Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち

LAの重鎮 OG Slick、〈DISSIZIT!〉唯一の日本人メンバーCook、そして日本のアーティストコレクティブ81Bastards

アート 

アイコニックな手のモチーフで有名な、ロサンゼルスを代表するグラフィティライターの重鎮、OG Slick(オージースリック)と、彼が主宰する〈DISSIZIT!(ディスイズイット)〉所属の唯一の日本人アーティスト COOK(クック)、そして東京を中心に活動するアーティスト集団81BASTARDS(エイティーワンバスターズ)が、民泊用マンションでコラボレーション。東京の特区民泊エリアである大田区に建てられた新築マンションが、一棟丸ごと彼らのアートでデコレーションされ、『THE AOCA│Apartment of Contemporary Art ,Tokyo(アオカ トウキョウ)』と名付けられた。

このアートマンションは、外壁からエントランス、そしてコネクティングルーム3部屋を含む全17部屋に渡って上記人気アーティストたちの作品が描かれ、各アーティストのソロ作品から〈DISSIZIT!〉x 81BASTARDSのコラボレーションアートルームまで、全部屋違った作品が描かれている。地方からの東京滞在や、インバウンドの需要に応えるだけでなく、「文化的欲求を満たすユニークな宿泊体験の提供」を目指し誕生したこの施設は、事業環境や社会情勢、利用者の多様化などに対応した事業の推進を掲げる不動産ディベロッパー「株式会社ベストウェイ」によって実現されたプロジェクト。プロデュースは、国内外で活動しているクリエイティブクルーLQID(リキッド)だ。今回、OG Slickをはじめ、COOK、81BASTARDSのメンバー MHAK(マーク)、YOSHI 47井上純Naoki “SAND” YamamotoOTといった参加アーティスト全員からもらったコメントと、制作風景や完成した部屋の写真、そして映像フッテージなどをご覧いただきたい。


OG Slick

OG Slick

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
- 今回のプロジェクトや、描いた作品などについて教えて下さい。

このプロジェクトは、香港でのアートバーゼルの仕事からの移動の流れを考えても、パーフェクトなスケジュールだったんだ。参加できてよかったよ。アーティストとしての自分を前面に出していいっていうプロジェクトだったのが嬉しかったね。いつからか俺のシグネチャーになったハンドモチーフを今回も描いて、自分らしさを出させてもらったよ。まあ、何か制限やリクエストがあるプロジェクトだとしても、自分のグラフィティのルーツから逸脱したことはやらないんだけどね。今回も、この場所がグラフィティアートファンたちだけの場所じゃないことはわかってる。でもせっかくグラフィティが描かれた部屋に泊まるなら、大胆にやろうと思った。たとえば1階の部屋は、アメリカのストリートアートでよく見る郵便局のPriority Shippingのステッカーがモチーフなんだ。グラフィティアーティストたちは郵便局に置いてあるステッカーをたくさんくすねて、そこに自分の名前を書いて自分のグラフィティにタギングしたりするんだよ。この部屋の壁のアートも大胆ではあるけど、見ていて不快なバランスにはならないように気をつけてるんだ。遠い昔にアートスクールで学んだバックグラウンドが活かせてるといいね(笑)。

- 各アーティストそれぞれが担当した部屋や、みなさんのアートをミックスした部屋など全室とてもユニークですが、外壁にもSlickのスプレー缶とハンドモチーフが描かれていて、入る前からわくわくしますね。

外壁のエントランス付近はグレースケールだろ?そこからガラスのドアを挟んで室内に入っていくと、外から繋がっていたグラフィティがカラフルになるっていう演出をしたかったんだ。エントランス部分から、81BASTARDSとのコラボレーションが始まっていくよ。

- 日本には昔からよく来ていたのですか?

日本にはたくさんの思い出があるよ。90年代、俺はfuctの創設メンバーだった。その頃日本にはよく来ていたし、BOUNTY HUNTERのヒカルやTENDERLOINの仲間たちとよく遊んでた。もうfuctには関わっていないけど、当時の想いやシーンへの関わりは、今も変わらず俺の心の中にある。それとX-Largeと仕事もしていたから、日本にも拠点があるX-Largeのために来日してもいたね。何より俺の奥さんが日本人なんだ。だからなるべく年に1回は日本に来るようにしてる。日本食も大好きだしね。ただ、こういうアートホテルみたいなプロジェクトで来日するのは初めてだよ。

- 今と昔のアートシーンで、変わったなと思うことはありますか?

情報量が多いし、コンピューターを使えるようになったから、みんな技術的なレベルが凄く高い。それと気づいたのは、俺が若い頃は、セルアウトすることやマネすることはダサいし、そもそも良くないことだっていう考えが普通だったけど、今はちがうっていうこと。あれ? と思うこともあるけど、それが好きか嫌いかは、受け手が自分で判断すればいいからね。俺は性質的にアナログなことが好きなだけ。俺もコンピューターでレイアウトをシュミレーションするから、それをプリントアウトして壁に貼れば、パーフェクトな作品が完成するけど、俺はそれでもスプレー缶を握りたいんだ。そういうもんだろ?

COOK

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
〈DISSIZIT!〉はスプレーのアーティストなので、グラフィティにまつわるテーマで作品を作りました。自分が手がけたヒツジのモチーフは、50年代のスプレー缶に使われていたものだし、SlickのU.S. Post Officeテーマの部屋も、グラフィティアーティストらしいテーマです。今回81BASTARDSとのコラボレーションも楽しかったですね。やっていくうちに徐々につかめてきた感じ。違う世代のアーティストたちと作業をするのは刺激になります。俺もインターネットなんてなかった時代にグラフィティを始めて、Slickにはずっと憧れていました。彼の絵を完コピしていた自分が今はDISSIZIT!の一員として一緒にいるっていうのは感慨深いですね。今は俺が始めた頃より情報もたくさんあるし、みんな上達が早い。もはや若い世代に追いかけられるような立場になって、改めて自分も頑張ろうって思えますね。

MHAK

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
僕は、居住空間ということで自分だけが担当した部屋は割とネガティブスペースを多めに作りました。でもみんなの見たらすごかったですね(笑)。でもそれはそれでいいかな、と。ミックスの部屋は大胆にできたし、泊まってやっとわかることなのかもしれないけど、作品の迫ってくる感じを体感できる部屋がたくさんあると思います。BASTARDSに関してはいつも通りでしたけど、COOKさんとSlickとのコラボレーションに関しては、やっぱり光栄でしたね。エントランスも、最初はDISSIZIT!の2人のためのスペースだったんですけど、一緒にやろうって提案してくれたのは嬉しかったです。あと、大森のこのローカル感も面白かったですね。夜、レゲエバーとかに行ったのも良い思い出です。今度大森出身の人に会ったら、話のネタになるスポットができました(笑)。

Naoki “SAND” Yamamoto

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
僕らにとってSlickとCOOKさんと一緒に絵を描くってことは、野球少年がイチローとキャッチボールしてる感じですね。
制作プロセスを見られたのはすごく貴重な体験だったし、2人共明確にやることを決めて取り掛かってるところが、やっぱりプロフェッショナルなんだなっていうことを目の当たりしました。大森には初めて来たんですけど、この街の、路地裏がたくさんあるところとか、ローカル感がいいなぁと思ったし、壁に書いてると近所の人たちが興味持って話しかけてくれるのも良かったです。普段、僕らは一部の人たちにしか知られない存在だけど、こういうチャンネルをもたせてもらって、いろんな人がアートに興味を持ったり、絵を買うっていう行為のきっかけになったらいいなと思いました。僕の絵じゃなくてもいいんですけど、せっかくここに7人もの絵が集まってるから、誰かの絵をきっかけに、グラフィティとかミューラルとかに興味がなかった人の世界が開けたら嬉しいですね。日本ではなかなかミューラルを描く機会なんてないですけど、こういう活動や仕事を続けることで、自分のこどもが大人になる頃に、絵を描く仕事があったり、アーティストにとっていい方向に変わっていたらいいなと思います。アーティストの絵がプリントされた服とか雑貨は買ったことがあっても、絵を買ったことがない人なんていっぱいいると思うんでね。見た人の中で何かちょっと変わってくれたら嬉しいです。

OT

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
自分が壁に描くようになったのは、BASTARDSに参加するようになってからですね。参加してから4年目なんですけど、それでも壁に描く機会っていうのはそんなにたくさんなかったです。僕はあまり部屋に描くっていう感覚なく、無視して好きなように描かせてもらいました(笑)。自分がソロで担当した部屋も、豪快に鳳凰がいいかなと。インパクトがあるから、海外の人に来てもらってもわかりやすいといいなと思って鳳凰とか鯉とかドラゴンを描きました。考えてみれば、日本て着物があったり、浮世絵があったり、漫画があったり、アートに溢れてる国だと思うんですよね。だから僕らのこういう一筆一筆描くアナログな作業っていうのも、いつか当たり前に受け入れられるといいなと思います。ここに泊まって、夜の大森の街を楽しむのもいいと思います。

井上純

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
SLICKに遂に会えると興奮していたのですが、実際会うととても柔らかく優い人でした。室内の壁と僕が使用した画材の相性があまり良くなくて、難易度の高い壁でしたが、作業中にMHAKが僕の本当に表現したいところの作風を褒めてくれて、頭が軽くなりました。こういったユニークな試みを計画し、実現したAOCAディベロッパーとLQIDの皆さんにリスペクトと感謝ですね。僕のコメントも読んでいただきありがとうございます。こう読んでいただいているのも何かの縁ですね。人生楽しみましょう!

yoshi47

Interviews:民泊用アートマンション THE AOCA を手がけたグラフィティアーティストたち
SLICKさんの印象は、まさに根っからハワイアンっていう穏やかな空気が流れている人だなって思いました。色々細かく話させてもらったけれど、本当に絵が好きで好きでしょうがない人なんだなって思いました。僕らと同じですね。あと奥さんに対する愛が溢れてて、幸せを感じました。COOKさんの印象は、モチベーションがとても安定している人なんだなっていう感じですね。てきぱきしてるし、無駄がないっていうか。僕らも職人気質ではありますが、それ以上なオーラを感じました。大阪で酒一緒に飲みたいっすね。AOCAのようなアートと宿泊施設が融合している場所が全国にちらほら出てきていますが、アートと生活のつながりがより身近になるように、AOCAがそういった環境をリードしていく存在になったら嬉しいですね。ペイント中の思い出は、とにかくお坊さんのような心境で無になりながら、ただただ塗っていくという作業だったので、「無」の境地に入っていました。限定された時間の中で、篭りながらの作業は本当に自分と向き合いつつの修行感がありましたね。外壁とは違う、何か独特な空気感。本気で勉強になりました。

AOCA丨Apartment of Contemporary Art, Tokyo(アオカ トウキョウ サンノウ)
住所:東京都大田区山王3-3-4
部屋数:全17部屋(コネクティングルーム3部屋を含む)

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