腕時計 CM の最高傑作『ザ チェイス フォー カレラ』はどのように作られた?
本作の仕掛け人〈TAG Heuer〉CMO ジョージ・シズへの独占インタビューを敢行

5分16秒ながら、圧倒的なスケールで描かれた〈タグ・ホイヤー(TAG Heuer)〉のCM『THE CHASE FOR CARRERA(ザ チェイス フォー カレラ)』。David Leitch(デヴィッド・リーチ)監修のもと、名優 Ryan Gosling(ライアン・ゴズリング)と60周年を迎えた名作時計 “タグ・ホイヤー カレラ(TAG Heuer Carrera)”が光るこのミニハリウッド超大作が誕生した。その仕掛け人のうちの1人にして〈TAG Heuer〉のチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)であるGeorge Ciz(ジョージ・シズ)に、撮影秘話を伺った。
Hypebeast:ポルシェ911(Type930)にアメリカンヴィンテージファッション。永遠性を感じる名作に、60周年を迎えたクロノグラフ “カレラ”が見事にハマっていました。あの世界観はどなたが考えられたのですか?
あの少し古いスタイルは、Ryan Goslingの希望だったんですよ。今回の撮影は、オーストラリアで2022年の12月に行いました。同時期・同場所で、Ryanがスタントマン役で撮影していたDavid Leitch監督の映画(*『ザ・フォール・ガイ』)の世界観も、同じようなスタイルだったと聞いています。つまり、このほどよいヴィンテージスタイルがRyanのいちばんのお気に入りで、彼が自然体でいられる彼好みのスタイルで『THE CHASE FOR CARRERA』にも出演いただいたというわけです。
空冷ポルシェの“赤”という色も最高でした。
オーストラリアは(日本と同じ)左側走行なので、ヨーロッパの左ハンドルのクルマを見つけるのが大変でしたけど、運よく赤い911が見つかりました。時計は青をメインにしたかったので、車両はコントラストをつけるべく、赤が良かったんです。おかげで視覚的にも力強くなりました。そして、空冷エンジン時代のポルシェ911だと、そのシンプルな設計から、伝統的なデザインコードを引き継いだカレラにもきっとマッチすると考えたんです。
映画『ブレット・トレイン』でも鬼才を発揮したDavid Leitch。この映像にどれぐらい関わっているんでしょうか?
David Leitchはエグゼクティブプロデューサーでした。彼は大作映画の製作途中でしたので、すべてはできないと。ゆえに、彼は親友であるNash Edgerton(ナッシュ・エドガートン)を監督に指名しました。Leitchのインプットのもと、Nashが陣頭指揮を執ってくれました。たまにLeitchはカメラの前でチェックしていましたよ。
撮影日数は?
構想から撮影までに6カ月。編集作業に8カ月。でも、実際の撮影は、4日間で行わなければなりませんでした。しかも、Ryanの稼働はたったの1日。限られた時間で、この“裏切り”に“裏切り”を重ねるストーリーを撮り終えるのは非常に難しいことでしたが、Leitch & Nashのノウハウ、そして素晴らしいキャストでクリアできたのです。
時計時計時計というCMではなく、さりげなく時計(カレラ)を出すことでむしろ時計(カレラ)が生き生きしているように思えました。
時計は“主役”であるべきなんですけれども、商業的な印象を与えないことが重要だったんです。もちろん、この動画は時計(カレラ)がなければ存在価値がないわけです。本来CMは、時計が常に中心で映っているものではであるべきだと思うんですけれども、もっと軽やかなタッチのCMを、映画の世界観でやりたかった。でも、こういう、随所にちらりちらり時計が出てくるさりげなさが、TAG Heuerの精神に合っていると思うんです。というのも、TAG Heuerというブランドは、謙虚でフレンドリーな一面もありますから。そして、この新作腕時計 カレラは、心を弾ませるタイムピースだと思うので、まさにぴったりな映像となりました。
それでいて、クロノグラフの機能もわかる、機転の利いた最高の演出でした!
そうですね。非常に巧妙な方法で腕時計の機能をこの動画に含めています。作中に登場する「針がもう一周まわるまでさ。ほんの60秒だけ」の言葉は、クロノグラフの仕組みをそれとなく伝えていますし、60秒だったのは、60周年を迎えるカレラ、という隠れた意味も担ってるんですよ(笑)。
George Ciz(ジョージ・シズ)
スロバキア生まれ。18歳の時にアメリカに移住。大学でMBAを取得後、国際的な広告エージェンシー、DDBワールドワイドに入社。おもに、テニスツアーであるATPツアーを担当。16年間勤務した後、現職。
Information
LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー
TEL:03-5635-7054
www.tagheuer.com