初代 PlayStation の開発者が“メタバース”に否定的な見解を示す
“プレステの父”として知られる久夛良木健が話題の“メタバース”について語る

「Sony(ソニー)」の家庭用ゲーム機 PlayStation(プレイステーション)の生みの親として知られ、現在は東京を拠点とするAIベンチャー企業「Ascent Robotics(アセントロボティクス)」の代表取締役CEOを務める久夛良木健が、昨今話題となっている“メタバース”について否定的な意見を持っていることが明らかになった。
久夛良木氏は1993年に「Sony Computer Entertainment(SCE:ソニー・コンピュータエンタテインメント)」を設立し、代表取締役会長兼グループCEOとして初代プレイステーションの開発を指揮した。その後2000年代に入ると「Sony」の取締役、同社副社長兼COOなどを歴任。さらに2007年6月〜2011年6月まで「SCE」の名誉会長を務めた。昨年12月、久夛良木氏が現在身を置く「Ascent Robotics」が、シリーズB投資ラウンドで「Sony」と「SBIホールディングス」から10億円の資金調達を完了したことが大々的に報じられた。このニュースを受けて、米『Bloomberg』は彼にインタビューを敢行。その中で久夛良木氏の“メタバース”に対する興味深い考察が語られている。
現在71歳の久夛良木氏が“人生のミッション”と語る「Ascent Robotics」の目標は、『スターウォーズ』のホログラムのように、現実世界とサイバースペースをシームレスに、ガジェットなしで融合させること。現在「Apple(アップル)」や「Meta(メタ)」、「Sony」などがAR/VR(拡張現実/仮想現実)ヘッドセットを開発中と噂されており、さまざまな企業がメタバース事業への参入を表明している。しかし、彼は先のインタビューにおいて、技術産業における次の大きな事業としての“メタバース”と、その入り口としてのヘッドマウントディスプレイを否定し、このようなガジェットは現実と仮想世界を統合するのではなく、分断をもたらしてしまうと語った。さらに「現実の世界に存在することは非常に重要だが、メタバースは仮想世界上で準現実を作ることであり、そんなことをする意味があるのか私には理解できません。“本当の自分”ではなく“洗練されたアバター”でいたいということでしょうか?それは本質的には匿名掲示板のサイトと何ら変わらないと思います」と付け加えている。
久夛良木氏は現在「Ascent Robotics」において、かつて「SCE」で初代プレイステーションを生み出したときのようなアプローチで、新たなロボット・プラットフォームの開発を進めている。同社は産業用のロボットの開発だけでなく、ロボットやセンサーが集めたビジュアルデータを活用して、“デジタルシーンを実世界に再現すること”を目指しているという。例えば、ある商品をホログラム技術で再現することによって、まったく新しいショッピング体験をユーザーに提供することになるようだ。また、離れた場所にある待ち合わせ場所を現実世界に再現し、ヘッドギアに頼ることなく、遠隔地にいる人との交流を可能にする技術も開発している模様。「Ascent Robotics」の長期的なプロジェクトの詳細については未だ明かされていないが、同社は今年中に具体的なビジョンを徐々に公開していく予定だ。