噂の新スポット “スナック野郎 POGGY” に潜入

小木“Poggy”基史のプロデュースするスナックとは?

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「Poggyさんが最近スナック始めたって知ってる?」「しかも本物のデコトラが中にあるらしいよ」「噂には聞いたけどほんとかな」

LDH kitchen」と世界的ファッションキュレーター 小木“Poggy”基史のプロデュースするスナックが都内某所に誕生したという噂は本当だ。“デコトラ”をテーマに作られたこのスナックは、1970年代を代表する名作映画『トラック野郎』にオマージュを捧げた、その名も『スナック野郎 POGGY』。

“デコトラ”とは“デコレーショントラック”の略称で、電飾、ペイント塗装、ステンレスパーツなどを用いてド派手に飾り付けたトラックを指す。先述の『トラック野郎』はデコトラを乗り回す長距離トラックの運転手を主人公とした作品。全10作が公開され、当時のデコトラブームを牽引した。先述の通り『スナック野郎 POGGY』は、海外からも注目される日本独自の文化“デコトラ”をコンセプトに掲げている。

“呑んで 唄って スタミナつけて”のラグマットが敷かれたスナックの入口。入ってすぐのバーカウンター横には「どうやって入れたのかな?」と誰しもが不思議に思うであろう実物のデコトラがドーンと鎮座している。実際に中に入って運転席にも座れるこのデコトラ。真ん中に置かれた田名網敬一のBE@RBRICK(ベアブリック)が見事に内装にマッチしている。その奥にはVIPルームが設けられ、ここでもPoggy氏と2台のデコトラを被写体としたインパクト大な写真パネルに歓迎される。室内には古き良き昭和感満点のアーケードゲームやカラオケ設備(現在は利用不可)があり、昭和を体験していない世代も不思議とノスタルジックな気分に浸れるだろう。バーカウンターの棚は、ボトルキープされたお酒の瓶が多数並び、Poggy氏の原点ともいえる“LIQUOR”、“WOMAN”、“TEARS”によって照らされている。あの〈AMBUSH®(アンブッシュ®)〉が制作したというドッグタグ型のボトルネックも見逃せない。カウンターの向かいには古着や小物を販売するスーベニアコーナーが設置され、独特の着眼点からキュレーションされたユニークな品々に目も心も奪われる。

『HYPEBEAST』では、この噂の新スポットに潜入し、自らも頻繁にお客さんを出迎えているPoggy氏を直撃。『スナック野郎 POGGY』をオープンさせた背景やこの場所に込められた想いなどを伺った。

小木“Poggy”基史 LDH kitchen 噂の新スポット “スナック野郎 POGGY” に潜入

まずはスナックをオープンされた経緯を教えてください。

LDHさんがここの場所を元々契約していて、VERBAL(バーバル)さんがHIROさんにスナックをこういうところでやったら面白いんじゃないかとお話されて。1年ぐらい前ですかね、突然おふたりから夜に電話があって「Poggyさん、スナックやってみませんか?」と言われて。自分は二つ返事で「はい是非やらせてください」みたいな流れでした(笑)。前からVERBALさんが鶯谷の場末の面白いところに連れっていってくれたり、逆に僕がアングラな面白い場所をご紹介したり、2人ともそういうところが結構好きで(笑)。あとは海外の人が来たときとかも、変わったスポットが好きな人も多いんですよね。東京の夜は面白いところがたくさんあって『BLOODY ANGLE(ブラッディ アングル)』『BEEF KITCHEN(ビーフキッチン)』『CHICKEN KITCHEN(チキンキッチン)』『麺散(めんちらし)』、あとは最近オープンした『不眠遊戯ライオン』とか、食だけでなく、音楽とかファッションとかカルチャーをミックスしているところが多くて。そういうところに海外の友人とかを連れて行くことも多くて、行き来しながら皆に楽しんでもらえたらと思っていました。本当は今年の桜の咲く季節にオープンする予定だったのですが、コロナの影響もあって遅くなっちゃったんですよね。

コンセプト作りから携わったのですか?

はい、僕が考えさせてもらいました。だいぶ前に『THE PARK・ING GINZA』でPOGGY’S BOXをやらせてもらった時に、スタイリスト宇佐美君のアイデアで小さいデコトラを入れてポップアップを開催したんです。その時はデコトラって面白いよねぐらいだったのですが、それがきっかけで色々調べていくうちに段々ハマっていって。デコトラって他人と同じトラックに乗りたくないからって、何千万もかけてカスタムしていて。自分も他人と同じ格好をしたくないから、馬鹿みたいにお金をつぎ込んで、ファッションに費やしてきたところともリンクしてきたり。あとは『トラック野郎』の映画もめちゃくちゃ面白くて。自粛期間もずっと見てたんですよ。あと、デコトラって実は運転中もスナック的なところにいる気分になりたいっていう発想から、内装を変えたりしていたというのもあるみたいなんですよ。なので、このVIPルームのソファもデコトラの内装で使われているのもだったり。

そこまで遡るんですよね。『THE PARK・ING GINZA』だと結構前ですよね?

多分4年前とかだったかな。

これまでにアパレルショップは多くプロデュースされてますが、飲食に挑戦する上で難しかった点を教えてください。

自分たちはファッションウィークなどでビッグメゾンの主催するディナーなどに参加させてもらう機会もありますが、逆にその反動で昔ながらの場末の場所が面白かったりするんですよ。でもその感覚って飲食の方には理解しにくい部分のようで、ファッションから見た「ここまではOKだけど、ここまではやり過ぎ」という着地点を説明するのが、最初の頃は難しかったりしました。

内装もこだわり具合が徹底されてますね。

土谷豊くんっていう、結構いろんなブランドの内装を手掛けている方がいて。僕が20年前ぐらいに初めてニューヨークに行った時に先輩を通じて出会って。それから会ってない期間も結構会ったのですが、久しぶりに会って『THE PARK・ING GINZA』の時の内装も手伝ってくれて。普通はこんな中古のトラックを入れるとかやってくれないと思いますが、彼がいたから実現したっていうのものあります。

AMBUSH®がボトルネックやマドラーを手がけていますが、これはやはりVERBALさんですか?

そうですね。VERBALさんの案で始まったところもあったので。いろいろ練っていく中で「マドラーをAMBUSH®に作ってもらえたら面白いですよね」となり、VERBALさんからYOON(ユン)さんに聞いていただいて。ちょうどその時のAMBUSH®のコレクションがヤンキー文化をテーマにしていたんですよ。

小木“Poggy”基史 LDH kitchen 噂の新スポット “スナック野郎 POGGY” に潜入

AMBUSH®製のボトルネック & マドラー

(VIPルーム内に設置されている)このゲーム機もPoggyさんのアイデアですか?

本当はここはカラオケルームなのですが、こういう状況なので、代わりにゲームを入れて楽しめるようにと皆で考えました。

設定的には、僕より10歳ぐらい上の人がここをオープンさせた設定にしているんですよ。小学校高学年ぐらいの時にお父さんと一緒に観た『トラック野郎』に衝撃を受けて、大人になってサラリーマンをやるんですけど、1999年ぐらいに脱サラして自分でトラックを買ってカスタムして、それを眺めながらお酒を飲める場所を作ったっていう設定にしています(笑)。

そんなに細かい設定があるとは(笑)。店内に置かれたデコトラのインパクトが凄すぎます。

最初は1から作ろうと思ったんですけど、トラックって結構高いんですよ。なので、ある程度の値段でかっこいい感じのものを中古で探して、ちょうどこれが見つかったんですね。店内にデコトラを撮ってる方の写真も飾りたかったのですが、実際に自分が知ってる人と一緒に改めて撮ったほうが良いな、と考え方が途中で変わって、RKくんにお願いしたんです。自粛期間前、トラックを店内に入れる前に、彼の案で歌舞伎町の入口と栃木のコンビニの駐車場で撮影しました。Sex Pistols(セックス・ピストルズ)のバスが2台並んでいる写真をイメージして、1台は合成で仕上げてくれました。ちなみに、星桃次郎さんやブルースリーとかの人形は、Yuri Hasegawaさんに作ってもらった一点物なんです。

あのデコトラはどうやって搬入したのですか?

VIPルームにあった窓から、分解したデコトラをクレーンで搬入したんです。ここに来た皆さんから聞かれます(笑)。

料理のメニューはどのようにして決めたのですか?

自分とLDH kitchenさんでディスカッションしながら決めました。基本的には『トラック野郎』をイメージして、スタミナが付けられるものだったり、自分の地元のものだったり。カクテルも『トラック野郎』が旅しているイメージで、サービスエリアとかパーキングエリアとかの名前を付けたりしました。あと、価格設定は高過ぎないようにしています。僕も昔は販売員をやっていましたが、40歳ぐらいになるまで本当にお金なくて。洋服を買い過ぎていたし、海外の人が来た時にも、会社の経費が下りない時は自腹で払ってたんですよ。ファッションの人たちがコンビニの前でワン缶する理由も知っているので、そういう人たちでも気軽に来れるような価格設定を心がけました。 

スーベニアコーナーの古着について教えてください。

大阪に『十四才』っていう古着屋さんがあって、ああいう懐かしい感じの古着を扱っているんですが、そちらにお願いして置かせてもらっています。以前に『UNITED ARROWS & SONS(ユナイテッドアローズ アンド サンズ)』で『十四才』と渋谷にある古着屋『BOY(ボーイ)』の”転校生”というポップアップをやらせてもらって、その時から『十四才』が好きで。今はLINEで「こういう感じのないですか?」って聞いて、あちらから画像が送られてきて「それをお願いします」みたいなやり取りをしています。

小木“Poggy”基史 LDH kitchen 噂の新スポット “スナック野郎 POGGY” に潜入

十四才のキュレーションによる古着コーナー

今後はオリジナルグッズの計画があったりしますか?

今のところは考えてないですね。まずは来ていただいた皆さんに楽しんでもらうことにフォーカスしています。

(VIPルームの)壁にはたくさんのサインがありますが、今までどのような方が来られましたか?

普段は出会えないような人にも会えたりもします。先日『ドラゴンクエスト』を作られた堀井雄二さんが来てくれて。そういう楽しさもありますね。(壁のサインを目で追いながら)ん〜、名前はここでは言えないような方々もいらっしゃってくださってます。『NANZUKA』さんのお鮨屋さん『3110NZ by LDH Kitchen』も同時期にオープンするっていう話が前からあったので、お鮨屋さんの後にここへ流れるみたいな道筋があってもいいよねって話したりしてました。

カッコつけすぎない感じにしているのもあって、ここに来てくれた方達は「スイッチがオフにできる」って言ってくれる人が多くて。

それ本当に思います!※何を隠そう筆者は取材前から度々足を運んでいた

自分も高級レストランや変わった面白い場所などにも行かせてもらっていますが、結局はファッションとカルチャーと色々リンクしているところが好きで、そういうことを自分でもやってみたかったんですよね。ただ僕は飲食のプロじゃないので、そういう人たちが来た時にスイッチオフできる場所を心がけました。こういうご時世なので、みんな疲れてる時に、夜まで気合入れていきたくない人もいるかなと。

Poggyさんは様々なプロジェクトを手がけてらっしゃいますが、全てをきっちりとこなすのは骨が折れそうですね。

実は自分は誰もが知っている世界的ブランドのメンズのディレクションをする予定だったんですよ。本当だったら今年の5月に発表予定だったんですけど。そのブランドは生産のほとんどがイタリアだったのですが、このような状況になり、生産できない!みたいになってしまい……結局新しいプロジェクトどうこうではなくなり、その話は保留になってしまったんです。サンプルも作って、自分のラインを作って、世界的なアーティストとコラボして、日本でもイベントやって、とかなり仕込んでいたんですが、全部流れてしまいました。今回、僕がいきなりスナックをやるとなると「Poggyはファッションから方向転換するのか」って思う人もいると思いますが、自分の中ではファッションのトップブランドでも仕事をして、対象的なスナックもやってみたいな計画があったんですよ。でも、今になって考えると、あのままガッツリ全部をやっていたら、どれも中途半端になってうまくいかなかっただろうなって。逆によかったと思います。今は経済的に大きな影響を受けている国やブランドの復活を願いつつ『2G』も含めて、ひとつひとつを丁寧にやれているので。ファッションが色々な意味で行き過ぎてしまった部分もあったと思うんですよね。

自分はこれからもファッションをやっていくつもりですが、アートなどファッション以外のことから影響を受けることも多くなってきました。今まではファッションウィークで色々なショーを見させてもらってましたが、デザイナーたちが半年間それだけのために全力を注いで、しかも大きなブランドであれば何億ってお金を15分のショーのために使ってやるだけあって、そこで感じるものものってやっぱりすごくありましたし。今はそういうのがない中で、自分自身を見つめ直すというか、自分が何で形成されているかを今いちど見つめ直して、本当の自分を発信していくしかないなと。他人からのトレンドではなく、自分の中にもあるものを打ち出していくというか。

その一部が今回具現化された感じですね。

そうですね。「Poggyちょっとおかしくなったんじゃないか」って思う人もいるかもしれないけど(笑)、自分の中ではちゃんと筋が通っているんです。僕はラグジュアリーもアンダーグラウンドなカルチャーも両方好きなので、これからも並行して頑張っていこうと思っています。

小木“Poggy”基史 LDH kitchen 噂の新スポット “スナック野郎 POGGY” に潜入

スナック野郎 POGGY
住所:非公開
電話番号:非公開
営業時間:非公開

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