Interviews:Beats by Dr. Dre や Prada も愛するファインアーティスト ジェームス・ジーン

輝かしい経歴、そして日本人の妻を持つ芸術家が語る制作の哲学と多種多様な文化におけるアートの立ち位置

アート  

James Jean(ジェームス・ジーン)。今ノリに乗るファインアーティストだが、アートに精通していない場合、その名前を知っている人は少ないかもしれない。だが、2001年に担当した『DCコミックス』のカバーデザインで、“漫画のアカデミー賞”と呼ばれるアイズナー賞で7部門、ハーヴェイ賞で3部門、イラストレーター協会主催の表彰式で金賞を受賞。その後、『Time Magazine』、『The New York Times』、『Rolling Stone』、『ESPN』といった誰もが知る大手出版/メディアをクライアントに、Linkin Park(リンキン・パーク)、『Playboy』などからも依頼を受け、さらには〈Prada(プラダ)〉や「Beats by Dr. Dre(ビーツ・バイ・ドクタードレ)」ともコラボレーションを展開するなど、活動エリアはアートの域を超越している。

そんなストーリーテラー的一面を持つJamesが、『Kaikai Kiki Gallery』で個展を開催。方位角という意味をも持つ“Azimuth”をタイトルに掲げた本展では、流麗な線と叙情的な色調を特徴とする作品を通して、同氏がが従った家族への思いや息子からの愛情によって導かれる内なる羅針盤を暗示している。

『HYPEBEAST』は今回の展示開催にあわせて来日したJamesを直撃し、インタビューを敢行。日本人の妻を持つ親日家のアーティストに“Azimuth”を深堀りしてもらうと同時に、現代のアート界を俯瞰から見た時の自身の見解を伺った。

ー また日本に戻ってきてくれましたね、おかえりなさい。ビジネスでもプライベートでも、これまで日本で過ごす機会は多かったかと思います。

日本に来るようになったのは2010年ですね。キッカケはGood Smile Company(グッド スマイル カンパニー)との仕事でした。日本ではフィギュアメーカーとしてお馴染みかと存じますが、僕たちはDavid Choe(デイビット・チェ)と共に、ロサンゼルスでスタジオをシェアしていたんです。僕たちはそこを“LA Secret Studio”と呼んでいたんですが、僕の人生においても本当に楽しい時間でした。スタジオ内は車やおもちゃでごった返していて、そこには僕のペインティングスタジオもあって。僕とGood Smileはジュエリーとスカーフのシリーズでコラボレーションしました。でも、それは公になることのない、秘密のパートナーシップのようなものです。その時は2ヶ月に1回のペースで日本を訪れ、1年間ぐらい日本に住んでいる時期もありました。僕の息子は2015年に日本で生まれて、僕の妻も日本人なんです。

ー そういえば昨年、自宅が日本のテレビ番組で紹介されていましたね。

あれを見ていた友人からたくさんメッセージがきましたよ。“グレートコネクション”は友人が友人を紹介するという番組だったと思うんだけど、女優のアヤコ(藤谷文子)が僕のことを紹介してくれて、僕は『ウォーキングデッド』のグレン役でお馴染み、Steven Yeun(スティーヴン・ユァン)を紹介しました。僕たち夫婦はプライベートを大切にするけど、日本のテレビ番組だし、あまり大勢に見られないかなと思っていたら、意外とみんな見ていて。その時、番組の司会を務めるバナナマンの似顔絵を描いて、それをTシャツに刷りました。面白いコラボレーションでしょ(笑)?

ー 今回の個展、“Azimuth”の名前の由来は何ですか?

この個展のテーマは光、太陽と星明かりです。“Azimuth”は響きが良かったのと、天体に対して自分がどこにいるか計測する方法を意味しています。言葉として並びが良いなと思いました。

ー 過去の個展と比較しての違いはありますか?

普段は作品がバラバラになりがちですが、本展は今までで最も首尾一貫した作品を展示しています。あと今回は“光”と“楽観”に注目しました。以前のムーディで表現的な作品に比べると、色彩豊かで幸福さが目立つと思います。様々なアプローチで作品を作るのが好きで、今回はカイカイキキで開催されるということと、隆さんのご要望もあり、計画的な手法で進めるようにしました。あと、私には3歳の息子がいるので、塗り絵本に影響された手法を使っていて、元の絵を拡大してから色を入れています。以前の作品が実験的で即興が多かったのに比べると、より計画的で明確な作品になっています。

ー ひまわりを模したピンの作品が一際目を引きますね。

このアートピースには1001個のピンを使用しています。ほとんどの人がもっと少ないと思っているようですね(笑)。実はカイカイキキの入社したてのスタッフの方が、初仕事として1001個あるか、写真を撮ってひとつひとつ数えて確認したそうです。

ー 最近のコンテンポラリーアートは、テーマが抽象的でコンテキストが伝わりづらい作品が多いと思いますが、あなたの作品は物語を語っているように思えます。

私は潜在意識に任せて自分の中にあるものを創出させようとしているんです。それが自分にとって一番自然なやり方だと思っています。コンテンポラリーアートは、例えば科学に近いような変化をするものだと感じていて。進化するにつれて秘儀的になり、遠ざかってしまいます。私は作る作品がより多くの人の心に響いてほしいので、できる限りそうならないようにコントロールするようにしています。

ー ファッションやアートが重なり合って、様々なカルチャーの垣根が取り払われています。その点についてはどうお考えですか?

全てがミックスして、壁が取り払われつつあることに疑いようの余地はありません。クリエイティブな活動としては良いことだと思います。ただひとつ、ファッションに関しては常にショーを開催しなければいけないので。頻度が多すぎると思います。ペースが早すぎて、自身の活動や作品をゆっくり眺められないのが現実です。絵画に関しては一旦離れて目を外して、新たな視点を常に持って最高の作品を作り上げることが重要です。美術の世界でも同じように、アートショーとは別にアートフェアが開催されています。創作活動や新しいものを作るプレッシャーで脳内がパンク状態になってしまい、一番良い作品を作る余裕がなくなっているように思えます。作品を振り返って飲み込む機会が失われては元も子もないはずなのに。

ー インターネットやソーシャルメディアの影響も強いですね。

そうですね、常にスクロールしていますよね。アートの大部分がInstagramに移り、多くの人がそこで発信するようになりました。アートの世界はもともと不明瞭な部分が多い世界で、Instagramが普及することによって新しいコレクターや若年層が入りやすくなり、ギャラリーなどは大いに喜んでいます。そういった面ではアーティストやコレクターが増えて良いのですが、実際に足を運んで実物を鑑賞せず、JPEGの解像度以上では体験しなくなっているのもまた事実です。実際に多くの作品がEメールやInstagramを通じてJPEGで売られています。作品の本質は目の当たりにしないと理解しがたく、画面で伝えきれないことの方が多いので、画家としては常に作品の品質を心がけています。

ー コンテンポラリーアートは愛好家の中で崇高な立ち位置を確立しましたが、洞窟壁画や、ルネサンス、印象主義など、文化遺産的な芸術はどのような役割を担っていると思いますか?

私はただの絵描きですが、その背景には洞窟壁画があると思っています。Werner Herzog(ヴェルナー・ヘルツォーク)の『世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶』というドキュメンタリーが大好きで、炭で描かれた絵には何か感慨深いものがあると思っています。ルネサンス期の肖像画、日本の版画など、製図や構図が関わるものは全て興味があります。コンテンポラリーアートは複雑さから人間性が欠けてしまうことがあるので、歴史をたどって参考にするようにしています。私としては元からある美術への好奇心を更に高めて進化させたいだけです。

ー 日本の歴史や文化的背景は芸術の世界にどのような影響を与えていると思いますか?

日本には職人魂があると思います。コンテンポラリーアートの世界ではクラフトマンシップは難色を示されがちですが、とても尊敬しています。素晴らしいアーティストや画家がたくさんいるのにもかかわらず、国内市場の規模が小さく海外や西洋のコレクターに頼らなければいけない状況が残念です。日本は、環境、自然、デザイン、技術などに誠実さが見受けられて、訪問する度に心が踊ります。全て計算されて考え抜かれているんでしょうか。その反面、ロサンゼルスはエネルギッシュで混沌とした、常に変わる町です。日本はスローで沈静しているので、その両面が経験できるのは芸術家として非常に意味のあることですよ。

ー 今まで様々なアーティストやブランドとコラボレーションをされてきましたが、他の人と協業するにあたって一番大事なことは何ですか?

想像的自由が一番大切だと思います。幸いにも、今まではそういった自由を与えてくれる方々とパートナーシップを組めましたし、私も同じように彼らには活動しやすいように心掛けていました。結果として、互いに干渉しないようにすることが最善の結果となると思っています。

ー あなたのスタジオ兼オフィスがArchitizer A+ Awardsに選出されましたが、クリエイティブな空間に欠かせないものは何ですか?

書斎や、豊かな光源、自然の要素など、クリーンで熱望的な、インスピレーションを与えてくれる空間でなければいけません。ここは私の友人がデザインしてくれて、実際に私も手を加えられたと思うので、とても気に入っています。友人のDan Brunn(ダン・ブルン)にクリエイティブ面を全て任せて、素晴らしいものになって様々な賞を受賞することができました。できる限り彼を後押しできるようにして、独創的な階段や木造の小部屋、庭と繋がっている茶室などを生み出すことができました。

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