VERDY に “VERDY HARAJUKU DAY” の直前インタビューを敢行
開催理由、裏テーマ、次回開催で計画していることなど、ストリートの新たな旗手が“VERDY HARAJUKU DAY”に込めた想いを初告白
VERDY(ヴェルディ)が10月13日(日)と14日(月・祝)に開催する“VERDY HARAJUKU DAY”は、ストリートの枠を飛び越え、このカルチャーと密接に関係する世界中の人々が動向を注視している。原宿という大きな街をジャックをし、いたるところでアイテムのリリースが行われ、その参加ブランドは大小、新旧あわせて30を超える。
これまで神出鬼没にプロジェクトを実行してきたVERDYにとって、“VERDY HARAJUKU DAY”は間違いなく、過去最大のプロジェクトだ。そこで、この前例のないイベント開催に先駆けて、『HYPEBEAST(ハイプビースト)』はVERDYに直撃インタビューを敢行。開催理由を聞き出す延長線上、彼の口からは裏テーマやたくさんの商品をリリースする理由など、これまでオモテに出ることのなかったストーリーが多数語られた。
「ストリートカルチャーにおける“ゲーム”の流れを変える歴史的な日になってくれたら」、そう話す時代の旗手が“VERDY HARAJUKU DAY”に込めた真の想いを知れば、この2日間を一層濃密に過ごせるに違いない。
はじめに、“VERDY HARAJUKU DAY”の開催理由を教えてください。
〈UNDERCOVER(アンダーカバー)〉や〈sacai(サカイ)〉が参加していた時を除くと、東京のファッションウィークはストリート界隈の人たちが何も知らない間に終わっている感じがしました。僕は最近「HYPEFEST」をはじめとする大型のオフラインイベントやファッションウィークにも足を運ぶようになったのですが、主要都市はその熱量がストリートにも派生していて、その盛り上がりで相乗効果が起きています。日本には年中色々な人が訪れ、ポップアップ開催はもちろん、ショップもたくさん存在します。だから、そういう出来事が日本でも一緒のタイミングで起これば、もっと面白くなると日々思っていました。しかし、現実は違う。だから「ないのであれば自分がやろう」と思い、“VERDY HARAJUKU DAY”と題して、このイベントを開催するに至りました。
ただ、幕張など海沿いの広いスペースを借りて、そこに洋服を買いに来てもらうことには違和感があって……。僕が思う東京の良いところは、歩いているだけで色々なショップに辿り着けて、世界中のブランドが揃っており、自由に買い物ができるところ。遊ぶ場合は、色々なパーティーに顔を出してハシゴをしながら、最終的にはクラブに行き着き、一連の流れの中で色々な人に会います。だから、その特徴を活かした内容にするためには、原宿での開催が最善だったんです。
少し話しは変わりますが、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト / 音楽や映画祭などを複合したテキサスの大規模フェス)は、タイムテーブルが敷かれたうえで、街中で色々なことが起こりますよね。“VERDY HARAJUKU DAY”は、SXSWを含め、音楽のサーキットイベントにヒントを受けています。だから、フライヤーにも参加者のロゴを使うのではなく、僕がハンドドローイングしたテキストが使用されているんです。
“VERDY HARAJUKU DAY”は、いつ頃から準備を進めてきたのでしょうか?
アイディアが浮かんだのは、去年の年末です。でも、前例のない企画だから、どこから手をつけていいのか、最初は全くわかりませんでしたね(笑)。本格的に動き出したのは、半年前ぐらいでしょうか。過去にサンプルのないイベントなので、各ブランドにはメールや電話でオファーするのではなく、直接会って説明しに行きました。実際にLAにも赴き、僕がプレゼンテーションをして、それに共感してくれたブランドが参加してくれています。今回のラインアップには、全く僕と関係のないブランドはありません。例えば、〈Beats by Dr.Dre(ビーツ・バイ・ドクター・ドレ)〉のような大企業も、社内に友人がいるからパートナーになってもらっています。
〈CARROT BOY〉は、その名前から推測するにAnwar Carrots(アンワー・キャロッツ)が関係しているレーベルだと思うのですが、実際は〈Carrots by Anwar Carrots 〉とどう住み分けされているのでしょうか?
4年前に初めてAnwarとコラボレーションした頃の僕は、全く仕事がありませんでした。でも、彼がコラボレーションしてくれたことをきっかけに色々な物事がスタートしたといっても過言ではなく、僕自身、Anwarにはとても感謝して、このコラボにはすごく思い入れがあります。その際に、僕はCARROT BOYというキャラクターを作りました。そこで、今回の取り組みをきっかけに、このキャラクターをアイコンにした僕とAnwerのプロジェクトを始めようということになって、この〈CARROT BOY〉は僕ら2人の新レーベルになります。
これだけ多くのブランドが参加していると、販売方法も気になります。
なるべく販売時間をずらすようにはしていますけど、並びができた場合は全部は行けないのではないでしょうか。でも、これもフェスに近い感覚です。「メインステージも行きたいけど、離れたステージでライブをするあのアーティストも見ておきたい」という感覚になるのと同じですね。この日に原宿に来てくれる人たちが各々のスケジュールで楽しんでもらえればと思っています。
あと、ブランドの割り振りですが、基本的に販売先になるショップに取り扱いがある場合は、そこでリリースするように組み立ててあります。でも、原宿に取り扱いがない店舗や立ち上げまもない若いブランドもたくさんあるので、彼らは『Gallery COMMON』の“VERDY HARAJUKU DAY”のオフィシャルショップで販売をすることになります。また、〈Beats by Dr.Dre〉にはリスニングステーションを展開してもらうのですが、tokyoitamin(トウキョウビタミン)、CreativeDrugStore(クリエイティブドラッグストア)、SHABBAAAAA(シャバ)をはじめとする音楽系コレクティブにはプレイリストを作成してもらっているので、そこで限定アイテムを販売することになっています。
〈Beats by Dr.Dre〉のリスニングステーションのようなファッション以外のコンテンツは他にも用意されていますか?
10月13日(日)に〈Beats by Dr.Dre〉プレゼンツのアフターパーティーを『SOUND MUSIUM VISION』で開催します。また、アート系のトピックスとして、『ラフォーレ原宿』前に「AllRightsReserved」に制作してもらった巨大フィギュアの展示するほか、KYNEくんと『TARGET GARRELY』で、村上(隆)さんと『BOOKMARC』で合同展を開催します。アートは展示のみで販売はありませんが、『BOOKMARC』では僕のデザインアーカイブを収録したZINEを販売予定なので、そちらも楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
ブランドやコレクティブのラインアップで意識したことはありますか? 個人的には新旧、大小問わず、バランスが良いのに見たことない並びがすごく新鮮に感じます。
〈Nike SB(ナイキ SB〉や〈Beats by Dr.Dre〉といったビッグブランドと新鋭のストリートレーベルに優劣はありません。始めたばかりでも頑張っているクリエイターはたくさんいるし、僕はそういう人たちと一緒に何かムーブメントを起こせたらと思っています。もちろん、“VERDY HARAJUKU DAY”という大枠はありますが、このイベントにあわせて自分で会場を借りてポップアップを開催することも大歓迎です。
今ではVERDYさんの第二の故郷といっても過言ではない、LAブランドも大勢参加されますね。
ファッションの仕事がしたいと思って東京に引っ越してきた時、僕はその業界の方々と全く関わりがありませんでした。偶然出会うこともなく、どうすればファッションの仕事ができるか、何年も悩みました。でも、Reginald (レジナルド・シルヴェスター Ⅱ)と知り合ったことをきっかけに、Paulo(パウロ・ケイル)をはじめ、LAにたくさんの友達ができて、Anwerから仕事のオファーを受け、現地に行く機会が次第に増えていきました。Pauloの仕事を見て、ポップアップやパーティーに出向き、色々な景色を見たことで自分の考えが変わったと思っています。「小さいことは気にしなくていい。ファッション業界の人間じゃなくてもTシャツは作れる」、そうして自分のやりたいことをやろうと決意した場所がLAだから、LAには特別な思い入れがあります。
今回、個人的な裏テーマとして「LAのブランドをたくさん持ち込むこと」と「日本の良いブランドを海外の人にも知ってもらいたい」というものがあります。僕のInstagramのフォロワーは半分が日本人で、もう半分が海外の人。“VERDY HARAJUKU DAY”では色々なプロダクトを作っているから、中には「知らないから見てみよう」と思うブランドも必ずあるはずです。あと、“VERDY HARAJUKU DAY”は毎年やりたいイベントだから、すごく誘いたいけど、あえて誘わなかったブランドもたくさんありますね。
“VERDY HARAJUKU DAY”はもちろんのこと、〈Girls Don’t Cry(ガールズドントクライ)〉でオンラインストアをオープンされましたね。今までオフラインの販売にこだわっていましたが、なぜこのタイミングでウェブでの販売に踏み切ったのでしょうか?
実は最近、量的な意味で「アイテムをたくさんリリースする」ということを意識しているんです。今、市場には偽物がすごく多くて、それは僕だけではなく、色々な人の悩みでもあります。活動初期はオリジナルのタグがなく、それを「初期のデザイン」と言い張って偽物を販売したり、過去に『BEAMS T』で発売したものもリブやプリントのサイズが違うものが出回っているのを確認済みです。でも、それをわからずに買っている人が大勢いることも事実で、僕自身、それにはとても心を痛めています。僕は〈Girls Don’t Cry〉をブランドではなく、アートプロジェクトとして立ち上げたから、商品をたくさん販売することに違和感がありました。でも、定価よりも高いお金を払って偽物を掴まされ、それに気づかない人がたくさんいるのであれば、僕自身が供給を増やすべきだと考え方が変わったんです。
でも、たくさん作ることはプラスになることの方が多いですね。例えば、LAのビルボードを使ったり、ストリートをポスタージャックしたり、ルックブックのクオリティを上げたりと、自分がやりたかったことを実現できるようになりました。
少し話しが前後してしまいますが、“VERDY HARAJUKU DAY”は毎年開催したいとおっしゃっていました。次回以降でやりたいコンテンツはすでに思い浮かんでいるのでしょうか?
今年はできなかったけど、デザインの公募をやりたいですね。カタチはわかりませんが、Instagramにグラフィックを投稿するのではなく、“VERDY HARAJUKU DAY”のオフィシャルショップに応募専用のボックスを設けて、2日目の夜に海外から来たデザイナーたちとみんなで討論をし、グランプリに輝いた人のグラフィックを翌年のオフィシャツTシャツに採用するとか、一緒にコラボレーションするとか、そういったチャンスを創出できたらと思っています。
僕も昔、『Ollie』で開催されていた〈BAPE®️(ベイプ)〉のコンテストに応募したことがあります。最近はSNSがあるから誰にでもチャンスがあるように見えるけど、実際は使われすぎていて、そういったチャンスは昔よりも少なくなっているような気がして。
兎にも角にも、僕はストリートカルチャーにおける“ゲーム”の流れを変えたいと思っています。世界でも前例がなく、はじめての試みだから、僕自身もワクワクしています。台風で初日が中止となってしまいましたが、あとの2日間が将来、歴史的な日になってくれたら嬉しいですね。