Supreme が2018年春夏コレクションに起用した3名のアーティストの正体とは?

リチャード・エステス、リー・キュノネス、ダニエル・ジョンストン。彼らを何者か知らずして今季の〈Sup〉のアーティストコラボを着るのはお門違い

ファッション 
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アーティストとの絶え間なきコラボレーションは、〈Supreme(シュプリーム)〉のDNAである。グラフィティ界のレジェンド Rammellzee(ラメルジー)やフォトジャーナリストのMartha Cooper(マーサ・クーパー)から、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)の『Unknown Pleasures』を手がけたPeter Saville(ピーター・サヴィル)、『KIDS/キッズ』のディレクターとしてもお馴染みのLarry Clark(ラリー・クラーク)、そしてKAWS(カウズ)まで、王道はもちろんのこと、誰もが予想だにしなかったコアな選出こそ、〈Supreme〉の造詣の深さを証明するものなのだ。

2018年春夏コレクションでは、Richard Estes(リチャード・エステス)、Lee Quinones(リー・キュノネス)、Daniel Johnston(ダニエル・ジョンストン)の3名がコラボアーティストに名を連ねたが、読者のみなさんは彼らの正体をご存知だろうか。本稿では各アーティストの簡単なプロフィールとストリートをご紹介。コラボレーションの“重み”を理解するためにも是非、以下のテキストをきっかけにご自身で彼らのプロフィールを掘り下げてみてほしい。

Richard Estes

Supreme が2018年春夏コレクションに起用した3名のアーティストの正体とは? アーティストとの絶え間なきコラボレーションは、〈Supreme(シュプリーム)〉のDNAである。グラフィティ界のレジェンド Rammellzee(ラメルジー)やフォトジャーナリストのMartha Cooper(マーサ・クーパー)から、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)の『Unknown Pleasures』を手がけたPeter Saville(ピーター・サヴィル)、『KIDS/キッズ』のディレクターとしてもお馴染みのLarry Clark(ラリー・クラーク)、そしてKAWS(カウズ)まで、王道はもちろん誰もが予想だにしなかったコアな選出こそ、〈Supreme〉の造詣の深さを証明するものだ。  2018年春夏コレクションでは、Richard Estes(リチャード・エステス)、Lee Quinones(リー・キュノネス)、Daniel Johnston(ダニエル・ジョンストン)の3名がアーティストコラボに名を連ねたが、読者のみなさんは彼らの正体をご存知だろうか。本稿では各アーティストのプロフィールを紐解いていくので、コラボレーションの“重み”を理解するためにも是非、以下のテキストをチェックしてみてほしい。  Richard Estes  イリノイ州・エバンストン生まれのEstesの作品は一見、本物の写真に見えるほど実にリアルなものばかり。彼は現代的風景を精密且つ克明に再現する“ハイパー・リアリズム”の代表的アーティストであるが、その起源は、Edward Hopper(エドワード・ホッパー)に憧れて偶然参加した「シカゴ美術館附属美術大学」の講義にある。  そこでファインアートを学んだにもかかわらず、彼のキャリアはそれとは全く別世界の広告業界からスタート。しかし、「私はここでイラストレーションを制作するために、写真を採用しはじめました。他の人々がやっていることや、他のイラストレーターたちを満遍なく観察したのですが、誰もモデルとなるものを目の前に起き、繊細なドローイングをしてなかったんです」と自身のスタイルを確立した経緯を語る。  1960年代の彼のペイントワークは、ニューヨークの街が中心だった。しかし、その後は“店頭”にこだわり続けたEstes。2014年の『ARTBOOK』のインタビューで、彼は「これはただの、私の視覚的興味です。そこに精神分析的な理由は存在しません。私は特定の意味を暗に示すイメージから何かを抽出するのではなく、ただ見たままに表現しているだけですから」と語り、自身が崇高なことをしてないということを淡々と語っていた。  今季の〈Supreme〉は、『Weiner Drugstore』の正面を描いた1970年制作の作品“DRUGS”をフィーチャー。静物画家が被写体を選ぶように、写真を自身のアートに落とし込む。これが、Richard Estesのスタイルなのだ。  Lee Quinones  Lee Quinonesのアートワークは、絶えず進化を続けてきた。1970年代にLEEのタグネームで活動を開始した彼は、グラフィティというカルチャーに焦点を当てたヒップホップ・ムーブメントの金字塔『ワイルド・スタイル』で主演を務めた人物であり、オールドスクールに精通している人であれば、彼の起用が最も興奮したのではないだろうか。  Leeは漫画から強く影響を受けており、過去にJack Kirby(ジャック・カービー)とStan Lee(スタン・リー)を自身のヒーローとして挙げていた。また、その時々の広告にも着目していたようで、彼はこの理由について「心地よい幻想がそこにはあるんです。アートは社会を維持するための大部分を担い、ストリートにおいてはそれが真の言語でした」と説明。また、1980年にはKeith Haring(キース・ヘリング)、Jenny Holzer(ジェニー・ホルツァー)、Fab 5 Freddy(ファブ・ファイヴ・フレディー)、Kenny Scarf(ケニー・シャーフ)らと共に「Collaborative Projects」が主催する「Times Square Show」に参加したことで、その名は世界のストリートへと轟いたのである。  グラフィティシーンではほとんど言及されることはなかったが、彼は自身の作品にこっそりメッセージを隠すのが好きだった。『Huffington Post』に向けて「俺は地下鉄に物語を描きたくてね。公民権運動に人々の関心を向けること、それの何がいけないっていうんだ?」と語った一幕は、まさに彼のアートへのアティチュードを示していると言っても過言ではないだろう。  彼はメインストリームから認められることを誇りに思っている。「皮肉なことに、法人企業は自分たちの仕事に影響される。ヒップで洒落たポップカルチャーは、それ自体が少しずつ成熟していくんだ。つまり、それ自体が完成するには時間がかかるってことさ。俺はこれがどれだけ特別なことか、常に理解してきたよ」  Daniel Johnston  Daniel Johnston、〈Supreme〉好きであればもちろん彼の名前を一度、否、少なからず二度は聞いたことがあるはずだ。2012年と2015年にも〈Sup〉とコラボレーションしている彼は、イラストレーターでありながら多くのアーティストに影響を与えたシンガーソングライターとしての肩書きも併せ持つ。  Leeと同じく、JohnstonもJack Kirbyの作品の大ファンだ。そんな彼の作品の中でも最も有名なアートワークは、1983年にリリースされた『Hi,how are you?』のジャケット。このTシャツはNirvana(ニルヴァーナ)のKurt Cobain(カート・コバーン)が着用していたことでもお馴染みである。  だが、Johnstonの人生は決して順風満帆ではない。彼は度々躁鬱病に悩まされ、キャリアというレールから脱線してきた。彼の作品と苦悩、そしてこの双方が互いにどのような影響を及ぼしたか、それは彼の伝記映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』の中で詳細に描かれている。2005年のサンダンス映画祭でドキュメンタリー作品監督賞を受賞するなど、世間で高く評価されている同ドキュメンタリーだが、Johnstonはこの映画を誇らしくは思っていない。彼が『The Guardian』のインタビューの中で、「僕の人生で最も恥ずべきことは、映画の中で僕の人生が丸裸にされてしまったことだよ」と語った過去がその全てを表している。  〈Supreme〉の2018年春夏コレクションでJohnstonコラボのアイテムを購入する人には、一度『悪魔とダニエル・ジョンストン』を見て、それを着る意味を見つけてもらいたい。 リチャード・エステス、リー・キュノネス、ダニエル・ジョンストン。彼らを何者か知らずして〈Sup〉の洋服を着るのはお門違い

Supreme/The Art Institute of Chicago

イリノイ州・エバンストン生まれのEstesの作品は一見、本物の写真に見えるほど実にリアルなものばかり。彼は現代的風景を精密且つ克明に再現する“ハイパー・リアリズム”の代表的アーティストであるが、その起源は、Edward Hopper(エドワード・ホッパー)に憧れて偶然参加した「シカゴ美術館附属美術大学」の講義にある。

そこでファインアートを学んだにもかかわらず、彼のキャリアはそれとは全く別世界の広告業界からスタート。しかし、「私はここでイラストレーションを制作するために写真を採用しはじめました。他の人々がやっていることや、他のイラストレーターたちを満遍なく観察したのですが、誰もモデルとなるものを目の前に起き、繊細なドローイングをしてなかったんです」と自身のスタイルを確立した経緯を語る。

1960年代の彼のペイントワークは、ニューヨークの街が中心だった。しかし、その後は“店頭”にこだわり続けたEstes。2014年の『ARTBOOK』のインタビューで、彼は「これはただの、私の視覚的な興味関心です。そこに精神分析的な理由は存在しません。私は特定の意味を暗に示すイメージから何かを抽出するのではなく、ただ見たままに表現しているだけですから」と語り、自身が崇高なことをしてないということを淡々と語っていた。

今季の〈Supreme〉は、『Weiner Drugstore』の正面を描いた1970年制作の作品“DRUGS”をフィーチャー。静物画家が被写体を選ぶように、写真を自身のアートに落とし込む。これが、Richard Estesのスタイルなのだ。

Lee Quinones

Supreme が2018年春夏コレクションに起用した3名のアーティストの正体とは? アーティストとの絶え間なきコラボレーションは、〈Supreme(シュプリーム)〉のDNAである。グラフィティ界のレジェンド Rammellzee(ラメルジー)やフォトジャーナリストのMartha Cooper(マーサ・クーパー)から、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)の『Unknown Pleasures』を手がけたPeter Saville(ピーター・サヴィル)、『KIDS/キッズ』のディレクターとしてもお馴染みのLarry Clark(ラリー・クラーク)、そしてKAWS(カウズ)まで、王道はもちろん誰もが予想だにしなかったコアな選出こそ、〈Supreme〉の造詣の深さを証明するものだ。  2018年春夏コレクションでは、Richard Estes(リチャード・エステス)、Lee Quinones(リー・キュノネス)、Daniel Johnston(ダニエル・ジョンストン)の3名がアーティストコラボに名を連ねたが、読者のみなさんは彼らの正体をご存知だろうか。本稿では各アーティストのプロフィールを紐解いていくので、コラボレーションの“重み”を理解するためにも是非、以下のテキストをチェックしてみてほしい。  Richard Estes  イリノイ州・エバンストン生まれのEstesの作品は一見、本物の写真に見えるほど実にリアルなものばかり。彼は現代的風景を精密且つ克明に再現する“ハイパー・リアリズム”の代表的アーティストであるが、その起源は、Edward Hopper(エドワード・ホッパー)に憧れて偶然参加した「シカゴ美術館附属美術大学」の講義にある。  そこでファインアートを学んだにもかかわらず、彼のキャリアはそれとは全く別世界の広告業界からスタート。しかし、「私はここでイラストレーションを制作するために、写真を採用しはじめました。他の人々がやっていることや、他のイラストレーターたちを満遍なく観察したのですが、誰もモデルとなるものを目の前に起き、繊細なドローイングをしてなかったんです」と自身のスタイルを確立した経緯を語る。  1960年代の彼のペイントワークは、ニューヨークの街が中心だった。しかし、その後は“店頭”にこだわり続けたEstes。2014年の『ARTBOOK』のインタビューで、彼は「これはただの、私の視覚的興味です。そこに精神分析的な理由は存在しません。私は特定の意味を暗に示すイメージから何かを抽出するのではなく、ただ見たままに表現しているだけですから」と語り、自身が崇高なことをしてないということを淡々と語っていた。  今季の〈Supreme〉は、『Weiner Drugstore』の正面を描いた1970年制作の作品“DRUGS”をフィーチャー。静物画家が被写体を選ぶように、写真を自身のアートに落とし込む。これが、Richard Estesのスタイルなのだ。  Lee Quinones  Lee Quinonesのアートワークは、絶えず進化を続けてきた。1970年代にLEEのタグネームで活動を開始した彼は、グラフィティというカルチャーに焦点を当てたヒップホップ・ムーブメントの金字塔『ワイルド・スタイル』で主演を務めた人物であり、オールドスクールに精通している人であれば、彼の起用が最も興奮したのではないだろうか。  Leeは漫画から強く影響を受けており、過去にJack Kirby(ジャック・カービー)とStan Lee(スタン・リー)を自身のヒーローとして挙げていた。また、その時々の広告にも着目していたようで、彼はこの理由について「心地よい幻想がそこにはあるんです。アートは社会を維持するための大部分を担い、ストリートにおいてはそれが真の言語でした」と説明。また、1980年にはKeith Haring(キース・ヘリング)、Jenny Holzer(ジェニー・ホルツァー)、Fab 5 Freddy(ファブ・ファイヴ・フレディー)、Kenny Scarf(ケニー・シャーフ)らと共に「Collaborative Projects」が主催する「Times Square Show」に参加したことで、その名は世界のストリートへと轟いたのである。  グラフィティシーンではほとんど言及されることはなかったが、彼は自身の作品にこっそりメッセージを隠すのが好きだった。『Huffington Post』に向けて「俺は地下鉄に物語を描きたくてね。公民権運動に人々の関心を向けること、それの何がいけないっていうんだ?」と語った一幕は、まさに彼のアートへのアティチュードを示していると言っても過言ではないだろう。  彼はメインストリームから認められることを誇りに思っている。「皮肉なことに、法人企業は自分たちの仕事に影響される。ヒップで洒落たポップカルチャーは、それ自体が少しずつ成熟していくんだ。つまり、それ自体が完成するには時間がかかるってことさ。俺はこれがどれだけ特別なことか、常に理解してきたよ」  Daniel Johnston  Daniel Johnston、〈Supreme〉好きであればもちろん彼の名前を一度、否、少なからず二度は聞いたことがあるはずだ。2012年と2015年にも〈Sup〉とコラボレーションしている彼は、イラストレーターでありながら多くのアーティストに影響を与えたシンガーソングライターとしての肩書きも併せ持つ。  Leeと同じく、JohnstonもJack Kirbyの作品の大ファンだ。そんな彼の作品の中でも最も有名なアートワークは、1983年にリリースされた『Hi,how are you?』のジャケット。このTシャツはNirvana(ニルヴァーナ)のKurt Cobain(カート・コバーン)が着用していたことでもお馴染みである。  だが、Johnstonの人生は決して順風満帆ではない。彼は度々躁鬱病に悩まされ、キャリアというレールから脱線してきた。彼の作品と苦悩、そしてこの双方が互いにどのような影響を及ぼしたか、それは彼の伝記映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』の中で詳細に描かれている。2005年のサンダンス映画祭でドキュメンタリー作品監督賞を受賞するなど、世間で高く評価されている同ドキュメンタリーだが、Johnstonはこの映画を誇らしくは思っていない。彼が『The Guardian』のインタビューの中で、「僕の人生で最も恥ずべきことは、映画の中で僕の人生が丸裸にされてしまったことだよ」と語った過去がその全てを表している。  〈Supreme〉の2018年春夏コレクションでJohnstonコラボのアイテムを購入する人には、一度『悪魔とダニエル・ジョンストン』を見て、それを着る意味を見つけてもらいたい。 リチャード・エステス、リー・キュノネス、ダニエル・ジョンストン。彼らを何者か知らずして〈Sup〉の洋服を着るのはお門違い

Supreme/Artnews.com

Lee Quinonesのアートワークは、絶えず進化を続けてきた。1970年代にLEEのタグネームで活動を開始した彼は、グラフィティというカルチャーに焦点を当てたヒップホップ・ムーブメントの金字塔『ワイルド・スタイル』で主演を務めた人物であり、オールドスクールに精通している人であれば、彼の起用が今季で最も興奮したトピックなのではないだろうか。

Leeは漫画から強く影響を受けており、過去にJack Kirby(ジャック・カービー)とStan Lee(スタン・リー)を自身のヒーローとして挙げていた。また、その時々の広告にも着目していたようで、彼はこの理由について「心地よい幻想みたいなものがそこにはあるだ。アートは社会を維持するための大部分を担い、ストリートにおいてはそれが真の言語だからな」と説明。また、1980年にはKeith Haring(キース・ヘリング)、Jenny Holzer(ジェニー・ホルツァー)、Fab 5 Freddy(ファブ・ファイヴ・フレディー)、Kenny Scarf(ケニー・シャーフ)らとともに「Collaborative Projects」が主催する「Times Square Show」に参加したことで、その名は世界のストリートへと轟いていった。

グラフィティシーンではほとんど言及されることはなかったが、彼は自身の作品にこっそりメッセージを隠すのが好きだった。『Huffington Post』に向けて「俺は地下鉄に物語を描きたくてね。公民権運動に人々の関心を向けること、それの何がいけないっていうんだ?」と語った一幕は、まさに彼のアートへのアティチュードを示していると言っても過言ではないだろう。

同時に、彼はメインストリームから認められることを誇りに思っている。「皮肉なことに、法人企業は自分たちの仕事に影響される。ヒップで洒落たポップカルチャーは、それ自体が少しずつ成熟していくんだ。つまり、それ自体が完成するには時間がかかるってことさ。俺はこれがどれだけ尊いことか、常に理解してきたよ」

Daniel Johnston

Supreme が2018年春夏コレクションに起用した3名のアーティストの正体とは? アーティストとの絶え間なきコラボレーションは、〈Supreme(シュプリーム)〉のDNAである。グラフィティ界のレジェンド Rammellzee(ラメルジー)やフォトジャーナリストのMartha Cooper(マーサ・クーパー)から、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)の『Unknown Pleasures』を手がけたPeter Saville(ピーター・サヴィル)、『KIDS/キッズ』のディレクターとしてもお馴染みのLarry Clark(ラリー・クラーク)、そしてKAWS(カウズ)まで、王道はもちろん誰もが予想だにしなかったコアな選出こそ、〈Supreme〉の造詣の深さを証明するものだ。  2018年春夏コレクションでは、Richard Estes(リチャード・エステス)、Lee Quinones(リー・キュノネス)、Daniel Johnston(ダニエル・ジョンストン)の3名がアーティストコラボに名を連ねたが、読者のみなさんは彼らの正体をご存知だろうか。本稿では各アーティストのプロフィールを紐解いていくので、コラボレーションの“重み”を理解するためにも是非、以下のテキストをチェックしてみてほしい。  Richard Estes  イリノイ州・エバンストン生まれのEstesの作品は一見、本物の写真に見えるほど実にリアルなものばかり。彼は現代的風景を精密且つ克明に再現する“ハイパー・リアリズム”の代表的アーティストであるが、その起源は、Edward Hopper(エドワード・ホッパー)に憧れて偶然参加した「シカゴ美術館附属美術大学」の講義にある。  そこでファインアートを学んだにもかかわらず、彼のキャリアはそれとは全く別世界の広告業界からスタート。しかし、「私はここでイラストレーションを制作するために、写真を採用しはじめました。他の人々がやっていることや、他のイラストレーターたちを満遍なく観察したのですが、誰もモデルとなるものを目の前に起き、繊細なドローイングをしてなかったんです」と自身のスタイルを確立した経緯を語る。  1960年代の彼のペイントワークは、ニューヨークの街が中心だった。しかし、その後は“店頭”にこだわり続けたEstes。2014年の『ARTBOOK』のインタビューで、彼は「これはただの、私の視覚的興味です。そこに精神分析的な理由は存在しません。私は特定の意味を暗に示すイメージから何かを抽出するのではなく、ただ見たままに表現しているだけですから」と語り、自身が崇高なことをしてないということを淡々と語っていた。  今季の〈Supreme〉は、『Weiner Drugstore』の正面を描いた1970年制作の作品“DRUGS”をフィーチャー。静物画家が被写体を選ぶように、写真を自身のアートに落とし込む。これが、Richard Estesのスタイルなのだ。  Lee Quinones  Lee Quinonesのアートワークは、絶えず進化を続けてきた。1970年代にLEEのタグネームで活動を開始した彼は、グラフィティというカルチャーに焦点を当てたヒップホップ・ムーブメントの金字塔『ワイルド・スタイル』で主演を務めた人物であり、オールドスクールに精通している人であれば、彼の起用が最も興奮したのではないだろうか。  Leeは漫画から強く影響を受けており、過去にJack Kirby(ジャック・カービー)とStan Lee(スタン・リー)を自身のヒーローとして挙げていた。また、その時々の広告にも着目していたようで、彼はこの理由について「心地よい幻想がそこにはあるんです。アートは社会を維持するための大部分を担い、ストリートにおいてはそれが真の言語でした」と説明。また、1980年にはKeith Haring(キース・ヘリング)、Jenny Holzer(ジェニー・ホルツァー)、Fab 5 Freddy(ファブ・ファイヴ・フレディー)、Kenny Scarf(ケニー・シャーフ)らと共に「Collaborative Projects」が主催する「Times Square Show」に参加したことで、その名は世界のストリートへと轟いたのである。  グラフィティシーンではほとんど言及されることはなかったが、彼は自身の作品にこっそりメッセージを隠すのが好きだった。『Huffington Post』に向けて「俺は地下鉄に物語を描きたくてね。公民権運動に人々の関心を向けること、それの何がいけないっていうんだ?」と語った一幕は、まさに彼のアートへのアティチュードを示していると言っても過言ではないだろう。  彼はメインストリームから認められることを誇りに思っている。「皮肉なことに、法人企業は自分たちの仕事に影響される。ヒップで洒落たポップカルチャーは、それ自体が少しずつ成熟していくんだ。つまり、それ自体が完成するには時間がかかるってことさ。俺はこれがどれだけ特別なことか、常に理解してきたよ」  Daniel Johnston  Daniel Johnston、〈Supreme〉好きであればもちろん彼の名前を一度、否、少なからず二度は聞いたことがあるはずだ。2012年と2015年にも〈Sup〉とコラボレーションしている彼は、イラストレーターでありながら多くのアーティストに影響を与えたシンガーソングライターとしての肩書きも併せ持つ。  Leeと同じく、JohnstonもJack Kirbyの作品の大ファンだ。そんな彼の作品の中でも最も有名なアートワークは、1983年にリリースされた『Hi,how are you?』のジャケット。このTシャツはNirvana(ニルヴァーナ)のKurt Cobain(カート・コバーン)が着用していたことでもお馴染みである。  だが、Johnstonの人生は決して順風満帆ではない。彼は度々躁鬱病に悩まされ、キャリアというレールから脱線してきた。彼の作品と苦悩、そしてこの双方が互いにどのような影響を及ぼしたか、それは彼の伝記映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』の中で詳細に描かれている。2005年のサンダンス映画祭でドキュメンタリー作品監督賞を受賞するなど、世間で高く評価されている同ドキュメンタリーだが、Johnstonはこの映画を誇らしくは思っていない。彼が『The Guardian』のインタビューの中で、「僕の人生で最も恥ずべきことは、映画の中で僕の人生が丸裸にされてしまったことだよ」と語った過去がその全てを表している。  〈Supreme〉の2018年春夏コレクションでJohnstonコラボのアイテムを購入する人には、一度『悪魔とダニエル・ジョンストン』を見て、それを着る意味を見つけてもらいたい。 リチャード・エステス、リー・キュノネス、ダニエル・ジョンストン。彼らを何者か知らずして〈Sup〉の洋服を着るのはお門違い

Supreme/Daniel Johnston

Daniel Johnston、〈Supreme〉好きであればもちろん彼の名前を一度、否、少なからず二度は聞いたことがあるはずだ。2012年と2015年にも〈Sup〉とコラボレーションしている彼は、イラストレーターでありながら多くのアーティストに影響を与えたシンガーソングライターとしての肩書きも併せ持つ。

Leeと同じく、JohnstonもJack Kirbyの大ファンだ。そんな彼の作品の中で最も有名なアートワークは、1983年にリリースされた『Hi,how are you?』のジャケット。このTシャツはNirvana(ニルヴァーナ)のKurt Cobain(カート・コバーン)が着用していたことでもお馴染みである。

だが、Johnstonの人生は決して順風満帆ではない。彼は度々躁鬱病に悩まされ、キャリアというレールから脱線してきた。彼の作品と苦悩、そしてこの双方が互いにどのような影響を及ぼしたか、それは彼の伝記映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』の中で詳細に描かれている。2005年のサンダンス映画祭でドキュメンタリー作品監督賞を受賞するなど、世間で高く評価されている同ドキュメンタリーだが、Johnstonはこの映画を誇らしくは思っていない。彼が『The Guardian』のインタビューの中で、「僕の人生で最も恥ずべきことは、映画の中で僕の人生が丸裸にされてしまったことだよ」と語った過去がその全てを表している。

〈Supreme〉の2018年春夏コレクションでJohnstonコラボのアイテムを購入予定の方には、一度『悪魔とダニエル・ジョンストン』の鑑賞をオススメしたい。

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