Nike が MSCHF に Lil Nas X とのコラボモデル Air Max 97 “Satan Shoes” の販売差し止めを要求
666足中の665足が既に出荷済みで、泥沼化の様相を見せる気配……

先日発表されて以来問題となっているアメリカ・ブルックリンのクリエティブエージェンシー「MSCHF(ミスチーフ)」とアトランタ出身のラッパー Lil Nas X(リル ナズ X)とのチームアップによる〈Nike(ナイキ)〉Air Max 97 “Satan Shoes”。本スニーカーは〈Nike〉の承認・許可を得ずに独自にカスタムした非公式モデルであり、本物の人間の血入りエアユニットが搭載されていることに加え、1,018ドル(約11万1,800円)という強気の価格設定であったにもかかわらず、3月29日(現地時間)の発売後に限定666足のうち665足が即ソールドアウトとなった(ラスト1足については後述)。この事態を受けて〈Nike〉が「MSCHF」に対し商標権侵害や不正競争行為などで訴えていることが報じられたが、本稿ではその後の進捗を報告する。
発売当日の3月29日(現地時間)、Lil Nas Xは“Satan Shoes”について巻き起こった論争について、“Lil Nas X Apologizes for Satan Shoe”と称された風刺的な謝罪動画を公開(現在閲覧不可)。映像の冒頭では同モデルを手に持ち、謝罪の言葉を述べるかのように思わせたLil Nas Xだったが、途中から彼の新曲 “MONTERO”のMVの一部が挿入されており、全く反省するつもりがない様子がうかがえる。“Satan Shoes”の発売より少し前に公開されたこのMVは、天国からポールを滑り降りてきたLil Nas Xが悪魔にラップやダンスを披露するという内容で、同スニーカーのコンセプトと共にその内容が物議を醸していた。
最初の訴訟が提起されてから3日後の4月1日(同時間)、米国地方裁判所のEric Komitee(エリック・コミティー)裁判官は、“Satan Shoes”がさまざまな悪魔的なディテールからその名が付けられており、〈Nike〉の商標を侵害しているという同社の訴えに同意。〈Nike〉が「MSCHF」に対して665足の注文に応じることを禁止する一時的な差し止め命令の許可を与えた。この結果は、訴訟の被告ではないLil Nas Xにも当然影響することに。彼はその時点で自身の『Twitter』にて“Satan Shoes”の最後の1足の購入希望者を募っていたが、先の裁判の結果によって販売できなくなった旨を4月2日(同時間)に報告している。
sorry guys i’m legally not allowed to give the 666th pair away anymore because of the crying nerds on the internet https://t.co/URoj0kGnRq
— nope 🏹 (@LilNasX) April 1, 2021
i haven’t been upset until today, i feel like it’s fucked up they have so much power they can get shoes cancelled. freedom of expression gone out the window. but that’s gonna change soon.
— nope 🏹 (@LilNasX) April 1, 2021
そして4月1日(同時間)、〈Nike〉は『CBS NEWS』に以下のような声明を発表。「NikeはMSCHFに対し、“Satan Shoes”の件で商標権侵害および希釈化の訴えを提起しました。係争中の法的問題について、これ以上の詳細をお知らせすることはできません。しかし、私たちはLil Nas XやMSCHFとは関係がないことをお伝えします。“Satan Shoes”はNikeの承認や認可なしに製作されたものであり、私たちはこのプロジェクトとは一切関係ありません」。これに対し「MSCHF」も公式声明を発表し、その中で以下のようにコメント。「私たちはNikeがとった行動に正直に驚いています。Nike側の弁護士が私たちに通知を送った直後に連絡を取りましたが、彼らからの返答はありませんでした。1年以上前に、私たちはAM97 “Jesus Shoes”をリリースしています。“Jesus Shoes”は有名人のコラボレーション文化やブランド崇拝を宗教と融合させたアート作品であり、限定版のアートオブジェの1足として発表しました。先週リリースされたLil Nas Xとの“Satan Shoes”も同様です。……異端は教義との関係においてのみ存在します。Nikeが一方を検閲し、他方を検閲しないのは何故でしょう?」
Here's the #MSCHF and INRI customized #Nike Air Max 97s based on the miracle of Jesus walking on water. The pair has been filled with water from the River Jordan and then blessed, meaning wearers are able to theoretically walk on Holy Water: https://t.co/7e3PrAGQxN
Photo: … pic.twitter.com/p07RFs8r2N— HYPEBEAST (@HYPEBEAST) October 11, 2019
先の法廷において「MSCHF」側の弁護士は同様の議論を行い、“Satan Shoes”は単なるスニーカーではなくアートであるため、同スニーカーを購入した人は〈Nike〉が関係しているとは思わないだろうと説明。また、ほとんどのスニーカーは販売停止の要請を受ける前にすでに購入者に出荷されていることも報告した。一方、〈Nike〉側の弁護士は「そうではない」と主張。ミュージシャン/女優のMiley Cyrus(マイリー・サイラス)が“Satan Shoes”を履いている『Instagram』の投稿を、同スニーカーが従来の〈Nike〉のスニーカーと同じように扱われている例として挙げ、侵害の主張を裏付ける証拠として示した。さらに、過去数日間で665足の“Satan Shoes”がすべて出荷・配送されたことに“大きな疑問”を呈し、仮に「MSCHF」がこのことを達成できたとしても、すでに“回復不能な損害”が生じていると主張した。
現在も〈Nike〉と「MSCHF」の訴訟は継続中のため、今後も進捗があり次第お伝えしたい。