BEAMS T が海外進出第1弾として HIROTTON のアートショーを英ロンドン GOODHOOD で開催
自身のルーツであるロンドンで念願の海外初となる展示を控えたHIROTTONへの独占インタビューを敢行
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アート性の高い“グラフィック”と“Tシャツ”という永久不滅のキャンバスを軸に据え、才能溢れるブランドやアーティストを発掘/発信してきた『BEAMS T(ビームスT)』が、このたび満を持して海外進出を果たす。その記念すべき第1弾のパートナーとして、同ショップと深いリレーションシップを築いているアーティスト HIROTTON(ヒロットン)とタッグを組み、英国イースト・ロンドンを本拠地とするセレクトショップ『GOODHOOD(グッドフッド)』でアートショー “KILLER DREAM”を6月15日〜25日(現地時間)に開催する。
今回のアートショーの開催地であるロンドンは、HIROTTONがアーティストとしての活動を本格的にスタートした場所。そんな自身にとって“第二の故郷”とも言えるこの地での念願となる初エキシビジョンを控えたHIROTTONへ、『Hypebeast』が独占インタビューを敢行。本プロジェクト仕掛け人であり、彼が深い信頼を置く『BEAMS T』バイヤー 佐藤貴史氏も交え、英国でのアートショー実現に至った経緯や現地への想い、そして作品について語ってもらった。
Hypebeast:『BEAMS T』の本格的な海外進出第1弾のパートナーに、HIROTTONさんを指名した理由を教えてください。
佐藤貴史(以下、S):まずは一番初めに『BEAMS T』の認知度を海外でも高めていくことが目標としてありました。これまで我々の持つキュレーション力みたいなものを活用したイベントやポップアップをずっと原宿のショップでメインに行っていたんですが、それを今後日本国内だと地方のお店、海外だとニューヨークやロンドンなどの都市でも行っていくというプランを成長戦略の一つとして以前から計画していたんです。コロナ禍があけて、その第1回目をようやく開催できるとなった時に、ぜひHIROTTONさんに何かお願いしたいとなりました。
『BEAMS T』としては、HIROTTONさんにデザインを依頼したTシャツ2型を2020年11月にリリースし、2021年4月にトランプをテーマにしたアートショー “PLAYING CARDS”、翌年の4月にもアートショー第2弾 “EYEBEAM”を開催しています。“EYEBEAM”の時はちょうどHIROTTONさんのアーティスト活動10周年を記念した初の画集『PARADOX』(HIDDEN CHAMPION 刊)が出版されるタイミングだったこともあり、会期中にその書籍の先行販売も行いました。その後も「GREENROOM FESTIVAL’22」のコラボレーションTシャツを制作するなど、ここ数年お仕事をご一緒させていただいています。
個人的には、『PARADOX』に収録されているあとがきに感銘を受けたんです。「きっかけはロンドンに住んだことだった」という一文から始まるんですが、現地での生活を経て今こうして活躍されてることがストーリー的にも合点がいったと言いますか、これを読んでHIROTTONさんのアートショーをいつかロンドンで実現したいという想いがありました。
また、『BEAMS T』ではHIROTTONさんの作品やアパレルもかなり人気なんです。最初にうちで彼の展示を行った際には、若い世代から年配の方、さらには女性や家族連れの方々が並ばれていて、幅広い層のお客様に支持されていると実感しました。いちバイヤーとしてさらなる可能性を感じたこともあり、この企画をなんとしても実現したいなと。
HIROTTONさんとしては今回のショーが決まった時、率直にどう思われました?
HIROTTON(以下、H):まず素直に嬉しかったですね。海外での展示はずっとやりたかったことなのですが、過去に住んでいたロンドンで個展を実現できるのが感慨深いです。現地に住んでいる当時に数回だけやったことはあったのですが、今の自分のスタイルが確立してからはできていなかったので、念願が叶った感じです。しかも『BEAMS T』さんとは2年くらい一緒にお仕事をさせていただいていて、お互いにいい関係性を築けていると思っていたので、今回もオファーをいただいた時に、直感で良いプロジェクトになるだろうと感じました。
S:一番初めにHIROTTONさんデザインのTシャツをローンチして、その後活動10周年というメモリアルなタイミングでエキシビジョンを行い、今度は海外でのアートショーを開催するというのは、我々としても一つのストーリーとして繋がっていると思います。
HIROTTONさんはロンドンにどれくらいの期間住んでいらっしゃたんですか?
H:2008〜2012年までの約4年間です。その前は大阪に住んでいて、そこで一緒にスケートをしていたCHOPPERさんという方が「HEROIN SKATEBOARDS(ヘロイン スケートボード)」という当時ロンドン拠点のスケートカンパニーに所属していたプロライダーだったんです。そのような繋がりもあって、「HEROIN」のスケートチームとは近しい関係にありました。パンクやハードコアといったカルチャーをルーツにもつ彼らのスタイルに大きく影響を受け、カンパニーのボスだったフォス(*Mark “Fos” Foster)や所属のプロライダーたちは皆その当時ロンドンに住んでいたので、自分も移住することにしたんです。「HEROIN」の周辺にいた連中は絵を描いている奴らが多くて、ZINEを作って交換していたんですね。そういった環境にいるうちに、自分がもともと好きだった絵を本格的にやってみようかなと思いました。ロンドンに行ってなかったら、今のようなスタイルで絵を描いていないと思います。
現地で影響を受けた方はいますか?
H:フォスはもちろんですが、CRASS(クラス)というパンクバンドのアートワークを手掛けていたジー・バウチャー(Gee Vaucher)ですね。ジーの家に遊びに行って、彼女のアートワークを見せてもらったり、いろんな話を聞いたりしたのは自分にとって大きかったです。
現地で本格的に絵を描きはじめて、ご自身の作風がある程度確立したなと感じたのは、いつくらいのタイミングだったんでしょうか?
H:実は絵を描きはじめた当初からほとんどスタイルが変わっていなくて。もちろん、技術的な面では進歩していると思いますが、描くモチーフや細かいラインとかそんなに大きくは変化していないですね。
イギリスのカルチャーからの影響が強いと公言されてますが、アメリカのカルチャーに関してはどうなんでしょうか?最初に作品を見たときに、パスヘッドの作風に近いと思いまして。西海岸のスケートカルチャーからの影響を感じたのですが、いかがでしょう?
H:両方ですね。実はイギリスから帰国してからは、アメリカに結構行っていたんですよ。ここ数年はコロナ禍だったので行けてないんですが、それまで4〜5回は行ったのかな。現地に友人もいるし、近年はアメリカの方が自分にとっては近く感じています。
ということは日本に帰国されて以降は、ロンドンに行かれてないんですか?
H:いや、2回くらい行っています。ただコロナ禍以降は行けていないので、今回は7〜8年ぶりの渡英になりますね。
コロナ禍以降で変化したことはありますか?ご自身のスタンスや作風とか
H:どうだろう……海外にも行けず、制作に没頭してたからこそ、自分の作品をもっと外に発表したいという気持ちがより強まりましたね。コロナ禍でも少し展示を行ったりはしていたんですけど、やはりこのような状況下だとたくさん人を集めることも難しいですし、どうしてもストレスが溜まってしまいます。やっと今のタイミングで海外で大きい展示ができることになって、本当によかったです。
それでは本題に入ります。今回の展示のコンセプトについて教えていただけますか?
H:アートショーのタイトルを“KILLER DREAM”と名付けたんですけど、そもそもロンドンで大きな展覧会をやる事は、住んでいた当時から自分にとって“夢(DREAM)”の一つでした。タイトルには物理的に寝ている時にみる“夢(DREAM)”の意味も含めていて、一種の言葉遊びと言いますか。
今回展示する作品は全て新作で、夜をテーマにしたものが多いんです。キラキラした星を描いていたりとか。そんなキラキラした自分の“DREAM”の中で会いましょう、といったメッセージも作品に込めています。寝ているモチーフとか、夢の中に出てきそうなトリッピーな雰囲気の作品もありますね。キャンバスに描いた作品8点に加えて、以前『BEAMS T』でも展示したようなA4サイズくらいの紙に描いた小さめの作品を30点くらい展示する予定です。
S:側から見ていて感じたのは、HIROTTONさんの作風の“十八番”みたいなモチーフが今回の新作には散りばめられているなと。特にキャンバスの作品で言うと、このドクロはまさに“THE HIROTTON”という感じですし、動物や花のモチーフ、目が飛び出ている描写とか、彼のシグネチャースタイルが鑑賞者に伝わるような作品が揃っていると思いました。
H:その点は強く意識しましたね。海外で本格的な展示を行うのは初めてですし、会場に来てくれるお客さんも自分のことを知らない、作品を観るのも初という方が多いと思います。ですから、今回の個展に向けて自分のスタイルを一目でわかってもらえるような作品を揃えたつもりです。
作品はどのような道具を用いて描いていらっしゃるんですか?
H:キャンバス作品は全て筆を使っていて、自分もシグネチャーカラーを出させていただいている“STOKE(ストーク)”というミューラル用のインクとアクリル絵具で描いています。ドローイングは、黒いラインはポスカを、色の箇所はコピックというペンを使ってますね。
作品の制作ペースについてお聞きしたいです。毎日1点出来上がるような感じですか?
H:キャンバス作品だと1点につき3〜4日間くらいかかります。小さいものだったら作品にもよりますが、大体1日くらいで描き上げてしまいます。基本的に絵は何かしら毎日描いてますね。
毎日!常に創作している感じですね……。作品のイメージが常に頭に浮かんでる状態なんでしょうね。アイデアが煮詰まることはありますか?
H:それはもちろん、ありますよ。今回の展示用の新作に関しては、昨年末から1月にかけて集中的に描いていたんですけど、作業から離れている時でも常に作品のことが頭にありましたね。何か物を見ても、これ(作品に)使えるなと感じたり。
作品のインスピレーションはどういったことから受けますか?また、他のアーティストの作品から影響されることはあるのでしょうか。
H:先ほどお話ししたように、日常的な事柄から作品の発想が生まれる場合が多いです。他のアーティストからの影響は……今はもうほとんどないですが、もしかしたら色とか何かしらインスパイアされている部分が少しあるかもしれません。
S:作品に登場するモチーフとかはあるんじゃないですか?
H:映画のシーンや劇中に出てくる言葉とか、音楽の歌詞に影響を受けたりする事はありますね。
ちなみに、最近気になった映画や音楽ってありますか?
H:うーん……最近映画はあまり観れてなくて。音楽はグレイトフルデッドを聴き直していて、その影響は結構あると思います(笑)
今回の新作の中で、これまでとは異なる作風や新たに挑戦したモチーフもあったりするんでしょうか?
H:少し日本っぽさを意識した部分はありますね。
それは海外での展示ということで?
H:そうですね。ただ、メインとなるキャンバス作品には日本っぽいモチーフをほぼ使ってなくて、今までの自分のスタイルを全面的に打ち出したような作風で仕上げました。一方、小さいドローイングに作品には日本的な要素を少しだけ取り入れています。神社のモチーフを入れたりとか。当初は全体的に日本っぽいテイストに寄せてみようかなと考えていたんですが、あまりそちらに偏りすぎるのはちょっと違うかなと。
会場は『GOODHOOD』とのことですが、どのように作品を展示するか決まっていますか?
S:HIROTTONさんの展示の特徴として、壁面に作品をかためて掛けるという独特の展示方法があるのですが、今回も店内の白壁でその方法を再現する予定です。あとはこのアートショーのために制作したアイテムの販売もあります。今回のキャンバス作品をプリントしたTシャツ5型に加えて、バンダナ、トートバッグを用意しました。
Tシャツのプリントの再現度、凄いですね。
S:実はこのクオリティのプリントができるまでが、かなり大変なんですよ(笑)。基本的にこのサイズのキャンバスの作品ってスキャンできなくて、データに落とし込めないんです。なので作品を高画質で撮影した写真をもとに、データを版分けするという作業を版屋さんに依頼するんですけど、相当手間がかかるみたいです。そのせいなのか、キャンバス作品をTシャツに落とし込んでいるアーティストはほとんど見かけないですね。
H:やはりその作業が大変なんじゃないですか(笑)
なるほど(笑)。では今回のTシャツはかなり珍しいアイテムということですね。ところで、会期中に何かイベントを行う予定はありますか?
S:初日の夜にオープニングパーティを計画していて、現地を拠点に活動しているミュージシャンの小袋成彬さんがDJとして参加してくれます。
H:自分がロンドンに住んでいた当時一緒につるんでいたスケーターの連中がまだ現地にいるので、彼らも来てくれたら嬉しいですね。
ロンドンのイベントの後には、展示の予定はありますか?
S:ロンドンのアートショーが終わったあと、その日本版を『ビームスT 原宿』で今年8月にやります。
H:あとは日本国内でいくつか展示を予定していて、大阪、熊本、静岡でのエキシビジョン(個展もしくはグループ展)が決まっています。展示内容に関しては全て新作というわけではなく、その地域で初めてお披露目する作品も含まれていますね。ただ、もしその作品が売れてしまったら、次の展示用にまた新しく制作する必要があるんですが(笑)
今後新しく挑戦してみたいことってありますか?
H:海外での展示は続けていきたいかな。作品に関しては、平面だけじゃなく立体作品も制作してみたいですね。過去に粘土を使った作品を制作したのですが、今後はもっと大きい作品にもチャレンジしていきたいです。
HIROTTONさんのようにアーティストを目指している方に向けて、何かアドバイスをいただけますか?
H:そうですね……技術的なことに関しては後からついてくるので、それよりもまずは自分が何が好きなのか、何に興味があるのかを理解することが大切だと思います。僕の場合はロンドンに行ったことが、自分を見つめ直すきっかけになりました。現地で暮らした4年間を通して、自分は何が本当に好きで、どんな表現をしたいのかを掘り下げて、今のスタイルが確立したと思っています。これまでアーティストとして活動してきて、絵が上手いか下手かよりも自分のスタイルがあることが最も重要だと実感しています。それはスケートボードも同じですよね。
最後に、HIROTTONさんのファンやロンドンのアートショーを楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
H:ロンドンでの展示はかなり力を入れて準備してきて、今まで世に出したことのない作品をお見せできる特別な機会になります。特にキャンバス作品は時間をかけて取り組んだので、良い展示になるはずです。現地に行ける方は、ぜひ足を運んでみてください。皆さん、夢の中で会いましょう〜
BEAMS T & HIROTTON presents art show “KILLER DREAM” at the GOODHOOD Store
15th – 25th June
Adress:151 Curtain Road, Hackney, London
*Launch Party
15th June 6pm-9pm
DJ:Nariaki Obukuro