“Revolution”をめぐる Nike と The Beatles の知られざる裁判の結末

Airの認知度を高めたCMと『White Album』初のCD化の裏側で繰り広げられた“革命”が“伝説”へと変わるストーリー

By Rin Kishida
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The Beatles(ザ・ビートルズ)といえば、その楽曲の人気の高さに加え、権利関係の複雑さなどから“最も楽曲使用許可の取りにくいアーティスト”として知られる。2010年に公開された映画『ノルウェイの森』の主題歌として彼らの楽曲“Norwegian Wood ”の原盤使用が許可された際は、それだけでニュースになったほどだ。

そんな彼らの曲を、世界で初めてCMソングとして使った企業をご存じだろうか。誰あろう、あの〈Nike(ナイキ)〉だ。それも驚くことに“無許可”で、だ。

1987年、〈Nike〉はビジブルエアを初搭載したランニングシューズAir Max、テニスシューズAir Aceを発売した。これらのシューズをデザインしたのは、後にAir Jordanシリーズを手がけるTinker Hatfield(ティンカー・ハットフィールド)だ。

スポーツシューズの“革命”をアピールするため、〈Nike〉は3月から広告宣伝費700万ドル(当時のレートで約10億円)をかけた一大キャンペーンを展開。このときのCMのBGMとして用いられたのが、1968年に録音されたThe Beatlesの“Revolution”オリジナル音源だった。スポーツに励む無名の市民たちを、あえてJon McEnroe(ジョン・マッケンロー)やMichael Jordan(マイケル・ジョーダン)ら一流選手と同列に扱ったこのCMは好評を博し、〈Nike〉はAirの認知度を高めることに成功する。

ところが同年7月、The Beatlesのレコード会社「Apple Records(アップルレコーズ)」が、「楽曲を無断使用し、その価値を汚した」との理由で、〈Nike〉などに1,500万ドル(約22億円)の損害賠償を請求する裁判を起こす。原告に名を連ねたPaul McCartney(ポール・マッカートニー)、Gerrge Harrison(ジョージ・ハリスン)、Ringo Starr(リンゴ・スター)は「我々はいかなる企業のジングルも歌っていない。スニーカーや、ビールや、パンスト、ソーセージといった商品の宣伝に加担するつもりはない」という共同声明を発表し、争う姿勢を鮮明にした。

驚いたのは〈Nike〉だった。というのも、彼らはきちんと使用料を「支払っていた」からだ。

当時”Revolution”を含むThe Beatlesの楽曲の権利を所有していたのは、あのMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)。『TIME』誌によれば、〈Nike〉は広告会社を通じてMichael Jacksonと、米国でThe Beatlesの楽曲を管理していたレコード会社にそれぞれ25万ドル(約3,600万円)を支払っていたという。だが、The Beatlesのボーカルが入った原盤をCMで使用するためには、The Beatlesの各メンバー、そしてJohn Lennon(ジョン・レノン)の権利を引き継いだYoko Ono(オノ・ヨーコ)ら全員の許諾が必要、というが「Apple Records」側の見解だった。

〈Nike〉はいったんCMの放映を“当初の予定通り”終了したものの、自社に非はないと考え、その後も“Revolution”を使ったシリーズCMを約1年にわたって放送し続ける。

加えて〈Nike〉は裁判の進行中、ビジブルAirを初搭載したバッシュをリリースしている。そのシューズに”Air Revolution”と名付けるあたりは、なんとも〈Nike〉らしい。

後に〈Nike〉会長のPhil Knight(フィル・ナイト)が『Boston Globe』に語ったところによれば、「Apple Recordsは、(レコード会社や広告会社を訴えるより)Nikeを悪者に仕立てたほうが、PR戦略上、効果的だ」と考えていたフシもあるようだ。

この年、The Beatlesの名盤『White Album』が初めてCD化。“Revolution”も収録されたこのアルバムは話題性も抜群で、米国では約20年ぶりにThe Beatlesのアルバムがチャート入りを果たす。裁判の過程でYokoは、「(CMで使われれば)Johnの曲が若い世代にもより広まるきっかけになる」と、積極的に許可を出していたことも明らかになった(のちにYokoは別のNikeのCMにも“Instant Karma! (We All Shine On)”の使用を許可している)。

CM開始から2年以上経った1989年11月、〈Nike〉と「Apple Records」はようやく和解。スポーツブランドと世界的ロックスターの係争は終結した。

だがこの頃、すでに〈Nike〉は新しい一歩を踏み出していた。1988年3月に終了した“Revolution”キャンペーンのあとを受けて企画されたのが、現在では〈Nike〉の代名詞となっている、”Just Do It”キャンペーンだった。

“革命”が終わり、伝説的なブランドメッセージが誕生した瞬間だ。

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