Interviews:ゴーシャ・ラブチンスキーが語るPACCBET、スケートショップ、そしてヴァージル・アブロー
「ヴァージルは気をつけるべきだ」
先日、『Dover Street Market Beijing』リニューアルオープンのため北京を訪れていたGosha Rubchinskiy(ゴーシャ・ラブチンスキー)。我々『HYPEBEAST』は滞在中のRubchinskiyとコンタクトを取り、いろいろな話を聞くことができた。自らの名前を冠するブランドの向かう先、新しいスケートショップをオープンする計画、そして〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉のVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)起用について、彼は興味深い話をたくさん聞かせてくれた。
ブランドをスタートさせてから約10年が経ちますが、振り返ってみてどうですか?
ブランドが成長したことによって、新しいラインである〈PACCBET(ラスベート)〉をローンチできたことは大きいね。よりスケートボードやユースカルチャーにフォーカスしたラインなんだ。10年前は俺しかいなかったのに、今では立派なファミリーになったよ。
スタンスを変えずにここまで来れた要因は何ですか?
いつだって、俺たちは“今この瞬間”を語りたいのさ。特にモスクワの“今”をね。ロシアの同世代を代弁することがミッションだから。今も昔も変わらないのは、楽しいゲームをやっているってことかな。「何か面白いことをやろう」って友達とTシャツを作り始めたのがスタートで、今は世界中に友達がいる。それ以外は同じだよ。
“ロシアの同世代を代弁することがミッションだから”
あなたのブランドが成功することで、世界のファッションシーンにおけるロシアの存在感も大きくなったと思います。ロシアのファッションシーンでも、その変化を感じることはありますか?
大いにあるね。自分たちで何かを始め、人気を獲得し、成功を収める。俺たちは良いお手本だと思う。みんなが「俺だって!」って思えば良いよね。以前はみんなが不安を抱え、怠けていたんだ。俺たちはポジティブな変化をもたすことができたはずさ。
インスピレーションを得るため、ロシアの外にも目を向けることはありますか?
今はSNSがあるから、世界中で何が起こっているかを簡単に知ることができる。キッズがどんな服を着ているのか、どんなトリックをやっているのか、デザイナーとしてもスケーターとしてもたくさんのインスピレーションを得ることができるよ。クリエイティブなことに活かすのであれば、テクノロジーは本当に最高だよ。馬鹿げたことや怠けるために活用しなければね。ただ、テクノロジーの奴隷になってしまうのはダメ。
何かコラボレーションの予定があれば教えてください。
たくさんあるよ。今は〈PACCBET〉の成長に注力しているんだけど、〈Gosha Rubchinskiy〉の方は……、シーズン毎にコレクションを発表することにちょっと疲れたんだ。ちょっと戦略を変えて、よりプロジェクト的要素が強いものにしたいんだよね。もしかしたら、ウィメンズラインを作ることもあるかもしれない。とにかく、今はもっと〈PACCBET〉のコレクションを出したいし、コラボレーションもやっていきたい。〈Carhartt WIP(カーハート WIP)〉とのカプセルコレクションは、その第一歩なのさ。
〈Burberry(バーバリー)〉とのコラボレーションはどうでしたか?
〈Carhartt WIP〉とは真逆だよね。でも、すごくナチュラルだった。〈Gosha Rubchinskiy〉では、ここ3回のショーでサッカーをテーマにしていたんだ。ロシアでのワールドカップもあるしさ。だからこそ、〈adidas(アディダス)〉ともコラボレーションした。2017年秋冬コレクションはカリーニングラードでお披露目したんだけど、ここは元々ドイツの都市だったんだよ。第二次世界大戦後にロシアに帰属されたんだよね。2018年春夏コレクションをサンクトペテルブルクで発表したかったのは、ロシアのサッカーにおいて重要な都市というのが理由。さらに、ロシアにサッカーを持ち込んだのはイギリス人だから、イギリスのブランドとコラボレーションしようと思ったわけ。もちろん、最初に思いついたブランドは〈Burberry〉だったよ。彼らとサッカーの繋がりはすごく強くて、イギリスのサッカーファンの多くはブランドの象徴でもあるチェックを愛しているんだ。コンタクトを取ってみると、彼らは柔軟な考え方を持つプロフェッショナルだとわかったよ。Christopher Bailey(クリストファー・ベイリー)は俺のアイデアをしっかりと理解してくれ、コラボレーションの実現まで全てがスムーズだったよ。
Baileyが〈Burberry〉を去り、新たにRiccardo Tisci(リカルド・ティッシ)がクリエイティブディレクターに就任しましたね。〈Dior Homme(ディール オム)〉や〈CELINE(セリーヌ)〉も含め、ここ最近ラグジュアリーブランドの人事に大きな変化が見られます。Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)が〈Louis Vuitton〉のメンズディレクターに就任したことについては、どうお考えですか?
興味深い話だよ。新しい血を入れているね。ラグジュアリーブランドは過去のものさ。彼らはいつだって新しい何かを探している。ただし、ラグジュアリーブランドというものは吸血鬼にもなり得るんだ。若い世代の血を吸い尽くしちゃうようなね。だからこそ、Virgilは気をつけるべきだ。でも、フレッシュな人間がラグジュアリーな世界に入るのは良いことだよ。そうでしょ? どうなるか見てみようよ。
“俺はプロのデザイナーじゃないんだ”
フォトグラファーとしても活動していますよね。もしデザイナーでもフォトグラファーでもなければ、今頃何をしていたと思いますか?
俺はプロのデザイナーじゃないんだ。もちろん、プロのフォトグラファーでもない。どちらかと言えばストーリーテラーってとこかな。明日にだったブランドや写真を止めて、何か別のことを始められるよ。俺はストーリーをたくさん持っているから、それはそれで面白いだろうね。ストーリーさえあれば、何だってできるのさ。様々な手法を使って、何か新しいことにトライするのが大切なんだ。俺は誰にだってなれる。もちろん、美しい花を育てる園芸家にだってなれるさ。そうでしょ?
〈Gosha Rubchinskiy〉がソウルにショップを出すという噂を聞いたんですが……。
俺も初耳だよ。でも、モスクワにスケートショップを出す予定はあるよ。ロシアでは初めてのリアルでクールなスケートショップさ。名前は『OCTOBER』。ロシアのスケートチームの名前なんだ。キッズが気軽にデッキを買いにこれるようなショップになるよ。楽しみだね。