adidas と Thom Browne がスリーストライプスの商標権紛争により出廷
〈adidas〉は〈Thom Browne〉に10億円超えの損害賠償を請求
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2021年6月、トレードマークであるスリーストライプスの商標を巡って、米ニューヨークを拠点とするデザイナーブランド〈Thom Browne(トム ブラウン)〉を提訴した〈adidas(アディダス)〉。1月3日(現地時間)、両当事者がニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に出廷したことにより、この商標権紛争が新たな段階へと進み出したようだ。
2001年のブランド発足当初からトリコロールカラー(レッド/ホワイト/ブルー)のストライプをあしらった商品を発表している〈Thom Browne〉。一方の〈adidas〉は、当然〈Thom Browne〉が設立される以前からスリーストライプスを自社製品に使用しているわけだが、第三者が見て両社のストライプを混同することはないだろう。しかし〈adidas〉は2018年に〈Thom Browne〉がトリコロールカラーのストライプを「EUIPO(European Union Intellectual Property Office:欧州連合知的財産庁)」に商標出願した際に抗議したことに始まり、2020年末にはアメリカの特許商標庁に対して同ブランドがフットウェアなどに使用しているストライプに関する商業出願停止を要請。この件は調停期間を経たものの、両ブランド間で解決にはいたらず裁判へと発展した。
今回の訴訟に関して〈adidas〉側は、〈Thom Browne〉が自社のスリーストライプスが著名性を認知していながら、フォーマルウェアだけでなく、同マークに酷似した2〜4本の平行線をあしらったアスレチックスタイルのアパレルおよびフットウェアを販売していると主張。さらにそのことによって消費者を困惑させ、〈adidas〉ブランドの価値や信用が大きく侵害されていると訴えた。
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「Kilpatrick Townsend & Stockton(キルパトリック・タウンゼント & ストックトン)」の弁護士 R. Charles Henn Jr.によると、〈adidas〉は〈Thom Browne〉がスポーツウェアカテゴリーにより多くの注目を集めるため、故意的にスリーストライプスに酷似したマークをデザインに取り入れたと考えているとのこと。さらに、〈adidas〉はスリーストライプスを1952年以来使用し続けていると述べ、同社が広告に年間約3億ドルを費やし、このトレードマークを使用した製品の売上高は31億ドルにおよぶことも明らかにしている。これにより、〈adidas〉は〈Thom Browne〉に対し、ライセンス料として86万7,225ドル(約1億1,500万円)の損害賠償と、2~4本の平行線をあしらった製品で700万ドル(約9億3,000万円)の利益を得たと主張し、同額の支払いを追加で請求。
さらにR. Charles Henn Jr.は、〈adidas〉アンバサダーのLionel Messi(リオネル・メッシ)が2018年当時所属していたFCバルセロナと〈Thom Browne〉によるパートナーシップや、〈adidas〉が長い間関係を築いてきたNBAのクリーブランド・キャバリアーズ所属選手たちへのオーダーメイドスーツを同ブランドが製作したことに関しても言及。ストライプを使用した高級ブランドのテーラードスーツが消費者を混乱を招いたとしている。加えて〈adidas〉は、両ブランドが異なる市場に存在していることは認めつつ、2007年に〈Thom Browne〉の3本のストライプ模様に気付いた際には、すぐさま4本へと差し替えられたと主張。R. Charles Henn Jr.は、この変更を踏まえても、2,400人の消費者の26.9%が〈Thom Browne〉のストライプのアイテムを〈adidas〉のデザインと誤解しているとの調査結果も明かしている。
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〈Thom Browne〉側の弁護士であるRobert T. Maldonadoは、〈adidas〉からの長期に渡る訴訟を避けるため、同ブランドが和解のためにストライプを4本に変更し、そのマークをあしらったアイテムをランウェイショーに登場させた2008年から2018年の間、アプローチがなかったことから、過度に長いロスタイムは単に不公平であると主張。さらに、〈Thom Browne〉は、ストライプの使用によって消費者が誤解したとは考えておらず、〈adidas〉が損害を受けたとは考えていないとコメント。同ブランドは、10年以上に渡ってカジュアルアパレルを製造しており、2009年に初めてスウェットパンツを誕生させた際も、〈adidas〉ではなく代表チームのユニフォームスタイルに着想を得たと述べた。加えて、Robert T. Maldonadoは、2つのブランドが2つの別々のカテゴリーに存在するという事実を指摘。「Thom Browneはadidasと競合しません。Thom Browneは高級ブランドであり、adidasはスポーツブランドです」と付け加えている。なお、Robert T. Maldonadoは、〈Thom Browne〉が4本のストライプの使用を止めた場合、2023年の第3四半期に約7,300万ドル(約96億8,000万円)に相当する損害が出るとも予測している。