読売ジャイアンツは日本のファッション界におけるヤンキースになれるか?
〈BlackEyePatch〉〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.〉とのコラボも記憶に新しい読売ジャイアンツ
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〈BlackEyePatch(ブラックアイパッチ)〉とのコラボレーションも記憶に新しいプロ野球球団・読売ジャイアンツ。近年は〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)〉とのコラボプロダクトを2度発表するなど、伝統ある球団にファッションの色が徐々につき始めている。
ニューヨーク・ヤンキースをはじめとするMLB球団のキャップがファッションアイテムに昇華されて久しいが、日本球団のプロダクトはそうはいかないというか、ダサいと思われる風潮があるのは否定できないだろう。原因のひとつとして、これまで〈New Era®(ニューエラ)〉製ではなかった点が挙げられると思うが、読売ジャイアンツは2020年に〈New Era®〉との初となるコラボを実施し、同年12月には2年間のオフィシャルキャップ契約を締結。その後、両者は先述の2ブランドに加えて〈GOD SELECTION XXX(ゴッド セレクション トリプルエックス)〉や〈WHIZ LIMITED(ウィズ リミテッド)〉との3者間コラボを実施するなど、精力的にファッションのパイを取りに行っている(ように見える)。
ヒップホップカルチャーの台頭によって、MLBのベースボールキャップやNBAのバスケットボールジャージなどのスポーツアイテムは、ファッションシーンにおいて完全に認知されている。日本も同じ傾向だが、サッカーの日本代表を除いて日本のチームを着ている人は皆無と言ってもいいだろう。そもそも日本球団はMLBからチーム名やデザインを拝借しているなど、理由を考えればさまざまな要因が頭に浮かぶが、執筆し始めながら思ったのが、単に「ダサいから」だけでは片付けられない、根が深い話のような気がしてきた……。それでも1つ言及すると、海外への(盲目的な)憧れという点は大きいように感じる。しかし、欧米でも逆転というか同様の現象が起きていて、故 Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)やKim Jones(キム・ジョーンズ)ら現在のファッションのリードする(してきた)デザイナー/クリエイターは、海外への憧れを追いかけ、ある意味追い越してしまった日本のファッションシーンに大きく影響されている。
個人的な話になるが、自分がいわゆるBボーイファッションをしていた頃、御多分に洩れずアメリカかぶれだったが、野球もしないし、応援もしていないヤンキースのキャップを被ることに抵抗があり、好きだったバスケチームのニューヨーク・ニックスのキャップを被っていたことを急に思い出した。ここまでヤンキースがファッション的に一般化された現在だったら、全く抵抗はないと思うが、自分の中でストーリーがあるものを着用する方が腑に落ちるし、着させられてる感はなんとなく滲み出してしまうものである。
話がかな〜り脱線してしまったため、本題に戻そう。なぜ本稿を書き始めたかというと、どういった経緯かは知る由もないが、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)がコンサートの移動中に読売ジャイアンツのキャップを着用する画像が『Instagram(インスタグラム)』にアップされていたからである。Justinが被ったところで、カッコ良く見えるか見えないかは人それぞれだと思うが、今まさにファッション層にアピールしている読売ジャイアンツにとっては、かなりの追い風だろう。ちなみに世界的に高い評価を得るファッションキュレーターの小木“Poggy”基史も読売ジャイアンツのキャップに注目している(下の動画参照)。正直、読売ジャイアンツのプロダクトが、ヤンキース化されるまでには果てしなく険しい道のりだと思うが、上述したコラボのような取り組みは、我々が自国のカルチャーに目を向ける良い機会にもなっているし、Justinのようなアーティストがきっかけとなり、バズらないとも限らない。再び脱線するが『SLAM DUNK』に登場するバスケ部のユニフォームは、NBAチームのデザインを元にしているのは一目瞭然なわけで、それでも(むしろそれであったからこそ?)本場アメリカでも人気があり、連載当時は想像もつかないAir Jordan(エアジョーダン)とのオフィシャルコラボまで実現している。話があちらこちらに向かってしまうので、一旦この辺りで切り上げて……今後の読売ジャイアンツの施策にも注目していきたい。