Interviews:ファッションと音楽をクロスオーバーさせるBabylon LAの二人に聞く、「創ること」に対しての想い
Virgil Ablohとの出会いから東京オリンピックについてまで幅広い話題を語る



ストリートカルチャーの最先端と呼ばれるLAのFairfaxエリアに佇む、話題のショップ『Babylon LA』。ショップ以外にスケートセクションを設置したりなど、LAキッズの遊び場としても知られるショップを手掛けるのが、パンクバンド「Trash Talk」のメンバーでもある「Garrett Stevenson」と「Lee Spielman」だ。そして今回〈Off-White™〉とのコラボレーションにあわせて、その二人が来日。彼らが希望した『PIZZA SLICE 2』にてピザをほうばる彼らにコラボレーションのことや、東京オリンピックにスケボーが追加されることについての想いなど、幅広く聞いてきました。
-まず知らない人のためにも『Babylon LA』について教えてください。
Lee:僕たちのお店はロサンゼルスにあって、基本はスケートショップだけど、それだけではないんだ。Zineやアート本も扱っているし、お店の壁でキュレーションアートを展示したりしている。お店というよりも、キッズたちの遊び場みたいな場所になりつつあるよ。キッズたちが自分らしさを表現できるクリエイティブな場所にね。僕たちがお店を始めるという話になった時、ただアパレルを扱うだけではなく、キッズたちが気軽に遊びに来れる出会いの場にしたかったんだ。もうオープンして1年半が経つんだけど、常連のようによく来てくれる子達もいるし、そこで新しい友達を作ったりする子たちもいるよ。僕たちは『Babylon LA』しか醸し出せないバイブスを作り上げたかったし、アパレルだけではなく、僕たちのお店を通して何かを学んで、感じて、クリエイティブになってくれたら嬉しいんだ。
-『Babylon LA』 はアパレル以外にアート本やスケートボードなど扱っているとおっしゃっていましたが、それらが共有するテーマや要素などはあるのでしょうか?
Garrett:そうだね。周りで起きていることであったり、環境が醸し出すセンスから影響は受けているかな。もちろんカリフォルニアのムードだったり、スケートカルチャーだったりね。そして僕たちはパンクミュージック出身だから、その要素も詰まっているよ。
-今回〈OFF-WHITE™〉と2回目のコラボレーションを実現させましたが、初めて「Virgil Abloh」に出会ったのはいつですか?
Lee:数年前に知人を通して出会って、それからずっと連絡は取り合っていたんだ。何がクールかっていうと、僕たちは違う世界、分野で活動しているかもしれないけれど、どこかでは同じ要素を持っているところ。やっぱり何かクールなものを創って、人に見せたいという気持ちを持っている、それはVirgilも僕たちも同じなんだ。個人的にも彼と仕事するのはとても楽しいよ。みんなのために意味があるイケていてるものを僕たちは創りたかっただけなんだ。よく人に「君らは全く別の世界で活躍しているのに何かを一緒に創れるんだね」と言われるんだけど、それが良いところでもあるんだよ。僕たちはパンク出身で、Virgilはデザイン出身だけど、アイデアを共有して一つになれることが素晴らしいと思うんだ。
-コラボレーションの過程を教えてください。それぞれ決まった役目などはありましたか?
Garrett:今回のコラボレーションは2回目だったし、お互い多忙なスケジュールの中、メールでお互いのアイデアを共有したり、どうすればクールなものが作れるか、何回も連絡を取り合ったんだ。
Lee:なんで僕がVirgilと仕事をするのが好きかというと、前回も今回も僕たちはどのようにコラボレーションをアートピースのように創れるかという風に考えてきたんだ。ただTシャツをデザインするのではなく、意味がこもったものをね。だからこそVirgilとのコラボレーションは一点だけではなく、カプセルコレクションのようなになるんだ。今回のコラボコレクションは“I QUIT”というんだけど、コンセプトは自分のために働く人たち。誰かのために働くのではなく、自分が自分の「ボス」になるという意味をこめたよ。そこからTシャツだけではなく、ペン、ポストイットなども作って、一つのパッケージにしたんだ。誰でもTシャツは作れるけど、僕たちは細かいところまでこだわって、アートのようにプレゼンしたかったんだよね。
-このコラボレーションを通して、学んだこと、思ったことはありましたか?
Garrett:毎回誰とコラボレーションをしようと、学ぶことはあるんだ。今回はアパレルだけではなく、ステーショナリーも作ったからいつもよりリサーチに時間をかけたよ。そしてコレクションのヴィジュアルを撮影した時は、いつもとは違う考えから創意工夫をし、スーツを燃やしてみたんだ。今まで試したことのなかったアイデアだったよ。
Lee:どんなに思いついたアイデアがクレイジーでも、そのアイデアを実現しないと気が済まないんだ。どれほど大変な作業が待っていようと、まずは思いついたアイデアのことを考えて、そこからみんなで取り掛かっていくんだ。今の僕はただ服を作って、売るというのではなくて、それ以上の意味を持ったもの創りたいと思っているんだよ。
-コラボレーションの製作期間はどのぐらいでしたか?
Lee:数カ月かな。実は今回のコンセプトやペインティングなどを手掛けたのは、NYを拠点にしているアーティストの「Othello」なんだ。スーツに火をつけようというアイデアも彼からヒントを得たよ。そこからこのコラボレーションはスタートした。まずはアーティストやバージルとの話し合いからはじまり、パッケージなど細かいこだわりを実現するまでにかかった期間は数カ月だったよ。そしてスーツに火をつけるコンセプトは日本にすごく合っていると思ったんだ。日本人はとても真面目だからスーツを着て、いつ上司に怒られるんではないかとビクビクしている印象を受けるんだ。それを理由に今回のコラボレーションを東京の人たちに届けたかったんだよね。
-コラボレーションの中で一番のお気に入りアイテムはどれですか?
Garrett:今回は一つのパッケージになっていることがクールだと思うんだ。僕が個人的に買い物する際、何か小さなボーナスが付いてくると嬉しいんだよね。だから今回のパッケージはとてもイケていると思うんだ。
Lee:僕たちは元々パンクの世界で活動してきただろ? レコードを一枚買うとペンやカードだったり、シルクスクリーンでレコードが梱包してあったり、レーベルはそこまでやらなくていいという些細なところまで、レスナーのことを想って、作ったりしているんだ。僕たちはそんな世界から来ているから小さなところまでこだわりたい気持ちが芽生えるんだ。せっかく消費者が汗水垂らして稼いだお金で買ってくれるんだから作り手にも同じような気持ちでいてほしいと思うはずなんだ。
-二人はミュージシャンとしても活躍されていますが、音楽と『Babylon LA』に共通点などありますか? またはインスピレーションは同じところからくるのでしょうか?
Garrett:もちろんさ。僕たちの音楽は『Babylon LA』と同じディレクションを通っていると思う。お互い影響しあっているし、僕たちが音楽で表現していることはアパレルの方に引き継いでいるんだ。
Lee:バイブスだったり、思考もすべて一緒だと思う。「全部自分たちでやる」ということね。僕たちはマネージャーがいないから、自分たちでアイデアを考えて、そこからどのように取りかかればいいのかも自分たちで考えないといけないんだ。それは『Babylon LA』でも一緒なんだよ。二人でアイデアをシェアして、DIY感覚で創りはじめる。その点は音楽とクロスオーバーしていると感じているよ。
-今回日本に来日するのは初めてですか? 日本や東京の印象は?
Lee:僕たちはもう5回くらい来ているよ。
Garrett:日本は素晴らしい国だと思う。アパレルもカルチャーもクールだし、パンクシーンを含め、日本のミュージックシーンはとてもユニークだから興味深いよ。だから定期的に日本に遊びに来て、色々と観察しようと思うんだ。
Lee:今回〈OFF-WHITE™〉とのポップアップショップを東京でオープンすることになって、日本人の細かさに感心したよ。そこまでやらなくても良いかもしれないけど、もっとクールにするためにやるという精神がここでは普通だろ? だからすごいと思うんだ。
-もう数回来ているとおっしゃっていましたが、東京でよく行く場所だったり、お気に入りの場所はありますか?
Garrett:僕たちはブラブラとするのが好きなんだ。今回は2週間も滞在するから今までよりもゆっくりと日本を楽しめそうだから嬉しいよ。
Lee:たまたまアメリカやオーストラリアの友達も東京にいるからみんなでワイワイと楽しめているよ。昨夜はみんなでバーを数カ所回ったりしたんだ。基本的には原宿や渋谷辺りをブラブラすることが多いかな。
-そんな東京では2020年にオリンピックが開催されます。そしてお二人が好きなスケートボードが種目の一つとして追加されました。それについて、なにか思うことはありますか?
Lee:プロスケーターの「Raven Tershy」が言ってたのは、スケートボードはオリンピック競技にならなくても良いスポーツなんだと。その理由はスケートボードはまだある意味、違法であるからね。違法であるスポーツをどのようにフェアに競って良いかわからないと思う。でもきっとスケーターたちはオリンピックの出場権利を獲得できて、嬉しくないと言ったら嘘になると思うんだ。だから「Raven Tershy」はスケートボードがオリンピック競技になったことについて、そこまで喜んではいなかったけど、もし世界のプロスケーターたちと自分の特技を競える機会を与えてもらえるのならば、チャレンジしたいと言っていたよ。でもやっぱり違法なスポーツをオリンピック競技にしたというのは不思議に思うけどね。でも僕はとても楽しみだよ! どのようなルールにするのかとか、なにを基準に競うなのだとか。もしかしたらオリンピック競技の中で一番イケてる種目になるかもしれない。僕はそう願うけど、実際に見てみるまでわからないよね。
Garrett:スケートボードとはスポーツ以上にカルチャーだと思うんだ。僕たちはそのカルチャーの中で生きてきたからスケートボードがオリンピック競技になることをまだ不思議に思ってしまうんだ。
Lee:やっぱり僕たちにとってスケートボードは友達とやるものだし、一つのライフスタイルだとも思っている。だからオリンピック競技にしなくても良いかとは思うけど、どのようにスケートボードがオリンピックを盛り上げてくれるか楽しみだよ。
-最後に『Babylon LA』のお二人がお勧めするLAスポットを教えてください。
Lee:僕はチャイナタウンにある『Burgerlords』というハンバーガー屋さんが好きなんだ。最初はギャラリーで、さまざまなエキシビジョンやショーを開催していたんだけど、その後にハンバーガー屋をオープンさせたんだ。『In’n’out』のような雰囲気を持ちつつ、ビーガンメニューやアーティストとコラボレーションして期間限定のハンバーガーなどを提供している面白いハンバーガー屋さんだよ。
そんな二人と〈OFF-WHITE™〉が手掛けたカプセルコレクションは店舗をはじめ、オンラインにて購入可能。そして二人のストリートスナップも公開しているので要チェック。