スニーカー界の寵児 ショーン・ウォザースプーンが推す adidas Gazelle と SW コラボの軌跡 | Sole Mates
「Gazelleでコラボできて本当に嬉しいよ。歴史的なモデルだからね。しかもGucciとのコラボが出た後に、僕のモデルが出るわけだから最高の気分だ」






スニーカー界のシンデレラボーイと呼ばれても不思議ではないショーン・ウォザースプーン(Sean Wotherspoon)。それくらい彼のスターダムへの登り方は衝撃的だった。〈Nike(ナイキ)〉が、2017年の“Air Max Day”に開催したコンペプロジェクト “VOTE FORWARD”で見事1位に輝き、翌年に発売されたAir Max 1/97 “Vote Forward” SW。名作と称される数々のモデルやカラーが存在するAir Max史上において、圧倒的な存在感を放つ唯一無二の1足であり、ここからショーンの快進撃が始まる(ことは多くのスニーカーヘッズがご存じだろう)。残念ながら〈Nike〉とのパートナーシップは短命に終わり、不完全燃焼感は残ったものの、その後は〈GUESS(ゲス)〉〈ASICS SportStyle(アシックス スポーツスタイル)〉を経て、2020年から〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉と二人三脚で業界に旋風を巻き起こしている。
彼のSNSを追っている方であれば、お気づきかもしれないが、ショーン・ウォザースプーンは大の親日家だ。現在では、東京都内にも拠点を構え、少なくない頻度で来日している。『Hypebeast』編集部は、彼が日本に滞在しているタイミングで取材を打診。(ショーンには打ってつけの企画と言える)シーンのキーパーソンたちに生涯の1足を紹介してもらうシリーズ “Sole Mates(ソールメイト)”に登場してもらった。彼が何を選ぶのか興味津々だったが、チョイスしたモデルは、古くはBeastie Boys(ビースティ・ボーイズ)やJamiroquai(ジャミロクワイ)らが愛用し、カルチャーシーンで重要な役割を果たしてきた〈adidas〉の Gazelle(ガゼル)。ショーン・ウォザースプーンの考えるGazelleの魅力や既に複数モデルがリリースされているSWコラボの軌跡を中心に伺った。
Hypebeast : 今日は時間を取ってくれてありがとう。最初はベーシックな質問から。何がきっかけでスニーカーにハマったの?
間違いなくスケートボードだね。スニーカーだけでなく、アートも音楽も全てスケボーが入り口になっているよ。
昔からadidasを履いてたのですか?
そうだね、幼い頃はサッカーをやっていたので、Samba(サンバ)をよく履いてた。スケボーやる時は、NikeのDunk(ダンク)だったり、adidasもいわゆるVans(ヴァンズ)みたいなバルカナイズド製法のソールを使ったモデルを履いてたかも。
adidasで好きなスケートシューズはあった?
それはGazelleで決まり。スケートでも、サッカーでも何にでも使えるからさ。最近また好きになったんだよね。
最初にGazelleを買ったのはいつ?
多分2008年かな、18歳だった。もっと幼い頃に履いたことはあったけど、自分自身で買ったのは18歳の時で、adidasのアウトレットでゲットしたんだ。スケート用のスニーカーを探してて、スケートシューズはすぐボロボロなるから、アウトレットで安いものを買おうと。多分30か40ドルだったと思う。
何色だったか覚えてる?
確かブルー/イエローで、記憶が曖昧だけど、素材はスエードかキャンバスだったかな。レザーでは絶対なかったはず。スケボーがやりにくいから。
Gazelleにまつわる特別な思い出とかある?
僕にとってはスケシューだったから、学校をサボって、友達とスケートパークに行ってた思い出が大半かな。
既にGazelleでコラボをしているけど、次に出るモデルについて説明してもらえますか?
もちろん。新しいシューズは、ほとんどがヘンプ素材で構成されているんだ。これは初期段階のサンプルで、アイステイがヴィーガンレザーになっているけど、最終的にはヘンプに変更されるよ。アッパーに施された超クールな刺繍加工は、僕のヴィンテージコレクションからインスパイアされているんだ。1950〜1960年代のスタイルかな。あとはコルクのインソールだったり、ガムソールだったり。スリーストライプスがソール部まで透けて見えるようにしたかったんだ。ヴィンテージを着想源にしたサステナブルなマテリアルを使った1足だね。それで、こっちのカラーはフレンズ&ファミリー限定で、シューレースもヘンプなんだ。そして、これはとてもスペシャルな1足で、マッシュルームレザーのMylo™で作られている。近日中にリリース予定だけど、200足限定なんだ。1足1足がナンバリングされてて、これは200中59番目。Gazelleでコラボできて本当に嬉しいよ。歴史的なモデルだからね。しかもGucci(グッチ)とのコラボが出た後に、僕のモデルが出るわけだから最高の気分だ。
今ちょうど話題に出たけど、特に好きなGazelleはあるかな?
Gucciモデルだよ!クレイジーな1足だ。今日持ってきたものもいいけど、僕のお気に入りはピンクとブルーのモデルなんだよね。とてもソフトなベロア素材を使っていて、歴代でもベストな1足に入るんじゃないかな。でも、このモデルもイケてるよ。モノグラムもOGスタイルでかっこいいよね。ミッドソールが少し黒くなってて、やや履き込んだかのような感じがいいね。ファンシーだけどカジュアルなところがGucciモデルの魅力。
どうやってコラボするモデルを決めるの?
Gazelleは、実はadidasのアイデアなんだ。今年は何のモデルを作ろうかって話してて、最初にSuperstar(スーパースター)を作って、その後に「Sambaをやりたい」って伝えたんだけど、それは実現しなくて「GazelleはSambaに似てるし、いいんじゃないか?」と提案されて。その時にGucciコラボが出ることも教えてもらったんだ。それだったら今年はGazelleが来るだろうから、やってみるのも面白いね!って流れに。Gazelleを作れて本当にハッピーだよ。
みんな少しSambaに飽きてるのもあるしね……
その通りだね。Sambaのトレンドは1年ぐらい続いてるし、今年はGazelleの年だね。Sambaの人気もすごいけど、ADIMATIC(アディマティック)もやばいよね。日本のコラボが多い気がする。
やっぱりatmos(アトモス)がきっかけで復刻されたのもあるんじゃないかな。話は少し変わるけど、もうadidasとは3年くらい一緒に仕事しているよね。他のブランドと違う点はある?
大きな違いはないかな。あるとすれば、僕自身が成長したこと。Nikeと一緒にやっていた時は、僕は新人だったから、右も左もわからない状態だった。asicsの時は少しだけ成長してた。そして、adidasと一緒にやっている今は、以前に比べると多くのことを理解している。adidasとはやり易いと感じるけど、それは僕自身がより良いパートナーであり、より良いデザイナーになったからだと思う。ビジネス面もより理解しているから、僕らの関係性はとても良いものだよ。まとめると、ブランド間に大きな差はないけど、協業する人の質によって関係性は変わってくるんじゃないかな。
日本はどれぐらいの頻度で来てる?
理想的には年の半分は日本で過ごしたいんだけど、最近は2〜3カ月おきに来てるかな。でも年々、日本で過ごす時間は長くなっているよ。
日本のスニーカーシーンから、どのような影響を受けた?
スタイルやデザインテクニックかな。僕がスニーカーをデザインする時、真っ先に日本を思い浮かべるんだ。日本のシーンだったら、どういうデザインが受けるかとか、どういうシューズがお店で売れるかとか。僕は日本からすごい影響を受けているし、ここでたくさんの友達ができたから、最初に頭に浮かぶことは、日本の友達に「いいな!」って思ってもらえるかどうか。
さっき刺繍の話をしていたけど、スニーカーをどうやってデザインするの?
IllustratorもPhotoshopも使えなくて、描くことは得意じゃないんだ。僕はただの“ドリーマー”で、できる限り多くのものを見るようにしている。日本だろうがLAだろうが、多くのもの注意深く観察するようにしているよ。人々のアウトフィットだったり、お店の内装、空や地面の色とか。いざスニーカーをデザインする時に「あれが良かったよな」とか、記憶が引き出しになることが多い。でも配色から決めることが多いかな。グリーンやブルーが大好きなんだ。僕の今までのシューズを見てもらえるとわかるけど、全てにブルーが使われているんだ。Orketro(オーケトロ)以外。あれにはグリーンが使われているけど、ブルーが僕のフェイバリットカラーだ。あと、素材はヴィーガンでないとだめ。これはマイルール。知ってると思うけど、コーデュロイも大好きで、目を閉じても触った感触でわかる素材がいいんだよね。僕のデザインプロセスは、単純に自分の好きなものを説明する感じかな。あとは繰り返しになるけど、ヴィンテージの要素を取り入れることが多い。adidasのチームに僕の好きなものだったり、コレクションを見せて、そこからアイデアを膨らませて、新しいシューズに落とし込んだりしているね。Gazelleでいえば、僕が刺繍を見せて、adidasからマッシュルームレザーを提案されたりとか。チームワークさ。僕の仕事は夢見ることで、チームの仕事はそれを現実にすること。
君のシューズは全て異なるデザインだけど、“ショーンのスニーカー”って一目で分かるよ。共通するものがある。
ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。
adidasは、君にとって最高のパートナーだと思う。ヴィーガンレザーだったり、そういう領域で秀でているから。
僕もそう思うよ。ヴィーガン素材やサステナブルなアイデアなど、彼らはとてもオープンだからさ。adidasはマテリアルの選び方が最高なんだ。地球に優しい物作りに積極的だね。ちなみにこのGazelleをポケモンの社長さんにプレゼントしたんだ。最高だろ。
では、これが最後の質問。あなたにとって、スニーカーはなぜ重要な存在ですか?
これに関しては、いつも同じ回答をしているんだ。スニーカーが重要な理由は、“共通言語”だから。僕が話せるのは英語だけど、僕のファンは世界各国にいて、言葉の壁がある。でも、スニーカーはみんなが共通で話す言語で、どこに行ってもGazelleはGazelle、adidasはadidasでしょ。文化的背景も話す言葉も住んでいる国も関係ない。スニーカーは、僕らの間にある“壁を壊す”もの。だから最高だし、重要なんだ。僕はスニーカーは世界を救うと常に思っている。争いがあっても「待って、僕も君も同じスニーカーが好きだよね」って。