Interviews:白の魔術師 ダニエル・アーシャムが語るクリエイションへのアプローチ方法
〈HUNTING WORLD〉のコラボやアート展のことに加え、今回は読者諸君が気になっていたであろう部分にも踏み込むことに成功



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



『HYPEBEAST』が選ぶ今年の100人、“HB100”にも2年連続で選出しているオハイオ出身の現代アーティストDaniel Arsham(ダニエル・アーシャム)は先日、冒険に必要な知識、知恵、数えきれない経験を凝縮したアメリカ発のラグジュアリーバッグブランド〈HUNTING WORLD(ハンティング・ワールド)〉とのコラボカプセルコレクション“HUNTING WORLD x Arsham Studio Standard”をリリースした。国内唯一の取扱店舗となった『Dover Street Market Ginza』では、巨大な像のオブジェが鎮座するシンボリックなスペースをArshamの世界観に染め上げ、 ローンチ当日にはそのデザインスタジオのようなDIY空間に多くのファッション/アート関係者が祝福に駆けつけた。
幸運にも、『HYPEBEAST』は多忙な毎日を過ごす白の魔術師と1on1で対面する貴重な機会を得ることに成功。決して長時間のカンバセーションではなかったが、本コラボのことから、日本で開催中のアート展、さらにはプライベートなことまで、様々な質問を投げかけてみた。
ー〈HUNTING WORLD〉とコラボレーションすることになったきっかけを教えてください。
『UNITED ARROWS & SONS』のPoggyさん(小木基史)と「NANZUKA」のギャラリーオーナーであるShinjiさん(南塚真史)が僕に〈HUNTING WORLD〉を紹介してくれたんだ。クリエイション面では、〈White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)〉のデザイナーでもある相澤(陽介)さんに助けを借りたよ。
コラボレーションの話しがまとまったら、最初にアーカイブを見せてもらえないかお願いしたんだ。そこで今回のコレクションにも登場するダッフルバッグとキャリーオールをセレクトしてね。以降は僕のデザイン哲学に沿って、ラゲージの洗練された佇まいを残しつつ、クリーンに再構築することを大切にしたよ。
ー 〈HUNTING WORLD〉のクリエイティブディレクターに就任した相澤さんとは実際にどのような会話をされましたか?
〈HUNTING WORLD〉は言わずと知れたヘリテージブランドで、僕も相澤さんも彼らに対してクラフトマンシップとクオリティーの高さという共通認識を持っていました。そこで僕は〈HUNTING WORLD〉がコンセプトに掲げる旅や冒険を再び現代社会へと持ち出したいとひらめいたんだ。職業柄、僕自身も世界を旅することが多いけれど、その中で最も重要視しているものは、機能性。『KITH(キス)』と僕のプロジェクト“Studio Standard Issue”で展開したパンツや、〈adidas(アディダス)〉との協業により生まれたFuturecraft 4Dなどと同じく、半永久的に残るものであることを今回のプロジェクトでも踏襲することができたと思っているよ。
ー 〈HUNTING WORLD〉と言えば、カバン。カバンと言えば、『Perrotin Tokyo』でもあなたのリュックサックが着想源になっていましたね。
あれは1993年とか94年ぐらいかな、僕が中学の頃に実際に愛用していた〈JanSport(ジャンスポーツ)〉のものなんだ。『MTV』やNine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)のワッペンが付いていたと思うんだけど、あそこにあるパッチの企業やアーティストは当時を象徴するものであると同時に、今でもカルチャーを語る上で欠かせない存在だよね。僕はその当時の感覚と世界観を現代に再現したかったんだ。
ー 『Perrotin Tokyo』では“Hourglass”や“Lunar Garden”と同じく、枯山水をモチーフにした作品を展示していますが、他でもない枯山水を題材にした理由はどこにあるのでしょうか。
初めて日本を訪れたのは、日本人のハーフである僕の妻と京都に3週間滞在した時だね。その時に美しい砂紋を描く完璧な枯山水を見て、恒久的なイメージと儚さを同時に感じたんだ。自分もそんな儚さを表現したいと思ったことがきっかけだね。砂紋の欠片に色を加えたのは、鑑賞者に普段の生活から外に踏み出すというきっかけや経験を伝えたかったからだよ。
ー 色を使った『Perrotin』とは一変、『NANZUKA』では白一色の立体作品が展示されていますね。
どちらのギャラリーもスペースが限られているけど、『NANZUKA』は2016年に僕が日本で初めて個展を開催した思い入れの深い場所なんだ。同時開催する際にはやはり、コンフリクトを避けなければいけない。そこで『Perrotin』では考古学、『NANZUKA』では建築をテーマに掲げ、異なる世界観を築き上げたんだ。『NANZUKA』の“Architecture Anomalie(アーキテクチャー・アノマリーズ)”はその名の通り、科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を含む構造がテーマだから、空間と作品との関係性や、視覚認識と身体感覚との関係性を楽しんでもらえたら嬉しいな。
ー ところで、世界中のホテルの部屋にこっそりとアート作品を残しているのは本当ですか? もちろん、日本のホテルにもあるんですよね?
本当だよ。今回は『Aman』に滞在していたんだけど、早速部屋に入ってアートピースを探したんだ。でも、日本様式だったから部屋には全くアートピースがなくてね(笑)。もちろん、日本のどこかにも僕の作品が存在するのは認めるよ。どことは言わないけどね。
ー そういえば、先週Poggyさんとホームセンターに行ったみたいですね。何を購入したんですか?
今、手に持っているこれは、ロープや針金などを連結するためのネジシャックルだよ。僕は『東急ハンズ』が大好きなんだ。実用性に富んだプロダクトがたくさん揃っていて、日本の商品は品質も高い。以前『スーパービバホーム』に行った時は本当にたくさんの商品を買ってしまって、持ち帰れないほどだったから新たにラゲージを購入したほどだよ(笑)。
いかがだっただろうか。インタビューとあわせて、『NANZUKA』と『Perrotin Tokyo』の2ヶ所で同時開催されている個展の様子も覗いてみては?