ファッションブランドの初期費用: 流通編

「これまで3回に亘り概観してきたファッションブランドの初期費用」だが、今回は商品の流通について掘り下げていく。そもそもブランドの商品がエンドユーザーに届くまでにはダイレクトに販売を行う小売、小売店を介

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これまで3回に亘り概観してきたファッションブランドの初期費用」だが、今回は商品の流通について掘り下げていく。そもそもブランドの商品がエンドユーザーに届くまでにはダイレクトに販売を行う小売、小売店を介する卸や、時には在庫リスクをもつ委託販売など、数々の方法がある。

コンシューマーダイレクト(エンドユーザーへの直販)では、仲介する先が少ない分、利益率が高く、しっかりとマージンを保持することができる。しかし、若いブランドにとって顧客を獲得することは容易ではない。しっかりと販路を確保し、オンラインストアをセットアップする労力と時間を考えれば、マージンを減らしてでも卸に力を注ぐことが先決だと気づく。家賃、人件費、在庫を抱えるリスク、それらのコストを考えれば当然だろう。どのチャンネルに注力をすべきかはブランドの経営状況、認知度によって大きく異なる。業界内で十分に知れ渡れば卸先を広げていくことが可能となり、さらに認知度を高めていくことができればコンシューマーダイレクトへと繋がっていく。そうなればよりブランドの世界観を色濃く伝えることが可能となり、利益率を高める機会を得るだろう。

海外の若いブランドは、リテーラー、eコマースサイトへと卸を行う際に、ディストリビューターを通す傾向がある。それはお金の面でのリスクを軽減するだけではなく、どのマーケットがブランドの商品を受け入れやすいかどうかを判断するのにも効果的だ。ネットワークを広げるためにセールスエージェントを活用することを選ぶ人もいるかもしれない。セールスエージェントを通して最も効果的な方法、最適な店舗へ商品を流通することができればその先に的を得たエンドユーザーが待っている。

関係や条件にもよるが、リテーラーは時にブランドに委託販売でを持ちかけることがある。当然のことながら、委託販売では商品が店頭で売れない限りは利益を得ることは出来ない。シーズンが進み、セールでも売れ残ってしまったらそのコストと商品を保管するスペースを割くことになる。時に商品を生産する上で止むを得ず在庫をかかえてしまうケースもあるが、若いブランドはそのリスクを認識しておかなければならないだろう。

また、近年のファッションビジネスでよく使われるもう一つの用語は「ドロップシップ」だ。ネット上のプラットフォームでブランドの商品をディスプレイし、購入すると商品はブランド、あるいはメーカーから直接発送されるようになっている。どれだけ深い付き合いをしている取引先でも全てのアイテムを購入することはできないが、ドロップシップのプラットフォームでは完全なコレクションを提案することも可能だ。『Farfetch』や『Etsy』といったサイトに代表されるこのシステムは近年著しく業績を上げている。しかし、配送のロジスティクスや、在庫を保管する適切な場所、在庫リスクなど、ドロップシップの合意をする前に注意すべきいくつかの面があることをお忘れなく。

SNSの普及により、その気になればエンドユーザーとも密にリンクすることが可能なご時世、自分でオンラインストアを切り盛りするのも悪くないだろう。便利なツールでオンラインストアをセットアップするのも随分と手軽になり、送料や税金、地理的な要因さえ考慮すればFedExのような宅配便のサイトで料金も確認できる。もし大量にオーダーがあれば、ディスカウントも可能になるだろう。

このように、商品の流通方法におけるストラテジーはブランドやメーカーによって実に様々だ。これまでも体験談をシェアしれくれている〈Benny Gold〉、〈Filling Pieces〉の「Guillame Philibert」、〈Naked & Famous〉の「Brandon Svarc」ら業界の身近な人々の経験を聞いてみた。



商品を流通させるときにかかったコストとは?

Guillaume Philibert (Filling Pieces)

最初はデザインから生産、セールス、財務、すべてのことが自分の仕事だった。サンプルでいっぱいのバッグを抱えて、ショップからショップを訪問して、新しいリテーラーを獲得しようとしていた。当時、商品の流通についてはコストはかからなかった。今は、21人のスタッフがブランドを運営するために必要なことを担当している。7人のセールスエージェントが海外で契約していて、卸を担当。他のコストはトレードショーの参加や商品をショップへ配送するコスト。コストの総額は世界のどのエリアに送るかによって変わってくる。

Terrence Kim (IISE)

ソウルを拠点にしているけれど、僕らのビジネスの90%は実際のところ海外なんだ。顧客への商品の配送はコストがかかってしまうけれど、ウェブサイトを通して顧客に直販することでマージンはずっと高くなるし、送料の半額以上を僕らがカバーしているよ。

Brandon Svarc (Naked & Famous)

ほとんどのブランドと違って、僕らは販売の代理店を利用しないんだ。セールスエージェントやショールームも利用しない。海外であっても、すべてのセールスを直接行なっている。販売業者は卸値の35%オフによくしたがるんだけど、それは商品のプライスを上げることを強いるし、それはより価値あるプロダクトをエンドユーザーへ提案するという僕のコンセプトに合わないからね。

Rav Matharu (Clothsurgeon)

イギリスにセールスエージェントが一人いる。彼らの契約料は売り上げの10〜15%の間だよ。

Benny Gold

流通コストの主要なものは倉庫の賃料や人件費だ。経費というのは安くはないし、僕らが成長するに連れて、もっと上がり続けるものだ。



コストがよりかかる即日配達や国際スピード配達。オーダーが入り始めたら、コストはどれだけ上がった?

Guillaume Philibert

僕らの会社ではサービスが一番大切なんだ。配送から販売の後のカスタマーケアまで注意している。『MR PORTER』や『END.』といったメジャーなブランドを見てみると、彼らは翌日には配送してくれるし、『MR PORTER』はマンハッタンやセントラル・ロンドンでは即日でも配送してくれる。特急便はもっと高くなるけれど、このサービスが可能だと、本当に顧客に満足してもらえるし、 また別のオーダーをしてくれるようになる。僕らの商品を購入するときに、さらにエキストラの料金を請求されるべきではないと思うから、世界中送料無料のサービスをしている。結局、僕らのリテーラーとしのぎを削っているし、だから僕らはそれを顧客にとって感じがよいものに、楽なものにする必要がある。一オーダーでは利益は少ないけれど、一般的にはずっと売り上げがあるんだよ。

Ouigi Theodore

オンラインビジネスはものすごく成長しているけど、この質問に適切に答えられるようなしっかりした数字をまだ持っていない。だからオンラインビジネスをサポートしてくれる若い、アグレッシブな才能を探してるんだ。

Terrence Kim

僕らはすべてのオーダーを追跡サービスのある配送で送っているから、確かに高くなってしまう。でも顧客からしてみたら、自分のアイテムがいつでもどこにあるか、それがいつきっかり到着するのかがわかるのはとても価値があること。オンラインショッピングを僕らが行なうことで重要なことだと思っていたのは、僕らの顧客と取引するときに一生懸命取り組もうということで、オンラインショッピングの体験をできる限りスムーズなものにしようと努めているんだ。

Brandon Svarc

ほとんどのオーダーを〈UPS〉グラウンドで配送している。北米の顧客に航空便や質問のような「特急便」で出荷したことはないよ。僕らのリテールの店舗は今は世界中にたくさん出荷しているし、その配送のコストはすぐに増えていくけれど、それは直販するときにこちらが支払わなければならない代価なんだ。

Rav Matharu

僕らのプロダクトのほとんどはオーダーに応じてつくっている。だから、顧客にはプロダクトが手元に届くまでに4週間待つ可能性があると、あらかじめ伝えているよ。幸いなことに、僕たちの顧客はそのことは苦にならないみたい。

Benny Gold

オンラインストアからできる限り早く出荷できるように最善を尽くしている。送料は一律で加算しているから、目的地によって大抵はこちら側の配送料負担は大きくなるね。

ファッションブランドの初期費用」では6つのパートからなるシリーズ連載でブランドを立ち上げる際のビジネスとしての側面における疑問を掘り下げている。ここでは、事業計画を練り上げるところからスタッフを雇ったり、生産コストや流通にいたるまで、そのブランドをそのようにさせている込み入った事情や舞台裏で起きていることなど、〈Filling Pieces〉の「Guillaume Philibert」、〈Naked & Famous〉の「Brandon Svarc」、「Benny Gold」といったファッション業界の多彩な人物から、彼らが自身のブランドを何とか成長させて今の彼らとなるまでの経験を聞き出している。
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