Interviews: A-COLD-WALL* の Samuel Ross に聞く、“壁”のもつ意味とそこから生まれるブランドの創造性

イギリス発のブランド〈A-COLD-WALL*〉の「Samuel Ross」が日本に初来日

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「Virgil Abloh」のクリエイティブ・コンサルタントを手がけたことでも知られる、イギリス発のブランド〈A-COLD-WALL*〉の「Samuel Ross」が日本に初来日。日本国内では『GR8』と『monkey time 原宿店』の2店舗のみでローンチし、インスタレーションを両店舗にて展開した。そんな Samuel に今回の日本でのローンチと〈A-COLD-WALL*〉が生まれるまで、Virgil との仕事、そして今後の展望に関して話を伺った。

–まず、日本に初めて訪れてどう思いましたか?
日本に対しての第一印象は、けっこう昔から自分で描いたものがあったんだ。日本のカルチャーはとても細かいディテールまでこだわるだろう? 日本がもつ自由なクリエティビティが気にいっているし、若いころの僕にとてもいい影響を与えてくれていたんだよ。日本のテレビ番組やアニメを観ると分かるんだ。欧米のアニメと比べると、ストーリーの伝え方から違うと思うしね。だから僕が持つ日本に対しての第一印象は、日本に来る前からセットされていたんだ。日本に来ることは、今年の1月頃には決まっていたから、あまり期待しすぎないようには気をつけていたんだけど、日本で訪れた場所、見た場所、すべてが期待以上だったんだ。それはとてもユニークだと思う。日本ではすべてが完璧にやり遂げられているから、本当にすごいと思うよ。

–クリエーションは日本の文化からインスピレーションを受けているのですか?
うん、僕のスタイルはもともと日本から影響を受けているんだ。僕はそこまでお金がある家系では育っていないから、ラグジュアリーファッションを手にすることは難しかったよ。〈Fendi〉、〈Givenchy〉、〈Lanvin〉などは知らなかったし、18歳くらいまでハイファッションについては無知だったしね。僕にとって文化的なインスピレーションを与えてくれるものとして、コアにあるのが日本なんだ。昔はよくバンダナをアニメキャラクターのようにつけていたし、ドラゴンボールやアニメを観るのに時間を費やしたね。僕のスタイルというよりも僕自身に大きな影響を与えてくれたよ。

–ロンドンで生まれ育ったんですよね?
僕はロンドンで生まれたけれども、育ちはロンドンから少し離れたところで、それからロンドンに戻ってきたんだよ。今まで僕はロンドン、ウェリンボロー、レスター、リードなどさまざまなところに住んでいた経験があるんだ。僕はウェリンボローの学校に通っていたんだけど、そこは〈Dr.Martens〉が発祥した街。ブーツやテイラーリングで有名な場所なんだよ。

–今、ロンドンで起こっているユースカルチャーについてどう思いますか?
イギリスのユースカルチャーは今、いろいろな要素がうまく融合されていると思う。インターネットが大きく影響してくれていると思うんだけど、一方で個々のカルチャーの色を薄めてしまうということもあると感じるんだ。今までより自分の色を表すのが難しくなってきていると思う。デジタル化のおかげで15年前と今では何もかもが違ってくると思うよ。でもそれが悪いことだとは思っていない、それがまさに今、僕たちが生きている時代だしね。とても良いことは今までよりも簡単にアイデアを共有しあえることだね。

–ところで、どうして「Virgil Abloh」と働くことになったのですか?
Virgil と働く前は、グラフィックデザインを5年ほど勉強していたんだ。そこからカレッジに通って、とてもいい成績を残すことができた。16歳のころからデザインで賞をもらえるようになったり、そのあとはグラフィックデザインとコンテンポラリーデザインを勉強するために大学に入ったんだ。首席で卒業できたおかげでデザイン会社からスカウトされたりもしたんだけど、同じ時期にストリートアートもやっていたよ。その他にもグラフィックTシャツなどデザインし始めたり、ショートアートフィルムも制作していたね。Youtubeでの再生回数は0に近かったかもだけど僕が作り続けた理由は、自分の創造性を自由に表現できた場所だったからなのさ。この業界に入って1年目は自分のポートフォリオに時間をかけていたよ。僕はイラストレーションからフィルム、グラフィックデザイン、ストリートアートなど、いろいろな分野にチャレンジしていたから、ポートフォリオのウェブサイトも別々にしたんだ。合計で4つぐらいかな。Virgilとはそこから何が起きたかというと、「Kanye West」のPVやインスピレーションを与えてくれたブログやストアで、よく彼の名前を見かけるようになったんだ。そこで彼にどうにかして連絡を取ろうと試みたんだよね。まず「RSVP GALLERY」に僕の履歴書を送りまくったのさ。もちろん返事はゼロだったけどね。そこから僕がInstagramを始めたころ、Virgilはたくさんフォロワーがいる中、僕は75人ぐらいしかいなくて、Virgilをフォローしたんだ。そのおかげで今の僕がいるんだよ。僕の作品を気に入ってくれたから、ポートフォリオを見せてほしいと本人から連絡がきたんだ。そこから僕は彼の元で3〜4カ月インターンとして、一緒に働かせてもらいながら、一方でグラフィックデザインの仕事をやり続けたんだ。その頃は毎日3〜4時間しか寝ていなかったよ。夕方の6時に本業が終わってから、Virgilから頼まれた仕事に取り掛かるからベッドに入れるのが深夜の2、3時になってしまう。そして翌日の7時30分には家を出なくてはいけなかったからね。
その後、彼と働いている間にデザインの仕事は辞め、レスターから叔母がいるロンドンに引っ越したんだ。それからVirgilとの仕事をこなしながら、グローバルな広告代理店「STORY WORLDWIDE」という会社で働き始めたんだけど、その会社が倒産間近になってしまい、辞めると決心したタイミングでVirgilからインターンではなく、フルタイムのオファーをもらったんだ。だから今までもっていたものを捨てて、彼の元に行くことに決めたんだ。僕は、本当に一生懸命に働いたよ。それが3年半前だからあまり昔のことではないし、それからいろいろなことが起きたんだよね。

–Virgil と働いてみてどうでしたか?
Virgilのチームとはとても働きやすかったよ。そして、ゴールを達成するためにはどれだけ努力をしないといけないとか、一貫性を持たないと上手くなれないだとか……そういうことを学んだよ。彼と仕事するにはスマートではないといけない。建築学の修士号をとっているし、彼自身がとても頭が良い。デザインの仕事をするにはスマートで、ロジカルな考え方も持っていないといけないと僕は思っている。僕の作品はメッセージ性が強いものが多いし、色々な分野に力をいれているから、よく“アーティスト”と呼ばれるんだ。でも僕が作品をロジカルで自制心を持ちながら、作り上げている。戦略とかプランニングの過程は関係なく、自分が表現したいことを自由にできるのがアーティストだろ?だから僕は自分をアーティストではなく、クリエイティブ・ディレクターと思っているんだ。僕は自分のデザインを上手くアートのように表現するからみんなにアーティストだと思われがちなのかもしれないね。

–今回、日本におけるブランドの初上陸に際してインスタレーションを初めて行いましたが、どうして『monkey timeと『GR8』の2店舗でやることにしたのでしょうか?
まず、『monkey time』が『UNITED ARROWS LTD.』だからということが大きかったね。2店舗ともストリート業界には不可欠な存在。それのみならず、僕が気に入ったところは『GR8』と『monkey time』が持つテイストやスタイルが違うこと。2店舗とも持つ意見がそれぞれ違かったし、並んでいる商品のスタイルも違う。僕のアイテムをその2店舗を通して違ったスタイルで見せられるのは、光栄なことだったよ。それぞれのショップが持つアイデンティティを出すこともできたと思う。『GR8』は音楽だったり、ヴィジュアル、カルチャー重視だった。一方で『monkey time』はアイテムの配置だったり、スペースの取り方などアート的な視点を強く持っていた。僕はさまざまな制作方法を使って、『monkey time』に合うインスタレーションを今回は作りたかったんだ。

–〈A-COLD-WALL*〉のブランド名のインスピレーション源は?
〈A-COLD-WALL*〉という名前は“フィーリング”を反響しているもの。その“フィーリング”とは、イギリスのマルチカルチャーからきているものなんだ。僕が生まれた南イギリスは特にそうで、一つの学校にそれぞれ違ったバックグラウンドを持つ子たちが集まっていて、多種多様なんだ。上位中産階級の子たちもいれば、労働者階級の子たちも同じクラスにいたりする。そこから生まれる関係性をどう築き上げていくかについてだったりもするんだ。〈A-COLD-WALL*〉という名前は、その両サイドの“フィーリング”を表現している。例えばロンドンのケンジントンに大理石の壁がある豪邸に住んでいる子がいるとしよう、その子の「冷たい壁(Cold Wall)」は大理石の壁を触った時の冷たい感触。“A COLD WALL”ではそのリュクスな感覚をテイラーイングで感じられると思うんだ。一方、じゃりの壁で作られた公営住宅に住んでいる子がそれを触った時の冷たい感触は、僕が個人的に経験したものでもある。このブランドはその両サイドが感じる共通の感覚から由来したんだ。大理石の壁の家に住んでいる子とじゃりの壁で作られた家に住んでいる子のそれぞれの経験を融合させたかったのもあるよ。僕たちが作るワークウエアのようなデザインは、労働者階級からインスパイアされていて、一方で〈A-COLD-WALL*〉のテイラーイングは、「ケンジントン」に建つ豪邸のようにリュクス感がある。そこで「ケンジントン」のようなテイラーイングと建造者のワークウエアを融合したのが〈A-COLD-WALL*〉でもあるんだ。これはロンドンの社会性構築主義にメッセージを訴えられているとも思う。

–最新コレクションについて教えてください。
まだ僕はいまどのように〈A-COLD-WALL*〉をシーズン分けしようか模索中なのだけど、今は2つアプローチがあるよ。まずメインのカテゴリーがあって、それはシーズンレスにしていこうと思っている。それはトラックスーツ、パーカーなど日常的に着られるようなものを扱う予定。各シーズンに合わせて作るのではなく、ただ単に生地やデザインを随時改良していきたいと思っているよ。もう一つのアプローチはシーズンに合わせて作るコレクション。季節によって、生地や色の好みも変わっていくからね。でも僕はできる限り、そのアプローチからは離れていきたいと思っているんだ。このアプローチをとってしまうと、物ごとを早く進めないといけなくなる。でも僕はアイテムのクオリティを大事にしたいと思っている。僕が満足するクオリティを作り上げるにはある程度の時間が必要だし、僕に合わないシステムに従う必要性はないと思うよ。

–ニュートラルなカラー使いが印象的なのですが、ヴィヴィッドなカラーを使おうとは思わないのでしょうか?
僕が〈A-COLD-WALL*〉をスタートさせた時は、「壁」が持つテクスチャーを目指していたんだ。当初はよく外に出て、どのようなペイントが壁に使われているのかを調べていたよ。どのような色合いが服に合うとか研究していた。よくハイライトとしてインディゴも使っていたけど、ニュートラルな色合いをよく使っているのは間違っていないよ。僕が住んでいた辺りに建っていたビルはニュートラルな色合いが多かったからね。僕は自分の目で見ていたものを用いていたからね。でも僕のムードボードは今までよりはるかに広がっているし、最近ではブルーやネイビー、レッドやからし色なども気になっているよ。僕はよく事例研究をするんだ。例えば、〈A-COLD-WALL*〉のデビュー当時によく考えていたのは、ある人は素敵な大理石の家に住んでいるのか、それともじゃりの壁でできた公営住宅に住んでいるのかだったのだけれど、今はもっと深く考えるようになったんだ。日課、家庭など、その人の人生についてだったり……ね。僕はその人のファミリーストーリーが伝わるような生地、カット感、フィット感などを選ぶようになったよ。例えば僕が作るワークウエアは労働者階級からインスパイアされたものだけど、レースやナイロンなどもミックスして使っていたりするんだ。最近色に興味を持ち始めているのも確かだよ。

–今後、どのようにブランドを発展させていきたいですか?
まず僕は服を通して、良質なアート、ヴィジュアルを届けられればいいなと思っているよ。もっと新しくて、洗練されたアイデアを届けたいね。

–ラグジュアリーとストリートの垣根がなくなり始めていますが、それについてどう思いますか?
僕はいいことだと思うよ。まだ名前はないかもしれないけれども、ラグジュアリーとストリートという二つのカテゴリーを融合させた、新たなるカテゴリーを通して素晴らしいメッセージを伝えている人たちが最近たくさん出てきていると思うんだ。僕も自分のブランドがストリートだとも、ハイファッションだとも思っていない。そういうブランドが他にも今では多数あるんじゃないかな。〈Fear of God〉や〈Off-White〉などね。まだこの新しいカテゴリーを誰もなんと呼んでいいのかわからないだけだと思うんだ。僕たちが作るものはただのTシャツにロゴがプリントされているだけではないんだよ。そんな簡単なことではない。この人たちが持つ、衣類に対しての見方はとてもインテレクトだと思う。僕たちは自分のアイデアを衣類を通して見せつつ、ただ単に良いデザイナーとして活動したいだけなんだ。

–日本の読者に対して何かメッセージがあればお願いします。
実際にお店に足を運んでもらって、生地を触ってもらいたいんだ。〈A-COLD-WALL*〉は単純に洋服だけではなく、さまざまな感覚で楽しめるブランド。ブランドとして持つアイデアを新しい形で見せることに心がけている。僕は日本の人たちにお店に来てもらい、実際に〈A-COLD-WALL*〉を体感してもらいたいと思っているよ。

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