ニューヨークのスケーターたちに聞いた Supreme と Louis Vuitton のコラボレーションに対するリアルな意見

「彼らはファッションに中指を立てるような姿勢でブランドをスタートしたのに、今では彼らがそのものになってしまった」

ファッション
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Supreme(シュプリーム)〉と「MTA」のコラボレーションは地下鉄の駅を大混乱に陥れ、一時は警察と一触即発の状態に。それだけカルト的な信者/転売屋を多く抱えるニューヨークのストリートブランドは、これまでさまざまなパートナーとともにシーンへ話題を提供してきたが、直近では〈Louis Vuitton(ルイ ヴィトン)〉がパリのランウェイで彼らとのコラボレーションを発表し、世界を震撼させたことが記憶に新しいだろう。

しかし、この〈Supreme〉x〈Louis Vuitton〉が今、ロウアー・イースト・サイドのスケートコミュニティ内で大きな波紋を呼んでいる。

〈Louis Vuitton〉は以前にもAlex Olson(アレックス・オルソン)をコマーシャルに出演させるなどして、スケートシーンへの関心を示してきた。そして、ショールームで開催された展示会の様子からも確認できるが、発売予定のアイテムには至るところに〈Supreme〉のロゴが散りばめられている。しかし、〈Supreme〉を離れることとなった元ブランドディレクターのAngelo Baque(アンジェロ・バク)も言うとおり、〈Supreme〉はどんな時でもスケーターをミューズに成長してきた。だが、このコラボレーションプロダクトには超高額なプライスタグが配され、“スケートボードのリアル”とは遠くかけ離れたものと認識されていて、一部ではラグジュアリーブランドに悪用されたと感じている人もいるというのが現実だ。

WWD』は実際にロウアー・イースト・サイドまで足を運び、地元のスケートパークやスケートショップで聞き込みを行ったようだ。「本当にクソだと思うね」、匿名希望の30歳のスケーターは言う。しかし、このように多くのスケートボード関係者が地元を牛耳る〈Supreme〉からの仕返しを恐れ、匿名を希望していたようだ。また、〈Carhartt(カーハート)〉でクリエイティブに関わるという人物も「今回のコラボレーションは、Supremeのファッションシーンにおける立場を確固たるものにしてしまうよ。これは本当に賛同できない。彼らはファッションに中指を立てるような姿勢でブランドをスタートしたのに、今では彼らがそのものになってしまった」とこの一件に関して疑問を呈していた。

このように、大方のスケーターたちは〈Supreme〉が〈Louis Vuitton〉に手を貸したことを嘆いており、前述とは別の30代スケーターも「彼らはストリートカルチャーを最悪の形で表現してしまったね」と語る。〈Supreme〉は2000年に〈Louis Vuitton〉を象徴するモノグラム柄を許可なくスケートデッキにプリントし、Vuitton側から注意勧告を受けていたはず。しかし、今ではそれがオフィシャルと化してしまい、(流れたものの)買収の噂が出るほど。そして、中には「裏切り者」とレッテルを貼る人までいる。

「Supremeはダウンタウンカルチャーを具現化したような存在なんだ……。スケート、パンク、ヒップホップ、つまりカウンターカルチャーの代表とも言えるんだよ。全てがSupremeに傾倒していたんだ」。「もはや地球上のものとは思えない」。スケートコミュニティーから聞こえてくる嘆きの声は後を絶たない。

また、パーソンズに通う学生は、〈Supreme〉と〈Louis Vuitton〉のコラボレーションにより、〈Supreme〉をスケートブランドとして敬愛してきたグループと単なるコレクターのコミュニティーとで二分すると予想している。「周りの人たちは大人とスケートキッズが分裂すると言っているよ。そして、ファンも変わっていくし、離れていくさ」。

WWD』は、マンハッタン橋の下にあるコールマン・スケートパークにも足を伸ばしている。そこでも多くの若者が〈Supreme〉x〈Louis Vuitton〉が実現する事実に困惑しており、〈Supreme〉のスケートというルーツが根絶やしされることを恐れていた。「もし、あのクソみたいなLouis Vuittonのアイテムを買うとしたら、気が狂ってるね」、10代の少年は〈Supreme〉のアイテムを身につけながらも厳しく批難。また、「あまりにもHYPEBEASTすぎる」と述べる者もおり、頭部から足元まで全てをトレンドで固めてしまったら個性がなくなってしまうと考えているようだ。

しかし、一方でロウアー・イースト・サイドを拠点に自身でビジネスを展開する年配のスケーターは金銭的な面に目を向け、「これはデザイナーの仕業ではないと思うよ。Supremeを村上隆のようにしたいと考えるお偉いさんの意向だろう」とブランドを擁護。また、他の中年スケーターもメディアによる副産物と認識していて、「全てが少しずつ大きくなっていき、成長する。だから、世間の予想を裏切るようなこともしないといけないのかもね」と飽きがこないようにするのも必要なこととした。

〈Louis Vuitton〉がこれらのスケーターのコメントに対してリアクションをすることはない。だが、「私たちは長い歴史の中で、予期せぬことを行ってきた際に顧客から不安気な視線を送られてきました。ですが、私たちはどんな時でも自分たちが歩んできたカルチャーから逸れることはありません」とコメントを発表している。

スケートカルチャーとラグジュアリーブランドの関係性は、近年のファッションシーンで大きな話題となってきたが、このように両カテゴリーの頂点に位置するようなブランド同士のコラボレーションが行われたのは今回が初めてだ。しかし、筆者は今回のコラボレーションを一種の“ネタ切れ”とも感じている。それはつまり、スケートカルチャーとラグジュアリーブランドの蜜月関係にも終わりが見えてきており、数年後にはそれぞれがかつてのように別の道を歩むということだ。もちろん、当記事を最後まで読んでくださった読者の皆さんも各々思うところがあるだろ。是非、友人や仕事仲間と意見をシェアして、今一度現在のシーンを見つめ直してみてはいかがだろうか。

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