Interviews: Gabriel Ricioppo と南貴之に聞く、日本における『Need Supply Co.』の展望とは?
11月28日(土)には熊本にも日本2号店がオープンする、『Need Supply Co.』が目指すもの
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1996年、「Gabriel Ricioppo」がアメリカ・ヴァージニア州リッチモンドにオープンしたセレクトショップ『Need Supply Co.(ニード サプライ)』が、日本に初上陸。2015年10月に東京・渋谷区の松濤エリアにオープンし、11月28日(土)には、熊本にも日本2号店が登場する予定だ。今回、そのオープンに合わせて来日していた「Gabriel Ricioppo」と、ショップディレクターを務める「alpha」の「南貴之」にインタビューを敢行。日本における『Need Supply Co.』の展開と今後の展望などについて話を伺った。
—日本初出店となる今回のお店ですが、オープンに至ったきっかけというのは何ですか?
南:『Human Being Journal』という雑誌の存在は知っていたんですが、まさかそれがアメリカのセレクトショップ『Need Supply Co.』が作ったものだとは思っていなくて。でもこの出店の話を持ちかけられた時に、雑誌の世界観を知っていたので出店のイメージもしやすく、コンセプトを聞いてもおもしろそうだと思いました。
Gabriel:日本では「ネコパブリッシング」から『Human Being Journal』を出版しているんだけど、その関係で日本に来たとき、車の中でふと思ったんです。日本にお店があったらいいなって。その話で盛り上がったのが最初のきっかけですね。
—お店のロケーションですが、この松濤という渋谷の喧騒から少し離れた場所にしたのは?
南: もともと小売店兼レストランということで、条件に合う物件を探していたときに、ここと中目黒が候補に上がったんです。僕は松濤の方がいいなとなんとなく思っていて。まわりにたくさんのセレクトショップがあるわけでもないけれど、いいエリアだし、逆に僕らがこの土地に加わったことで良い雰囲気を発信して、ファッションと人との新しい関係性やカルチャーが育っていったらいいなと。ヴァージニア州リッチモンドにある『Need Supply Co.』の店もそうなんですが、別にファッションエリアやショッピング街のど真ん中にあるような店でもないから、このくらい離れていた方がいいなと思いました。
—外観も内装も、アメリカの店舗に近い仕上がりになっていると感じているんですが、ここは合わせた、ここは変えた、というポイントはありますか?
南: 外観のレンガが似ていますが、実は内装は結構変えているんです。というのも、僕がアメリカの店舗に行った際、これをこのまま再現してもかっこいいと言ったのですが、彼らはもっとブラッシュアップさせたいということだったので、いちから一緒に構想を練りました。所々の使用は同じものもあるけど、日本の店舗の方がモダンな仕上がりになっていますね。
—日本のブランドやジャパンメイドのアイテムも置かれていますが、それはこの店舗ならではのセレクションですか?
南: いいえ、彼らがすでにアメリカで取り扱っているものもあります。僕が店のテイストに合いそうなブランドやアイテムの提案をしたものもありますが、最終的にどこの国のものかということは関係なく、単純に彼らから見てクールなもの、という目線でのセレクションですね。
—今後、『Need Supply Co.』は日本のファッションシーンでどのような存在になりたい、などの希望はありますか?
Gabriel: いろんなものがあふれていて選択肢が多いところだから、僕らは僕らとしてあり続けるだけだと思います。まわりの意見にはオープンでいたいけど、何か他のもの、僕たちらしくないものになる必要はないから。自分たちのビジョンを持ち続けながら、クリエイティブでいたいと思っています。
南:僕は久々にきちんとファッションに向き合った店ができるな、と思っています。彼らの視点っていうのは、ただのオーセンティックとかトラディショナルとかではなく、モダンな価値観も取り込んだファッションの提案なんです。彼らはモードもトラッドも、いろいろなものをすごくフラットに見ているんですよ。1階がレストランということもありますが、いろいろな人が来てここで新しいスタンダードみたいなものを分かち合える、サロンみたいな場所になるといいですね。いろいろなテイストや ジャンルをミックスすることってすごくセンスを問われると思うんですが、彼らは店舗、雑誌、ウェブサイトを通じてすごく上手な魅せ方、提案をしているので、東京のファッションシーンにそんな新しい視点のスタイルを投じられるような存在になったらいいなと思います。
—南さんにお伺いしたいのですが、ご自身で『Graphpaper』をディレクションしていますが、『Need Supply Co.』の彼らとの共通点、共感するところというのはありますか?
南: ものの見方は似ていると思います。僕も彼らのように、どこの国の、どのジャンルの、という概念はありません。もっと言うとものの種類に対する概念がないというか、服でも食器でもアートでも、すべてをフラットに、クールかクールじゃないか、という目線で見ているところですかね。ただアウトプットの仕方は違って、彼らは彼らなりのアイデンティティのもと、お店を作っているので、僕はそれに手を添えるというか、東京という土地柄で僕がサポートできることをしてあげながら、お互い高めあっていくという感じですね。でも海外の店が日本に出店した時って、だいたいトップダウンの見せ方しかしていなくて、本国に言われたものをその通りに機械的にただやっていくことが多いと思うんですが、僕らに関してはお互いの共感とリスペクトが前提にあっての出店なので、そこも他の 日本にある”海外の店”とは違うかなと思います。
—ガブリエルさんへの質問なのですが、日本に来る前の日本の印象とはどんなものでしたか?
Gabriel: インターネットもたくさんの雑誌も映画も、情報が山ほどある世の中だから、日本がどんな場所なのかっていう大体の情報は分かっていました。1年半ほど前に初めて日本に来たときは、その記憶の中の世界が目の前に広がっていることをただただ感じたよ。日本は世界トップクラスのファッションシーンがある場所だということは思っていました。実際デザインも期待値も、細部までのこだわりもすごく基準値の高いものだと思う。だからそんな場所で自分のファッションを試すっていうのは大きなチャレンジだと感じています。
—ECサイトがすごく評価されていると思うのですが、その成功の秘訣とはなんでしょうか?
Gabriel: 多分、それっぽいアプローチをしないことかな(笑)。大事なのは真似をしないことで、自分たちのクリエイティビティを優先して構築すること。僕自身でウェブデザインができたから、他の誰か、どこかの企業に頼って枠にとらわれたり、時間をかけて煩わしいやりとりをしなくて済んでいました。ECも実店舗同じです。どこまで丁寧なプレゼンテーションができるか、自分たちのこだわりをちゃんと細部まで反映させられるかだと思います。
南:リッチモンドの店に行った時、店の裏にある以前スタジオとして使っていたスペースを見たんですが、こじんまりとしたその場所で雑誌を作り、ECの撮影もしていたというから驚きました。今は別の場所にEC用の倉庫とスタジオがあるそうですが、自分たちですべてをこなすっていうのがすごいことですよね。
—日本にはあまりそんな企業がない気がしますもんね。会社ごとに役割が切り離されているというか。
南:そこが彼らのすごい所で、リテール運営から雑誌の製作まですべてやっているんです。日本は担当ごとにバラバラに動いていたり、専門の会社に委託したりしているけど。 彼らは社内にそれぞれの部署があって、撮影・編集みたいなクリエイティブの部署はセンスがいいし、レベルの高いスタッフが集まっています。その上、みんな互いをリスペクトしていて仲がいいっていうのも素晴らしいことです。
—情報共有がしっかりできているんでしょうね。それが一番難しいことだとも思いますが、どうですか?
Gabriel: そうですね、僕は情報も価値観も共有できるチームプレーがしたいんです。たった40人の会社だけど、いいチームを作って、価値観を共有しながら仕事を進めればスムーズにいくから。だから、人を採用する時の判断基準というかハードルは高いかもしれない。チームの一員として一緒に動ける有能な人を探すんです。
—東京、熊本、そしてLAにも出店をする『Need Supply Co.』ですが、今後の展望や他に出店したい世界の都市はありますか?
Gabriel: 今後はオリジナルアイテムにも力をいれてみたいなとは思っています。でも僕らのアプローチは変えないと思うし、僕らのアイデンティティに沿って、ベストなものを選んでいけたらと考えています。お店は……NYにも出せたらいいですね。ほかにもいろいろ考えている場所はあるけど、今は日本やLAで、いろいろ試して学ぶことが一番です。
—南さんとしては、日本の『Need Supply Co.』をどんな風に進めたいですか?
南:変わらず、彼らの日本のパートナーというか、一員としてこちらから発信できるものや、彼らからの提案についてアドバイスして、高め合っていきたいですね。