裏原全盛期の1994年、〈NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)〉はアクセルを開けて走り出した。
それから四半世紀が経過した今でも、滝沢伸介と彼の率いるチームは、東京オリジンのプライドを胸にクリエイションを続けている。

〈NEIGHBORHOOD〉は世界的に見ても稀有な、実に“メンズブランドらしいメンズブランド”である。ミリタリーやワークなど、メンズファッションを構築するさまざまなデザイン言語をひとつにまとめ、機能性とのバランスを維持しながらスタイルを提示し、そこにインセンス、アウトドア、植物という趣味性の高い要素を盛り込む。硬派、無骨といった彼らを形容する言葉はあくまで先入観に由来するものであり、彼らは男性のライフスタイルそのものをコレクションに反映させているのだ。

25周年を目前に控えた昨年、AT TOKYOへ参加した滝沢伸介は「これまでのNEIGHBORHOODを壊したい」と語っていた。それから約1年半が経過したイマ、同氏は自身の分身のようなブランドをどのように俯瞰しているのだろうか。これまでの軌跡はもちろん、デザイナー兼社長という立場の難しさ、現代のクリエイション、そして今後の展望まで、過去・現在・未来に視点を置き換えながら生の声を聞いてみた。

創業25周年、おめでとうございます。インディペンデントな存在であり続け、四半世紀という節目の年を迎えられましたが、どのようなお気持ちですか?

特に達成感はないですね(笑)。「25周年、やりきった」という実感が湧いているわけではなく、まだ過程だと思っています。振り返ってみると、確かに途中まではインディペンデントであることの意味や誇りがありました。でも、現在はインディペンデントということに確固たるこだわりがあるわけでもないんです。

滝沢さんはある日、AppleのMackintoshに出会って、洋服への道が開けたと聞いたことがあります。

洋服は専門学校に通うぐらい元々好きでしたが、実はその当時、何かを縫ったりすることには興味がなくて。グラフィックデザインをいかに自分の思い通りに表現できるかを考えることが楽しくて仕方なく、そんなところにAppleのコンピューターが出現したんです。フォントを曲げたりできるのは画期的なことで、素直に「すげぇ……」と感動しました。

そこから文字組みをしたり、自分の好きな写真を貼り付けたり、絵を描いたりすることが新しい表現方法になりました。となると、次に考えるのが、それをシルクスクリーンでTシャツにプリントすること。それが僕のデザイナーへの道の第一歩だった気がします。Mackintoshは、神様のような存在でしたよ。本当に毎晩、僕かスケシン(Sk8ightThing)の事務所にみんなで集まって、シルク版を作り、その場で刷って、それが遊びでしたね。

Mackintoshに出会う以前には、イギリスにも行かれていましたよね?渡英のきっかけを教えてください。

僕がイギリスを訪れたのは、19歳の頃です。Vivienne WestwoodやWorlds Endを現地で、自分の目で見てみたくて。僕にとって、当時のロンドンはトレンドファッションの頂点でした。現地では、初来日の時に交流があったWild bunchの家にステイさせてもらって、夜な夜なSoul II Soulのクラブをはじめ、色々なところに連れ回してもらったり。クラブには当時のファッションの旬な人が集まっていて、すごく面白い時代でした。

今もそうですが、ロンドンで生活する人たちはライフスタイルにカルチャーが染み付いているように感じます。当時でいうと、The Faceやi-DのスタイリングをNellee Hooperがやっていたりする時代で、Vivienne WestwoodやWorlds Endの洋服にCHANELのTシャツをあわせてしまうロンドンならではのミックス感が面白く、インスピレーションをもらいましたね。

音楽はもちろんですが、NEIGHBORHOODを語るうえではモーターサイクルの背景も欠かせないエッセンスかと思います。

音楽と密接に生きてきた時代のあと、日本では渋カジやアメカジの文化がありました。入り口は、アメカジのスタイルで電車に乗るのは格好悪いという感覚からでしたよ(笑)。モーターサイクルについては、アメリカからの影響ですね。もちろん、それ以前にはモッズやロッカーズに影響を受けた時代もありましたけど、今では何周もして、どの国のどのカルチャーも、二輪だけでなく四輪も僕の背景になりました。

バイクの文化を掘り下げていくと、趣味でモーターサイクルが好きな人と、モーターサイクルクラブという人たちに棲み分けができます。モーターサイクルクラブ=アメリカ、海外だとギャングと位置付けられていますが、彼らのヒストリーやレギュレーションにはとても影響を受けましたね。

2019年秋冬コレクションにも登場する“MY WAY”のグラフィックや、千駄ヶ谷交差点に掲げた「THEY LIVE WE RIDE」のビルボードもモーターサイクルカルチャーに由来するのでしょうか?

そうですね。「RIDE」は僕たちが表現すると「バイクや車に乗る」意味として捉えられるかもしれませんが、すごく大きな意味でいうと「生きる」に置き換えることができ、「これが俺たちの生き方」みたいなメッセージが込められています。

滝沢さんのルーツとなるイギリスの音楽的カルチャーとアメリカのモーターサイクルカルチャーは、全くの別物だと思うのですが、その2つをバランスよく、1つのコレクションに同居させるうえで意識していることはありますか?

おっしゃるとおり、この2つは全くの別物ですね。でも、コレクションは僕の見たもの、経験したもの、その中で得たものとかが反映されていて、同居というと当時のロンドンから学んだミックス感覚に近いかもしれないです。少し前まで、僕はガチガチにセオリーに縛られていて、それが正しいと思っていた時期もありました。でも、最近はそのセオリーを崩していく楽しさを見出して、今はそれが楽しいですね。

滝沢さんはデザイナーでありながら、社長業もされていますが、デザインをしながらビジネスについて考え、ビジネスをしながらデザインを考えるのは、とても骨の折れる仕事かと思います。

色々なことを考えますよ、本当に(笑)。ただ、それを意識しはじめたのは、ブランド設立からしばらく経ってのこと。最初は規模も小さく、自分たちが楽しみながら、それなりに食べていける収入があればいいという感覚でした。でも、この会社で働いてくれる社員にも生活があるし、そうも言ってられなくなってきて。クリエイションと経営の両立については、すごく悩んだ時期がありました。そこでいろいろな意識改革をして。

こと経営については、MAJOR FORCEでの経験が今でも役に立っていると感じます。一通り経験して、ビジネスのノウハウもグラフィックの技術も学ぶことができましたから。今はバランスを取りながらやっているけど、骨も折れるし、精神的にもタフだし、やっぱりこの2つを両立するのは決して簡単なことではありません。自分でもよくやっているなと(笑)。

「LOCAL SUPPORT」という社訓を掲げ、しばらくは原宿一筋を貫いていましたが、旗艦店オープンから13年を経て渋谷に進出し、今ではHOODSを含めると全国各地に店舗があります。その当時からオンラインファーストの流れもあったと思うのですが、そのなかであえて実店舗を増やしていったことには何か意図があったのでしょうか?

クリエイションってすごくアートに近いものだと思い込みがちですよね?でも、僕はアートではないと思っています。海外ではよく使われるワード、例えばスニーカーシーンなどで聞いたことがある人も多いかと思うのですが、ポジティブに言うと「GAME」です。クリエイションもそうだし、コラボレーションもそうだけど、どういうことをやればシーンに喜んでもらえるかをポジティブに考えること、それは「GAME」に近い感覚と僕は考えています。何かを発表する際、意外性や面白さは最優先に考えるようにしています。

ブランドを長く継続するうえでは、若い層へのリーチも欠かせないはずです。俗に言うユース世代とのコミュニケーションで大切にしていることはありますか?

昔からですが、あまり年上と付き合わない。感覚に年齢は関係ないと思うんです。そういった意味では、若い人の発言や彼らから発信される情報に耳を傾けることはすごく日頃から大事にしているかもしれない。最近は自分の子供から情報をもらったりもしますよ。最初は「何を言ってるんだ」と思うけど、後に世間の一大トレンドになることもしばしばで、すごく面白いし、学びになりますね。

少し話しは変わりますが、AT TOKYOでAtari Teenage Riot(ATR)のライブパフォーマンスを主催されましたが、あそこには「NEIGHBORHOODを破壊する」というメッセージが込められていたと記憶しています。そこから何か心境の変化はありましたか?

ちょうどあのタイミングで、今までのNEIGHBORHOODの歴史を一度壊そうと思いはじめて。その方がクリエイション的にも面白いものができるという発想で、ATRを呼び、あのようなパフォーマンスをしました。

その破壊するという意識改革を経ての2019年秋冬コレクションは、どのような仕上がりになっていますか?

未だにコレクションのデザインの約半分は僕がやっていて、ブランド創業当初と同様、「ああでもない、こうでもない」とずーっとMacと睨めっこしていますよ(笑)。今季はヴィンテージやクラシックといったこれまでの志向から切り替え、素材やディテールにこだわり、実用性・機能性に凝ったコレクションになったと思っています。

シーズンビジュアルはライブハウスで熱狂する若者を切り取ったようなユースフルな絵作りでしたね。あそこには何か特別なメッセージが背景にあるのでしょうか?

いえ、僕はメッセージ性やテーマがないことこそ、“イマ”なのかなと思っています。まどろっこしいことは、時代性にあっていない印象があって。感覚、ですね。各々が自由にNEIGHBORHOODを感じてもらえればと。

今季はホームページも大幅にリニューアルされましたね。

あれは前からずっとやりたかったことで(笑)。膨大な時間がかかり、運営するうえで最低限の機能は必要で、さまざまなせめぎ合いがありましたが、極力シンプルに、できるだけ無駄を省き、納得のいくものができました。

NEIGHBORHOOD以外にも、最近ではSPECIMEN RESEARCH LABORATORY(SRL)の展開にも注力されている印象を受けます。

SRLは、早くも3シーズン目に突入しました。これまでの道のりは、僕自身もすごく楽しめています。趣味をプロダクトに落とし込むという動きは、僕のクリエイションスタイルのひとつですが、SRLは特に趣味性が高いけど、周囲からの反応の良さを感じています。

Helinoxと継続的にコラボレーションしたり、NEIGHBORHOOD内には趣味性の高いコンテンツがほかにも存在しますが、なぜ植物だけ別軸での展開なのでしょうか?

深い意味はないのですが、ひとつに、僕は植物のファン層を実際に知っている、ということがありますね。ファッションのマーケット内で発表し、試験的に展開していくのも悪くはないですが、SRLで販売しているものは市場でも入手が難しく、そういうことを考慮してNEIGHBORHOODとは分けてライン化しました。

サボテンや多肉植物は、都会的な気がします。広大な土地があれば植物と別の付き合い方ができますが、都市生活にはすごくフィットしているのかなと。

SRLはもちろんですが、そのほかにも今後に向けた展望はあるのでしょうか?

楽しみながらビジネスを続けたいですね。あと、些細なことなのですが、実は着なくなった洋服を公園に持っていって、どこかにポンっと置いてきたりしているんです。ある意味、不法投棄にも見えますが、実際は公園に住んでいる方々がそれを見つけ、着用してくれています。そういうことがあったので、つい最近、代々木公園のサポートTシャツをNEIGHBORHOODで製作しました。それを手渡しで配りにいったりとか、今後はビジネスにはならない“意味のある活動”ができればなと思っています。僕自身、会社でできることは些細なことでしかないと思うので、身の回りをサポートするような活動をしていきたいですね。


Credits
Photographer
Ko Tsuchiya
Designer
Balconia
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