今年3人目の CEO に託された「TIDAL」のこれから

「Jay Z」が経営権を持つ「TIDAL」は、1年という短い間に3人目のCEOを迎える

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ストリーミング市場の競争の中で、今年早くも再ローンチという動きをみせたストリーミングサービス「TIDAL(タイダル)」は、「Spotify」や「Apple Music」を意識した姿勢を見せているが、現状はすでに市場からは忘れられ、厳しい状態が続いている。

「Jay Z」が経営権を持つ「TIDAL」は、1年という短い間に3人目のCEOを迎えることになる。前CEO「Andy Chen(アンディ・チェン)」と、臨時でその後任を務めた「Peter Tonstad(ピーター・トンスタッド)」の退任により、夏からCEO不在の状態が続いていたが、停滞中の音楽サービスに安定した利益をもたらすことができる新しいリーダーとして「Jeff Toig(ジェフ・トイ)」が抜擢された。ジェフは「Cricket Wireless(クリケット・ワイヤレス)」社の革新的な音楽サービスである「Muve Music」の設立およびSVPを、さらに「Virgin Mobile USA」の立ち上げメンバーとして活躍した功績を持つ。「Jay Z」は、「モバイルサービスなどの個人向け技術やエンターテイメントに関する領域を少なくとも今後20年間牽引する人物だ」と彼を評価しいている。詳しくは『billboard』誌に掲載されたToigのインタビューを参照

今回どうしてこの仕事を引き受けたのですか?

主な理由としては3つあります。まず、高いレベルで特別なことに関わることができる素晴らしい機会であるからです。「Jay Z」とアーティストの所属事務所は、「Tidal」とそのビジネスとしてのビジョンに深く関わりを持っています。このビジネスモデルとそのビジネスチャンスを評価してみたところ、「Tidal」は非常にユニークな価値を持っていると思いました。“Tidal X”のようなライブイベントを通じたアーティストとの深いつながによって独占コンテンツや貴重な機会を保持し、市場の競争の中で早々に様々な取り組みに着手し、非常に魅力的な基盤を形成しています。
2つ目は、話し合いを進める中でとても長い時間を「Jay Z」と共に過ごし、彼の「Tidal」に対するビジョンやこのビジネスに大きな投資をした理由を知ったからです。彼と会社に関わるアーティストたちが、ファンに対して素晴らしい音楽体験を生み出すために非常に熱心に取り組んでいることは明らかでした。これはすでに多くのサービスが失っている点であり、「Tidal」がマーケットを牽引する立場になるには非常に重要な点であるでしょう。
3つ目は、サービスが持つ“エネルギー”です。たった6~7カ月前にローンチされたばかりにも関わらず、すでに100万人を超える利用者を抱えるほどに成長しており、このような勢いがあるビジネスをみれば、何かとてもおもしろいことが起こるのではないかと思いませんか? 今までも同じような経験がありますし、このビジネスの今後の成長やポテンシャルに興味をそそられています。

3月の「Tidal」の再ローンチ後、「Apple Music」や「YouTube Red」、「Pandora」のような定額制配信サービスが登場しました。このマーケットについての見解をお聞かせください。全てのサービスが十分な利益 を獲得できるほどに成長すると思いますか?それともすぐに利益を争奪するような状態になってしまうのでしょうか?
これは個人的な見解ですが、定額性音楽配信サービスには明らかに可能性があると思います。すでに多くの有力企業がこの領域に関心を持っており、このコンセ プトはユーザーから支持され、新しいアイデアが注目を集めています。このビジネスコンセプトが生まれると想像していた人は5年前には1人もいませんでし た。でも、実際に今起こっているのです。もし定額性のモデルが一般的になったら、定額性のビジネスモデルが企業価値を高めることになるでしょう。 「Netflix」のような動画の定額配信サービスや「Verizon」のような携帯電話会社、「Comcast」のようなケーブルテレビ会社は、全て定 額配信モデルの実施により経常収益を獲得している、優秀な企業です。私たちは、魅力的で成長可能性のある定額制音楽配信サービスをつくることができると考 えています。

「Tidal」は、通常料金でのサービスと高音質を楽しむことができる、通常より高い金額設定のサービスの2種を提供している点が特徴的ですが、「Muve Music」の成功要因でもある無料の配信や低価格のサービスではありません。無料配信や低価格配信の需要は拡大するのでしょうか? それとも「Tidal」のようなサービスはひとまず9.99ドルや19.99ドルのサービス利用者の獲得に努めることになるのでしょうか?
まだわかりません。このビジネスに参加してチームで邁進できるようになるまで、どのように結果を出すべきなのか正直なところわからないです。ただ、私は“hi-fi(ハイ・フィデリティー)”とその産業界における影響力に注目しています。この分野でもなにか新しい動きが起こるでしょう。「Tidal」の100万人以上のユーザーの半分近くは“hi-fi”を求めているのです。

音楽産業において「Tidal」は、不安定さと楽観的な姿勢の両方を持つように感じます。2016年1月から音楽ビジネスに関わっていくわけですが、今の心境を教えてください。
最初の課題はメジャーレーベルや出版関係者との提携だと考えており、アーティストや作曲者、制作に関わる人々に対してなにかしらの手助けとなるようなことや、彼らが関心を持ってくれるようなことができるよう努める必要があります。我々はこのビジネスに深く関わっていく上で、長い間市場で活躍できる成功例となるために拡大可能で持続的な形を目指していくつもりです。

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Yuri Nishikubo
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