400ドルでスニーカーが売買される国: ブラジルのストリートウェアとスニーカーカルチャー
高価なシューズとテクノロジーによって動かされている地、ブラジルへようこそこれは完全に一般のフットウェアファンやHYPEBEAST読者が切望する内容ではない。 足を踏み入れる前
高価なシューズとテクノロジーによって動かされている地、ブラジルへようこそこれは完全に一般のフットウェアファンやHYPEBEAST読者が切望する内容ではない。
足を踏み入れる前に、自分は教えられた。グアルーリョス国際空港に降り立つわずかな時間の中で、それまでの情報を裏付ける2つの実例を目にしたのだ。それはブラジルで大流行しているという『Nike Shox』と『adidas Springblades』の2足だ。でもなぜ?
今回HYPEBEASTでは急速な成長を続け、目覚ましい発展をしているブラジルに出向き独自のマーケットが確立されようとしている実態を探る。中国の後に迫るブラジルやインドといった国で、どんなブランドが人気となり、どのモデルが支持されるのか。歴史や国民性にも通ずるローカルのスタイルを内情を知る現地のトレンドセッターを訪ねた。
少し前まではきらめきと大きなロゴスへの強い欲望が中国には渦巻いていた。高級ブランドや高級車をステータスのため買い求める中国本土の富裕層をどの都市でも見かけたものだ。勿論こういった風潮がなくなったわけではないが、発展を遂げた大国の一部の富裕層はブランド志向からキャッシュの使い道をヨーロッパへ旅行して、ワイン農場を訪れるなど経験的なルートを選ぶ方へと変化してきている。
だが、ブラジルでは、他の新興国が数年前まで行っていたような消費行動が今でも観られる。しかし、中国と異なるのはブラジルには以前より海外のスポーツウェアブランドがマーケットに参入しており、その関係性に影響を与えていた。中国ではアディダスの“スリーストライプ”やナイキの“スウッシュ”をだけでなく、ローカルブランドがトレンドの頂点に立つことがしばしばある。だからこそローカルスポーツウェアカンパニー〈Li-Ning〉のように大成長を遂げる可能性を秘めている。
一方でブラジルには1995年の莫大なスポンサーシップ以来、Nikeとの長い歴史がある。この20年、サッカーのヒーローたちがスウッシュを着用し、グローバル規模でファンを作り上げた。世界最大のスポーツウェア企業との関係性がある一方、ブラジルにはファッションの中でも新しい役割を果たす潜在性と発展性もあるようだ。
僕らはブラジルにストリートウェアとフットウェアカルチャーのパイオニア、
「Ricardo Nunes (リカルド・ヌーンズ、「SneakersBR」創設者)」と「Cristian Resende (クリスティアン・レセンド、多面的なスペース 「Cartel 011」 とスニーカーショップ「CZO」 創設者) 」とランチした。この二人はそれぞれ豪華なフットウェアのコラボレーションをしていて、ヌーンズはSneakersBRのメディアプラットフォームで、レセンドのエージェンシーはショップとレストランとで、オンライン、オフラインともに世間に認められるようなプラットフォームを築いている。 二人はこれまで自らの手で築いてきたカルチャーについて情熱を持って語ってくれた。
消費者にはそれほどチョイスがない
ブラジルのフットウェアシーンにはそれほどチョイスがない。ざっと見てほとんどがNike、adidas、 Mizuno (これは100年来のブラジルと日本の両国関係の影響だ) 。製品をこの国に持ち込むことは国内の製品に対する保護政策と複雑さを伴うプロセスを通さなければいけない。 Cartel 011のレセンドの話では、〈Carhartt〉や〈Wood Wood〉のような名のあるブランドでいい値段だと必然的に価格でハイファッションにされてしまうという。
ブラジルには学ぶためのプラットフォームがない
ブラジルの中では、あらゆるものがとても新しく、海外のマーケットで広まっているものの多くが知られていない。SneakersBRのようなプラットフォームは、メディアとしてのプラットフォームの第一波で、『Vogue』、『Elle』、『GQ』のような世界的なタイトルに次いで、ファッションとカルチャーへさらなる視点を提供することを期待されている。スニーカーに強い関心があり、英語が読めるようなジェネレーションでも、英語主体のマーケットにつながっていない若いブラジル人たちもいて、ただ購買のための情報だけにつながっている場合もある。マーケットの一部では、『Air Force 1』と『Air Max 1』の違いがわからない人もいるだろうし、ポルトガル語で彼らが学ぶためのプラットフォームは十分ではないのが現状だ。
主流なマーケットはShox、Springblades、そしてわかりやすいテクノロジーを好む
ブラジルは富が高級ブランドの時計や自動車、そしてシューズという形で表現するというような過渡期にある。人気のショッピングエリアであるオスカーフレイレ通りをのぞいてみると、“わかりやすいテクノロジー(vis-tech)” のフットウェアを着用していた。adidasの『Springblade (かつてのBounceテクノロジー)』、Mizunoの『Wave』、『Nike Air Max 360s』そして『Nike Shoxs』をよく目にする。「Vince Carter」が一世を風靡した時代にポピュラーだったシューズがブラジルではNikeの売り上げに貢献している。。
分割払いでスニーカーを購入する
ブラジルには新しいスニーカーに一足あたり400米ドル以上を喜んで支払う層が増加している。この値段はローカルの転売屋によるものではなく、公式ディーラーの小売価格だ。それには関税が深く関係している。送料と関税を払っても街中で買うより、海外から買った方が安い。この問題を楽にするために、フットウェアも家や自動車のように分割払いとして扱われるのが当たり前になっている。スニーカーを買うために2ヵ月から12ヵ月まで財布を楽にする分割払いは当たり前になっている。
フットボールとライフスタイルは思っているより譲りがたい
ブラジル人のサッカーへの関心は熱狂的だ。しかし、サッカーの格好をすることは日に日にスタイリッシュとはみなされなくなっている。サッカーとスケートボードが若者にとってスタイリッシュで多大な影響をあたえる文化であってもファッションやライフスタイルとはまるで世界が違うかのようだ。ワールドカップを前にNike SBとブラジルサッカー連盟からリリースされたモデルがその事実を裏付ける形となったが、やはり2つの世界はまだまだ離れているようだった。
フNike Tiempo ’94 は流行らなかった
『Tiempo ‘94 』はサッカーとライフスタイルのクロスオーバーするモデルとして日本では高い人気を誇るモデルだ。しかしこのモデルがブラジルに最初に上陸したとき、ティーン世代やより若い子どもたちは両手を広げて歓迎することはなかった。ブラジルでは子どもたちはピッチのヒーローたちを見習う。結果として、子どもたちの多くはフラットソールを履いている。シューズは親や子どもにとって、お金をかけられる能力によって良いオプションになる一方で、他方では、Tiempo ‘94はファッションの観点から言って敬遠されるモデルだったのだ。
サーフの終焉
ブラジルの広大な海岸線とサーフィンとのディープなつながりは、ここでサーフファッションのマーケットが作り上げられていることを意味している。しかし、ここ何年かの、クオリティやデザインではなく、量に注目するという誤った事業方針がマーケットに穴を開けてしまった。 海外では多くのブランドがドルを追い続けようと洗練さの欠けた、よりライフスタイルとしてのサーフへというアプローチを受け入れている。注目に値する変化の一つは、先行的なNike SBがサーフショップでどれだけ優勢に見えてきたかということだった。サーフショップが成長し損ねた中で、今では事実上、すべてのNike SBは成功を謳歌しているスケートショップに移っているということだ。