Interviews:ブルガリアが産んだ鬼才 キコ・コスタディノフが俯瞰で捉える現代のファッションシーン

先日即完した〈ASICS〉とのコラボモデル誕生秘話に加えて、流行りのダッドシューズへの個人的見解を聞き出すことにも成功

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遡ること2015年、Kiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)が〈STÜSSY(ステューシー)〉の35周年企画のコラボパートナーに抜擢された際、彼はまだ学生だったと記憶している。オールドスクールを貫くラグナ・ビーチ発の老舗からあの構築的なプロダクトが発表された瞬間は新鮮さ、否、目を疑うという言葉の方が似つかわしかった。『Dover Street Market』や『MACHINE-A』というトレンドセッターにもストックされたこのダブルネームが契機となって、かつて『セントラル・セント・マーチンズ』の学生だったブルガリア人デザイナーは瞬く間にスターダムを駆け上がり、昨年は〈Mackintosh(マッキントッシュ)〉の新ラインのクリエイティブを任されることとなったのだ。

直近ではどこかモードだが、特有のスポーツ的表現も踏襲した〈ASICS(アシックス)〉とのコラボレーションが記憶に新しい。『HYPEBEAST』編集部も『Dover Street Market Ginza』でのお披露目会にお邪魔させていただいたのだが、スニーカーが目の前で飛ぶように売れていく光景はしっかりと脳裏に焼きついている。無論、ローンチという記念すべき瞬間には、Kiko本人も自身が拠点とするイギリスより駆けつけていた。そこでこの機会を逃すまいと、我々は飽和しかけているファッション界に新たな息吹を吹き込む鬼才に、開示されている情報では見えてこない純粋な疑問をぶつけてみた。

ー 今回のASICSとのコラボレーションに至った経緯を簡単に説明してくれる?

最初は2016年に連絡を貰って、僕がセントラル・セント・マーチンズを卒業した後にアムステルダムでカジュアルなミーティングをしたんだ。彼らはファッションシーンにおいて何か新しいことをやりたがっていて、ASICSには色々なラインがあるけど、パフォーマンスラインにおいてファッションを絡ませたことはなかった。そして僕はそこに挑戦できたら面白いなと感じたんだ。でも前例がないことだから、プロジェクトを進めるのも暗中模索で、とても本質的な創作の過程を辿ったよ。シューズを開発して、パーツを探して、それらをどう組み合わせて、しかもランウェイに出せるものにしなければならない。まだ見ぬシーズンを見越してね。

ー どのようにして色々な選択肢をこのシューズデザインのなかに落とし込んでいったの?

数百ものシューズのデザインサンプルがある中で、僕はパフォーマンス性とかではなくて感性的な面やそのデザインが放つテイストで選んでいったんだ。どんなものを人は身につけたいと思うか、何を人々はこのシューズに求めるかって部分さ。簡単に説明するとそんな感じかな。

例えば違うスポーツメーカーとのコラボレーションだったとしたら、既に存在しているシューズを差し出されて「このモデルを更に売りたいからこのモデルをベースに何かやってくれ」っていう形になると思う。でもASICSの場合はそうじゃなくて僕の好きなようにやらせてくれたんだ。唯一僕の手に負えない部分だったのが、そのシューズにあわせた新たなソールの開発。なにしろパフォーマンスラインのシューズだからね。開発の全行程は神戸のASICSのラボで行われたんだけど、とても長い時間がかかったよ。ASICSは高いクオリティの元にオリジナルソールを1から生み出せる世界で唯一の企業だと思う。そこは彼らがこれまでもずっと拘りも持ってやって来た部分だからね。だからこそソールに関しては僕はあまり触れなかったんだ。

ー この1足をより良いシューズに仕上げるためにした何か特筆すべきことはある?

僕は膝にちょっとした怪我を抱えていて、あまり走ることができないから本格的な機能面は試せていないんだ。そういう面でももっとフィードバックしようと思って膝を治そうともしたんだけどね。僕自身が走れないってことはASICSと一緒に仕事をする上で少し切ないことだったよ。とにかく僕にとっては、これはお世辞でもなんでもなく、学生の頃から1日中立ってたり、街中やオフィスで歩き回ったりする日の相棒がASICSのシューズ。中でもランニングシューズのNIMBUSやGELテクノロジーはとても特別な存在だった。だからソールはGEL-NIMBUSのものがルーツになっているんだ。そしてアッパーにはトレイルウォーキングシューズのVENTUREをベースに、そこに半透明なラバーレイヤーを重ねてみた。これはASICSの歴史の中でも初のことだって聞いたよ。そうやってサポート力や安定性を持ちつつ、ランウェイ上でも映えるモデルが生まれたんだ。

ー いまのファッションシーンにおいては高機能という点もひとつのトレンドだけど、そういうものについて何か思うことはある?

僕はトレンドとかそういうものは全く気にしていないんだ。これまでの歴史を振り返っても常にトレンドと呼ばれるものは存在してきたと思う。1980年代にも人々はスーツにスニーカーをあわせて着たりしていたし、だから僕はいま“トレンド”と呼ばれているものをトレンドとか新しいものだとは思わないね。そういうものを考えて服を作ったこともないし、僕にとっては全然重要なものじゃないんだ。

ー いま一番のトレンドと言ってもいいダッドシューズについてはどう思う?

いままでスニーカーじゃなくてブーツを履いていたような人々がいま“ダッドシューズ”と呼ばれるタイプの靴に夢中になっているように見えるよ。自分自身を誰か他の人のように見せたいっていうトレンドだね。こんなにも爆発的に流行る前は履き心地のよいスニーカーをハイファッションに合わせるスタイルも面白かった。誰も彼もがダッドシューズを履いているわけではなかったし、人々がそれぞれのスタイルを持っていたよ。今でも本当にお洒落なひとはダッドシューズを履かないだろ(笑)? 実際、“ダッドシューズ”がどういう意味なのかも僕には分からないよ。New Balanceとかスティーブ・ジョブスみたいな感じってことなのかな? ちょっと変だよね。僕のダッド(父)はあんな感じの靴を履いてなかったしね。

ー スポーツの経験やスポーツへの熱がデザインに影響を与えたことはある?もしくは全くの別物って感じ?

もうしばらくスポーツはしてないな。週末にウェアとかギアを買いに行くみたいなこともしてないよ。だからスポーツというものが僕のデザインに影響を与えたことはないと思う。昔はサッカーをやってたこともあったから、いつかはそういうテイストを含んだアイテムをデザインするときが来るかもね。まぁとにかく現時点では特にスポーツは関係してないかな。

ー デザインにおける実用性への知識や感覚はどうやって身につけていったの?

ただこれまでに学んできたことを自分の中で広げていったような感じかな。僕はただ1960年代のフランスのワークウェアや50年前のミリタリーウェアを再現させただけのようなものは好まない。人々が今どんな格好をしているかってことの方に興味があるんだ。いまのドイツや日本のファッションシーンを見ても、現代のワークウェアを見てみても、とてもモダンで印象深いデザインだと思う。それはミリタリーウェアに関しても同じことだね。過去も集積で今のシーンがあることはもちろんだけど、それ以上に僕にとっては“今”に焦点を当てることのほうが大事なんだ。

ー Kiko Kostadinovとしてこれまでにリリースしてきたミリタリーやワークテイストについて何か教えて。

永続的なリサーチのもとに生まれたアイテムっていうことだね。僕は付け焼き刃の知識やインスピレーションを得るために短い期間で何かについてとことんリサーチする、みたいな方法は取らないんだ。僕の場合は、何かをオンライン上で見つけたり、誰かに会って直接インスピレーションを受けたり、どこかに実際に足を運んで何かを見たり、そういった経験や感覚を一旦僕の中にある金庫にしまっておいて、後で必要になったときに取り出すような感じかな。僕がいいなと思ったデザインや知識が、それから2年後に役立つことになるかもしれないってこと。何かプロジェクトを進行させているときに僕の中にある過去の記憶や知識が役立つのは素晴らしいことだよ。ただ、いま問題なのはその金庫にどれだけ空きのスペースがあるのかってことだね(笑)

ー これまで手がけてきたアイテムのなかで自分でも特に気に入ってるものはある?

特に僕の代名詞になるようなアイテムやデザインは特にないような気がするよ。僕は僕自身がこれまでにデザインしたものの中で、どれが良くてどれが悪かったか比較するみたいなことはしないんだ。何かひとつのものに対して、どうすればその他全てのものより良くなるかという考え方でいるからね。

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