イスタンブール発 Les Benjamins が主催するトルコと日本の外交100周年を祝したスペシャルイベントを現地レポート
国内外から多数のゲストを招聘した2日間のイベントには、野村訓市率いるMild Bunchやフューチュラも参加
〈Les Benjamins(レ ベンジャミンズ)〉— 日本ではまだそこまで馴染みがないかもしれないが、ベンジ(Benji)ことビーヤミン・エイディン(Bünyamin Aydin)によって2011年に設立されたトルコ・インスタンブールを代表するファッションブランドだ。これまでに、ミラノやパリのファッションウィーク参加、「東京2020 夏季オリンピック」でのトルコ代表のユニフォームデザイン、ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)や〈HUGO(ヒューゴ)〉〈PUMA(プーマ)〉らをパートナーに迎えたコラボレーションなどを実施している。
トルコが親日国家というのは一般的に広く知られているだろう。両国は2024年に外交関係樹立100周年を迎えたが、その関係は1890年に起きたトルコ軍艦エルトゥールル号の沈没事故まで遡る。乗務員587名の犠牲者を出したが、島民の救助活動によって69人が生存。生存者は日本の軍艦でイスタンブールまで送り届けられた。この悲劇が日本とトルコの友好の礎と言われている。
ファウンダーのベンジも2022年を境にたびたび来日(筆者が彼らに出会ったのも東京だ)。そんな〈Les Benjamins〉が、トルコと日本の長きにわたる友情を祝したスペシャルイベント “Les Benjamins 1st Craft Week”を、去る9月14日と15日(現地時間)にインタンブールで開催。この“Les Benjamins 1st Craft Week”は、日本とトルコ両国の職人にスポットライトを当て、『Soho House Istanbul』と〈Les Benjamins〉の旗艦店を中心に開催された2日間のプログラム。トークセッション、ワークショップ、エキシビションを中心に構成されている。日本からは、〈Nike(ナイキ)〉などのコラボレーションでも知られる藍師・染師 Buaisou、ハンドレタリングのグラフィックアーティスト 山木真、京都祗園の老舗履物匠『祇園ない藤』の内藤誠治、京都の西陣織の帯屋『織楽浅野』の浅野裕樹、手作り茶筒の老舗『開化堂』の八木隆裕、ばら作家・國枝啓司によるオリジナル品種の“わばら”を展開する農園『Rose Farm KEIJI』、線香専門店『サンガインセンス』、京都の『堤淺吉漆店』の堤卓也らが参加。いずれもベンジが日本での旅を通じて交流を深めたメンバーだ。初日は、『Soho House Istanbul』の地下シネマにて、ベンジと在イスタンブール総領事・笠原謙一のスピーチからスタート。両者は、2021年の「東京2020 オリンピック」から交流を深めていったという。挨拶が終わると、今回の企画をまとめた約25分の映像作品『East Now』を上映。本作には、ベンジの日本に対する想いやコラボレーターである日本とトルコの職人たちのインタビューが収録されている(気になる方は、以下のプレーヤーからご視聴を)。
午前中のプログラムを終えると、ラグジュアリーブランドの路面店が立ち並ぶニシャンタシュ地区に位置する〈Les Benjamins〉旗艦店へ移動。先述した職人たちと共同で制作した作品の展示や、“Les Benjamins 1st Craft Week”のスペシャルアパレルが販売など、2フロアを用いて、多くのコンテンツが展開された。本イベントには、トルコ系アメリカ人アーティストのフューチュラ(Futura)もメインゲストの1人として参加。店内のショーケースには彼のデザインがフィーチャーされたイズニック陶器のプレートとカップが並べられた。
日中のプログラムを終えると、ミシュラン1つ星を獲得しているレストラン『Arkestra』にて、東京・乃木坂の懐石料理店『山﨑』のシェフ・山崎志朗とのコラボレーションディナーが開催。あいにく雨が降ったり止んだりの天気だったが、食事後は、同レストランの中庭にて、トルコのサイケデリックロックバンド Baba Zulaが生演奏のパフォーマンス。そして、初日の締めくくりとして、野村訓市率いるMild Bunch Soundsystemがアフターパーティーを取り仕切る。東京を中心に夜な夜なイベントを実施しているMild Bunchクルーだが、トルコ遠征のメンバーは、野村氏に加えて、EZ、フレイザー・クック(Fraser Cooke)、Gimmie Fiveのマイケル・コッペルマン(Michael Kopelman)、エリック・ダンカン(Eric Duncan)、源馬大輔、マックス・マッキー(Max Mackee)という顔ぶれ。東京のパーティー番長の実力を発揮し、豪華バックトゥバックで、インスタブールの夜を大いに盛り上げた。
2日目は『Soho House Istanbul』と〈Les Benjamins〉旗艦店の双方で、Buaisouによる藍染め体験をはじめとするワークショップや各ゲストのトークセッションを実施。先述のマックス氏も、自身の主催するプレミアムな自然体験を提供するプラットフォーム『Kammui』の紹介を交えながら、両足院の副住職である伊藤東凌と対談を行い、2日間にわたるプログラムに幕を下ろした。
ベンジは今回の“Les Benjamins 1st Craft Week”について次のように語る。「日本で職人たちに会ったとき、私は彼らをトルコに連れてきて、ここイスタンブールのコミュニティに日本の職人技を紹介したいと思いました。2024年、私たちは友好100周年を迎えます。次の100年をどのように祝い、次の世代にインスピレーションを与えることができるでしょうか?ファッションには、このような時代に人々の間に文化の架け橋を築く大きな責任と機会がある」
“Les Benjamins 1st Craft Week”は、日本とトルコの友好関係を新たなステージへ押し上げる歴史的な1歩となったに違いない。