Nike ランニング部門50年の歴史を彩る名作シューズを振り返る

この部門が今日までの“Swoosh”の進化をどのように形作ってきたかを検証する

フットウエア 
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創業以来〈Nike(ナイキ)〉の屋台骨を支えてきたのは何と言ってもランニング部門であろう。シューズのソール内部に“AIR”を入れ、人間の可能性を押し広げることでフットウェアの世界を変貌させてきた。

今日のスポーツウェア業界の世界的リーダーとなった〈Nike〉は、アスレチックシューズの限界を超えようとする2人の男の願望から始まった。1964年、Bill Bowerman(ビル・バウワーマン)とPhil Knight(フィル・ナイト)は、アメリカ・オレゴン州ユージンで「BRS(Blue Ribbon Sports、ブルー・リボン・スポーツ)」を立ち上げた。コーチとアスリートというコンビは、もともと〈Onitsuka Tiger(オニツカ・タイガー)〉のスニーカーを販売するために「BRS」を始めたが、1971年に同ブランドとの提携を解消。ここから〈Nike〉ブランドの歴史がスタートしたのである。

セールスから製品開発へと移行させるためには献身的な努力と創意工夫、そして実験が必要だった。もともと陸上競技のコーチであるBillはランニングをより快適にするためのアイデアを思いついたら、すぐにそれを実行に移し、彼の周りにいるアスリートたちにそのプロトタイプを試してもらうことを繰り返した。例え使用中にシューズが完全に壊れてしまっても、なぜそうなったのかのフィードバックと洞察を深め、彼なりのイノベーションを前進させていったのだ。

Nike “Moon Shoe” 1972

ナイキ・ランニング50周年を祝い歴史に名を残した名作シューズを振り返る Nike Running 50 Year History Archive Air Max 1 Tailwind Pegasus Moon Shoe Free Run 5.0 V1 Flyknit Racer Zoom Alphafly NEXT% Blue Ribbon Sports Bill Bowerman Phil Knight World Athletics Championships

〈Nike〉のランニングシューズの歴史は、象徴的な“ワッフル”デザインのソールから始まった。ある朝、Billの妻がワッフルを作り、朝食の支度をしているときに思いついた理論がきっかけとなり、のちにヒット商品となる。当時〈Nike〉のワッフルソールのスニーカーは親しみを込めて“ムーンシューズ”と呼ばれた。Billが考案したこの愛称は、宇宙飛行士が月に残した足跡を連想させることにちなんでいる。1972年に開催されたオリンピックのトライアルマラソンでデビューしたこのシューズは、〈Nike〉の50年にわたる革新的製品の幕開けとなった。この“Just do it(とにかくやってみよう)”という考え方が、イノベーションの最初のポイントを生み「フットウェアの世界を変える」という欲望の炎を燃やしたのだ。

Nike Air Tailwind 1979

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もうひとつのマイルストーンとなるシューズは、〈Nike〉の最も象徴的で特徴的なテクノロジーのひとつである“AIR”の導入だった。この画期的な開発は、Marion Franklin Rudy(マリオン・フランク・ルディ)の革新的なコンセプトである“AIR”を初めて搭載したTailwind(テイルウィンド)まで遡ることができる。NASAで技術開発を行なっていたMarionはポリエチレンプラスチックに不活性ガスを封入しカプセル化した”Air”システムを1978年に完成させる。同年のホノルルマラソンでAir Tailwindデビューさせ、今日の“Nike AIR”シリーズの原点となった。

Nike Pegasus 1983

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〈Nike〉のアクティブランニングモデルの中で最もよく知られているのが、1983年に発売された“ベガサス(Pegasus)”であろう。ソールユニットにウェッジデザインを採用し、この画期的な技術 “AIR”をさまざまな型やサイズに対応させた最初の製品で、ユーザーを広げるために多用途性と手頃な価格のバランスを追求した。

Nike Air Max 1 1987

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1987年に登場した象徴的なAir Max(エアマックス)1は、“AIR”ユニットを可視化した最初のシューズとなり、テクノロジーの転機となった。しかし、当初この決断は〈Nike〉ランニング部門のマーケティング責任者を大いに悩ませた。側面に穴のあいたシューズをどうやって売るというのか理解できなかったという。しかし当時のデザイナー、Tinker Hatfield(ティンカー・ハットフィールド)の才能はこの成功によって証明され、その後数十年にわたる優れたデザインの先駆けとなっている。現在ではこのシューズをコレクター視点で見ることは簡単だが、ランニングシューズとしての本来の目的に注目すると、今日のアスレチック・フットウェアに〈Nike〉が果たしてきた存在意義がわかるというものだ。

Nike Free 5.0 V1 2004

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2000年代に入り、〈Nike〉のデザイナーはゴルフコースを裸足で走るスタンフォード大学のアスリートに対応するため、“Free(フリー)”を開発した。この頃から〈Nike〉は従来型のカテゴリー分けをやめ、裸足に近い履き心地を“0”、一般的向けのランニングシューズを“10”と数値化することで靴のスペックを表すようになっていった。その中で2004年に開発されたのが、こちらの〈Nike〉Free 5.0 V1だ。レスポンスの良いクッショニングと自然なフォルムが特徴で、ナイキが考える“裸足で走ること”と“通常のランニングシューズを履いて走る”ことの間の完璧なバランスを実現し、アスリートに対するコミットメントを象徴する製品となった。

Nike Flyknit Racer 2012

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2012年にはFlyknit Racer(フライニット・レーサー)が登場した。マラソン用にデザインされたこのモデルは、軽量でフィット感を重視したアッパーを導入している。ランナーとスニーカーヘッズを繋いだこのモデルはその後バスケットボール、フットボール、ライフスタイルモデルなどにもこのテクノロジーが広がり、10年の時を経てFlyknit Racerのインパクトが実感されているといえよう。

Nike Air Zoom Alphafly NEXT% 2019

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〈Nike〉ランニング部門のイノベーション精神は、Air Zoom Alphafly NEXT%(エアズーム・アルファフライ・ネクスト)へと受け継がれていく。2019年、ケニア人ランナーの Eliud Kipchoge(エリウド・キプチョゲ)がこのシューズを着用して非公式レースでマラソン2時間切りを記録、たちまちそのテクノロジーと性能に何百万人もの目が向けられることになる。その結果、ルール変更により“レースの4カ月前からシューズの市販する”ことが義務づけられるなど、多くの議論を呼んだことは記憶に新しい。その性能の鍵を握るのが“technological doping(テクノロジー・ドーピング)”と評された“ZoomX(ズームエックス)”フォームのソールユニットであろう。航空宇宙分野で伝統的に使用されてきた素材に由来する“ZoomX”は、より大きなエネルギーリターンを実現することでスピードを最大化することでこれまで成し得なかった革新を推し進めることに成功した。

〈Nike〉の未来へのフォーカスは多岐にわたるが、ランニング部門は常にブランドの中核をなすものとなる。革新的な新技術の導入であれ、ユニークなシルエットの実験であれ、イノベーションは常に〈Nike〉を前進させる原動力となっている。その結果の表れとして、2022年世界陸上競技選手権大会に参加した選手のうち、表彰台の58%の選手が〈Nike〉のフットウェアを履いていたことで実証されたと言えるだろう。

現代のユーザーにとって、〈Nike〉ランニング部門のDNAはかつてほど認知されていないかもしれないが、このスウッシュのシューズは、あらゆるレベルのアスリートへのサービスを視野に入れながら進化している。その使命は50年前と同じように大切なことであり続けるに違いない。

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