京都:「わびさび」 不完全なる美を求めて
日本のデザインや、思想に浸透している「わびさび」という言葉、日本人といえど外国人に問われて説明をするのは決して容易ではない。仏教に影響を受けた概念は簡単に言えば、「完璧な不完全さ」という常套句を連想し
日本のデザインや、思想に浸透している「わびさび」という言葉、日本人といえど外国人に問われて説明をするのは決して容易ではない。仏教に影響を受けた概念は簡単に言えば、「完璧な不完全さ」という常套句を連想してしまうように、不完全で、無常、未完成のものの美と定義される。「わび」を不完全さから来る美の象徴、「さび」を避けようのない、老いていくプロセスとゆるく解釈したら、ある点でこの逆説的な仮定は正しい。掘り下げていったら、精神性の高い意味合いの方が表層的な要因よりもずっと重要であること明らかになる。視覚、聴覚、嗅覚から、「わびさび」は周囲にあるものを本質的な部分に立ち返り、そしてベーシックな形ですべてのものを体験することによって観賞する心を教えてくれる。この視点はどんなシンプルなものに対しても興味深い点、新たな思想を見い出させ、人生をより豊かなものにしてくれるはずだ。
今回、日本の古都、京都の様々なシーンでわびさびを探訪した。いにしえの日本の哲学をヴィジュアルによってフォーカスしその魅力を紹介する。山城の郊外を含め、いにしえの暮らしを今なお残す5つのロケーションを探訪した。

銀閣寺
銀閣寺は憩いと独りでいる時間のために設計された枯山水庭園で知られる禅寺。 境内へ入ると、天然のアロマと青々と茂った光景に迎えられる。わびさびでは、苔は大事なかなめで、前述の年を経ていく過程を意味している。苔というゆっくりと成長する植物を、新しい観点で興味深く分析し、観賞させてくれる。
銀閣寺での体験は感覚に作用し、残りの枯山水へと誘う。中国西湖の風景を表現している、富士山形の向月台の砂山が目に入ってくるはずだ。
京都市左京区銀閣寺町2Tel: 075-771-5725

En
ここでは、茶道の伝統や精神を知り、茶碗、釜、茶道具を鑑賞するといったことを体験させてくれる。そして、伝統にもとづいたお点前から抹茶を味わうということを通して、このシンプルな茶室の名前が表しているように、一期一会という、背景に流れるわびさびの心を丸ごと体験することが出来る空間となっている。
京都市東山区松原町272Tel: 080-3782-2706

龍安寺
龍安寺はその見事な石庭によって、京都で最も名高い禅寺だ。枯山水庭園の非対称の石の石組みと見事にならされた小石が織りなす静けさは、様々な観方で観賞させてくれる。さらに、禅宗とリンクしたわびさびによって、 龍安寺ではシンプルな自然の中の対象に集中でき、そのことが日常のストレスから解放してくれることだろう。
京都市右京区龍安寺御陵下町13Tel: 075-463-2216

源光庵
緑豊かな森林に囲まれた源光庵は、美しく、隔絶された庭の中にある。 他の禅寺と同様に、源光庵も不要なイライラから訪問者を解放し、心を鎮めることに集中させてくれる。これは禅宗における異なるものへの解釈を束ねるすべての幹となる。それぞれ「迷いの窓」と「悟りの窓」と呼ばれる四角い窓と丸い窓を通して、源光庵は訪問者それぞれが同じ庭園を異なる形で見せてくれる。迷いがなくなれば、角が取れる。このシンプルな構造がわびさびの本質を際立たせ、僕らが日々の暮らしの中でどのように物事に関わっているのかについて考えられるように設計されているのだ。
京都市北区鷹峯北鷹峯町47Tel: 075-492-1858
このガイドは現在発売中の『HYPEBEAST Magazine Issue 8: The Perspective Issue』に掲載されています。