MADSAKI が野村訓市率いる MILD BUNCH を題材にした個展 “This Used to Be My Playground” を開催
MILD BUNCHのパーティでプレーした故ヴァージル・アブローも描かれている







MADSAKI(マッドサキ)の個展 “This Used to Be My Playground”が、東京・麻布の『Kaikai Kiki Gallery(カイカイキキギャラリー)』にて11月24日(金)から開催される。今回のシリーズで描かれているのは、彼の盟友・野村訓市をはじめとするMILD BUNCH(マイルド・バンチ)のクルーだ。
MADSAKIは6歳から30歳までをアメリカで過ごし、日本に戻ったあとは、自身の家族以外には居場所を見つけられず、東京をホームタウンだとは思えなかったという。しかし、数年前にMILD BUNCHに出会い、初めて自分を受け入れてくれる場所・仲間を見つけたことで、ようやく東京にも彼にとっての居場所ができた。そして、DJブースの内側から、自身や友人たちのためのプライベートな記録写真を撮り続けてきたMADSAKI。しかし、MILD BUNCHのパーティが頻繁に行われてきた渋谷のクラブ『CONTACT』は都市開発により2022年に取り壊されてしまった。“This Used to Be My Playground” では、そのような切なくも儚い背景と共に、孤独を抱えた作家が仲間と共に過ごしたかけがいのない居場所の記憶が描かれている。
今回の個展開催にあたって、野村訓市は次のようにコメントを寄せた。
僕らがパーティをする理由。なんだろうな、楽しかったことは覚えているのだけど、明け方、酒が残った頭はポンコツで、あっという間にその記憶は消えて、翌日、あれはなんだったんだ?とまた同じことを繰り返してきた。けれど、うなるベース、体を前へ前へと突き動かすドラム、心を刻むようなカッティングギター、流れるホーンに呪文のように聞こえるボーカル。それはディスコだったり、テクノだったり、ダンスミュージックがあったのは間違いない。
ワアワアと聞こえる歓声や、ふらつく酔っ払い、大きくなった話し声、そこら中で必要以上に繰り広げられるハグ。夜のクラブでの感覚を説明するのは難しいけれど、それは子供の頃の公園に似ている。砂場で知り合った、隣街の子と一瞬で仲良くなり遊んだり、駆けずり回った頃の。そういえば夕方の5時には夕焼け小焼けのチャイムがなり、家に帰れと諭されたけれど、クラブが終わるのも明け方の5時だっけ。賑やかな夜は夢のように消え去り、明るくなった空を見上げ、残された僕らは肩を組んで、カラスが群れる道玄坂を下って歩いた。
僕らがそんなたくさんの夜を過ごした渋谷の道玄坂はこの一年ですっかりと変わった。工事現場の仮囲いに囲まれたかつての遊び場の横を通る度、なんだか悲しい気持ちになる。あれは現実だっただろうか?僕らの夜の公園はもう影も形もない。そんな今はないクラブでの夜をMADSAKIが絵にした。忘れてしまっていた瞬間がスプレー缶から噴射されたペイントの先にキラキラと輝いて見えた。僕はそれを懐かしく、切ない気持ちで眺めたけれど、それはただ昔のパーティを思い出したからなわけじゃなかった。
僕らは10代で夜遊びを知り、最新の音を求めて20代に世界を旅し、30代で、出会った仲間とパーティをし始めた。もうポンコツでワイルドでもないし、格好つけるより、笑って挨拶、パーティをマイルドバンチと名付けた。
そのパーティで回したDJは全員マイルドバンチ、世界中の仲間が東京に来た時には一緒に夜を過ごしてきた。自分たちを育ててくれたパーティを下の世代にも繋げたい。40代になってからのパーティはそう思ってやってきた。
緩くて、来たい人が誰でもこれて、自分の居場所だと思える空間。いろんな音楽が鳴っていて、そこで自分の好きな音を見つけれる場所。友達だけじゃなく、仕事をする人たちともほとんど酒を飲みながら踊る場所で出会った。昼間の仮面を脱いで素の自分に戻った人たちと、1人で行ったクラブで出会い、受け入れられたという恍惚に酔いしれながら、踊る。光輝くダンスフロアでどれだけの出会いがあり、救われたかわからない。
今がどん底でも、孤独でも、人生の中で誰もが一度はそんな気持ちになったことがあると思う。受け入れられた、自分の居場所が一瞬でもあったという記憶が。僕にとってはそれがたまたま夜、酒と踊りと共にあったのだけれど、MADSAKIの絵には、そんな瞬間を思い出させてくれる何かがある。だから渋谷の夜を知らなくても、クラブなんて行ったことがないという人も歳も国も関係なく、この絵たちは何かを思い出させてくれると思う
MADSAKI個展 This Used to Be My Playground
会場:Kaikai Kiki Gallery
住所:〒106-0046 東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1F
会期:11月24日(金)〜12月14日(木) ※閉廊日:日曜・月曜・祝日
時間:11:00 – 19:00