Interviews: ブランドのコアを表現した2017年春夏シーズン、新たなステージへ向かうLIAM HODGES

デザインフィロソフィーから「FUJI ROCK」の感想まで

ファッション
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2017 Spring/ Summerコレクションを発表した「Liam Hodges(リアム・ホッジス)」。自身の名を冠したメンズウエアブランドのデザインを手がける彼が、7月末に来日した。『Dover Street Market』、『Machine-A』、『Addition Adelaide』、『GR8』をはじめとする高感度のセレクトショップの店頭に並ぶ彼のコレクションは、最近目にするストリートやグラフィックのトレンドを売りにしたアイテムとは一線を画したプロダクトとして注目を集めている。価格帯的にはラグジュアリーストリートといったところかもしれないが、独学でグラフィックを制作して有名人とのコネクションを伝いファッションをやってみた、という類のブランドではない。アート、イラストレーションを背景に持つ彼は、数々の芸術家やデザイナーと共にデザインを学び(時には母校で講師としてデザインを教え)、ものづくりの基礎とデザイナーとしての競争に学生時代から身を置いてきた人物だ。実力主義やキャリアの多様化が当たり前のファッション業界ではあるが、トレンドの追い風を受けてショートカットしているとは言い難い彼のブランド〈LIAM HODGES〉について、背景やデザインフィロソフィー、そして日本との繋がりについて話を聞いた。


- まず、ファッションへ進んだきっかけなどを教えて。
出身はイギリズのケント。ロンドンから少し外れた地域だよ。初めはイラストレーションとかグラフィックを勉強していたんだけど、そこから徐々にファッションも気になってきた。ウエストミンスター大学で学んでいた頃、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに通っていた友達「Alex Mattsson」の卒業コレクション制作を数週間手伝ったんだ。最高の仕事だと思ったね。だから就職先を探す代わりに、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに通って更に本格的にファッションを学ぶことにしたんだ。「James Long」や「Matthew Miller」、他にもたくさんの才能ある生徒や講師に囲まれていたからすごくインスパイアされたよ。そして卒業の頃「Fashion East」に応募する機会がもらえて、プレゼンテーションの数週間前に完成した卒業コレクションを更にリファインして発表したのが、〈LIAM HODGES〉の2014デビューコレクションだよ。

- そこから数えて今回7シーズン目だよね。最新の2017年春夏コレクションについて教えて。テーマがあったりする?
今回はテーマを持たないことがテーマなんだ。だからちょっと自分でもこわかったっていうか、プロダクト以外に肉付けするストーリーや、目を引くグラフィックをたくさん使ったコレクションじゃないからさ。キャッチーじゃないっていうか。ものづくりにフォーカスして、解体と再構築、クオリティーに目を向けたかったんだ。テーマを設けたわかりやすいコレクションじゃなくて、自分のデザインプロセスそのものと向き合って、見つめ直したかった。素材や洗い方、クオリティーコントロールに目を向けてね。

- 確かにグラフィックやモチーフは殆どないね。ネームタグと、レントゲン写真のプリントに“IM OK”って書かれたトップスくらい?あれは誰の写真?
僕の歯のレントゲン写真だよ(笑)。この“I’m OK”っていうメッセージも、「大丈夫」って自分に言い聞かせてるみたいな部分があるんだ。これまでみたいに外からのテーマやインスピレションソースに頼らず、自分自身を解剖してみたようなコアなコレクションだからね。ネームタグも、コレクション全体からインダストリアルな印象を持っていたからつけることにしたんだ。

- 今回〈Dickies〉とコラボレーションしてるの?
そうだよ。4型、各2色かな。コラージュみたいにパンツの一部をトップスに使ったり、パーツを切り離して入れ替えたりね。今回のコレクション全体にこういった立体コラージュみたいな要素を入れているんだ。〈Dickies〉も僕のデザインやアイディアに寛容で、細かくカタい縛りなくデザインさせてくれたよ。

- ロンドンにいる頃にたくさん日本人の友達もできたみたいだけど、彼ら彼女らとはどうやって知り合ったの?
どうやってだろう?覚えてないけど、学生のころからロンドンのショーディッジのバーで働いていて、そこからの繋がりもあればランダムに知り合ったりもしたよ。〈Christopher Nemeth〉のLuiとRiyoや、「Bo Ningen」のYuki、ほかにもファッションやアートの分野で現在クリエイティブな仕事をしてる友達が多いね。

- 「FUJI ROCK FESTIVAL ‘16」にも行っていたね。どうだった?「Bo Ningen」は観れた?
うん、1日だけ行ったよ。「Bo Ningen」が出てたのもあって、Yukiや友達のAzusaが誘ってくれて初めて行ったんだ。「Bo Ningen」も良かったし、こうして日本で友達に、しかも音楽フェスで会えるのはいいね。みんなこれぞ“フジロック”っていう格好の人ばっかりでびっくりしたけど(笑)レギンズ履いて、首にタオルしてハット被って……みたいな。僕はTシャツ、ショーツ、以上。っていう感じだったからさ(笑)でもよく考えたら、山の中だし、ホテルや別荘に泊まるんじゃなくてキャンプしてる人たちがいっぱいなんだもんね。

- プール付きのヴィラがすぐそばにあったりする「Coachella」みたいにはいかないよね(笑)。 話は戻って、Liamのデザインについてだけど、自分のデザインの方法にこだわりや傾向みたいなものはある?
デザインプロセスは、コラージュをつくっていくことが多いかな。たくさん絵を描いて、それを引き延ばしたりつなぎ合わせたりしながら全体像を探っていくんだ。インスピレーションは日常から得ることが多いし、前回までのコレクションみたいに、ある程度テーマになるくらいの漠然とした事象みたいなものはあるんだよね。ただ、ノートに書いておかなくて忘れちゃったり、断片的だったりするだろ? それが逆に良いなと思っていて、皆そうだと思うけど、ある日見たものを2日後に思い出すと、それはもう自分の中で一回消化された、少なからず別な物になっているんだ。アートでも音楽でも景色でも、素晴らしいものを見たり体験した時、それをそのまま自分のコレクションに反映させるデザイナーもたくさんいるけど、それが良いとか悪いとかじゃなく、僕にはそのやり方があまり合わないんだと思う。だからいつも僕のバージョンとして提示するんだ。それと、以前何かで読んだんだけど、情報が溢れる現代にはサブカルチャーはある意味もう存在しないっていう人がいた。必要な情報は大体手に入ってしまうから、一つのスタイルにこだわらず、いろいろな要素を自分なりに少しづつキュレーションして、個人のアイディンティティーを作っていく時代なのかもしれないって言っていた。それを実際感じた時、自分もコレクションごとに変化をつけていいんだと思った。毎シーズン、頭からつま先まで僕のデザインで統一してほしいわけじゃない。ある人にすごくハマるシーズンもあれば、そうじゃないコレクションもある。でもまた次のシーズンには楽しんでもらえるかもしれない。それでいいと思ってるし、逆にずーっと同じテイストのものを繰り返し作っていたら自分が飽きちゃうからね(笑)

- 2017年春夏のコレクション発表した今、これからの展望は?
特にないけど、このコレクションがある意味ターニングポイントだと思ってるんだ。色んな肉付けをリセットして、素材やアイディアそのものにフォーカスしたし、キャットウォークで魅せるためのプレイフルなデザインもしたしね。ここから、ブランドのシグネチャーみたいなものを築いていけたらなって思うよ。

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