から出汁取ってスープ作ったり焼豚煮込んだりして、それぞれのラーメンの美味さを競うんですけどそれがめちゃくちゃ楽しいんですよね。みんなのレベルが高すぎて自分は一回も優勝したことないですけど(笑)。不自由な環境だからこそ何かをクリエイトする環境が生まれるのかなと。事柄を削ぎ落としていき、シンプルな生活を突き詰めていくと、自分にとって本当に大事なものも見えてくるし、NYにはそれに没頭出来る環境がある。もちろんアメリカにいながら日本的な暮らしをしてる人もいれば日本にいながらアメリカのようなシンプルな暮らししてる人もいると思うんですけど。

この10年間で初めての東京での個展となりますが、この展覧会はあなたにとってどのような意味を持つものでしょうか。

「若い頃にこんな展示を見てたら、かなりぶっ飛ばされてるだろうな」という、20年前の画家を志す前の自分自身に向けた手紙のような展示になっています。高校の頃にPARCOミュージアムでKAWSを見て自由を感じたような、NYのダイチプロジェクトの展示を見て頭を殴られたような衝撃というか。今の若い世代にとって今回の展示はそうあって欲しいなと思います。

“YOUR OLD FRIEND”について教えてください。展示される新作はどのようなものですか?新しい技巧などを用いたものでしょうか。

“YOUR OLD FRIEND”とは“君の古くからの友人”という意味。つまり今日もまだ絵を描いてる自分の事。10年ぶりに地元渋谷に帰るし、ちょうど自分がPARCOでKAWSを見てからも20年経っているし、俺自身は相変わらずあの頃描いた夢を今も追っているので。そういう意味で地元の友達や高校や予備校時代の仲間、そして“絵画”自体が自分にとっての古くからの友人なので、今現在の自分の生き様を表す言葉としてピッタリだなと思って“YOUR OLD FRIEND”をタイトルにしました。この言葉自体はNYの超ぶっ飛んだ写真家の瀬尾って奴とヤバイMV作る丹澤遼介って奴がいて、そいつらと遊んでた時の会話がヒントになってたりします(笑)。

2000年代に大学に在籍していた頃に制作された作品も複数展示されますね。これらの作品について教えてください。

今回、初めてのミュージアムの展示なので、自分の作品の変遷が来場者にわかったほうがいいと思ったので、予備校時代にRichter(リヒター)の写実の方のスタイルに影響されて描いたオイルペインティングや、浪人時代に夜な夜な親父の神南のスタジオでケチャップの容器に絵の具を入れて描いてたお化けキノコのシリーズとか。ニューヨークに来てから描いた人物画とか……。とにかく色んなスタイルで模索してるのがわかりますよね(笑)。めちゃくちゃ葛藤してたんですよね。初期の作品はコレクター達からお借りしました。もう2度と逢えないと思っていた作品達と再会できて、今とても幸せな気持ちです。全部並べてみて気づきましたけど、色々なスタイルを試してきたけど結局全ては現在に繋がっていて、無駄なことは1つも無かったんだなと思いました。

あなたの作品や制作に対する姿勢や技巧は年を追うにつれどのように進化や発展を遂げてきましたか。

2016年から“OUT OF BOUNDS”という、キャンバスの四角の枠組みを超えて筆跡そのものが立体になったシリーズを作り始めたときは、ついに誰の真似でもない“本物のオリジナル”が作れたと思いました。小さい頃から絵を始めてすでに30年近く経っていました。日本に帰れなかった10年は“夢の牢獄”の様だとさっき言いましたけど、そういった不自由な中からじゃないと本当の自由は見えないと思う。日本に帰りたくても帰れなかったあの日々こそが“枠組みを超える”シリーズを作るきっかけになったから。自分にとっては“lost decade(失われた10年)”ではなく“Found decade(発見した10年)”だったんですよ。

画廊の会場では、NYのあなたの制作スタジオが再現されるとのことですが、このインスタレーションについて教えてください。会場へ訪れる人は何を目にするのでしょうか。

自分等が日々どういった姿勢で制作に向き合ってるかを体感して欲しいですね。レイくんとかアシスタント達と共に目指してるのは、俺達はまだ誰も見た事のないカッコいい表現が見たいだけっていうこと。そこには、それっぽい説明や後付けのアーティストステイトメントは全く要らなくて。ただ究極のビジュアル表現を追っているだけ。超シンプルにスタジオと家の往復のみのそんな日々の中で俺らが考えているのはそういうことで、そういったものの断片を感じ取ってくれたら嬉しいですね。

日本にはどのくらい滞在しますか?特別どこかに行く予定などありますか?

11月7日にも京都に新しく出来た+81 galleryでも個展のオープニングがあるのでそれに行ったり、実家がこの10年で恵比寿から福岡に引っ越してたので、そこにも行って、そのあと渋谷の西武で大きい壁画を描く予定です。本当は長野県にある北斎が晩年に描いた、二十畳位の大きさも天井画があるヤバイ寺とかそういうところに行きたかったけど、また次回ですね。

あなたのこれからの計画について教えてください。近い将来に作品展示やコラボレーションが行われますか?

来年、上海や台湾で個展があって日本のとある場所でも今大きい展示や色々プロジェクトがあります。ありがたいですね、本当に。制作が楽しすぎるし、忙しいので早くNYに帰らないとです。これからは“夢の牢獄”じゃなくて“パラダイス”ですけど(笑)。

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